ハッチンソンのチューブレスタイヤをまとめてみた(2020年版)
前回はIRC社のチューブレスタイヤを調べましたが、今回はハッチンソンのタイヤを調べてみたいと思います。
ちなみに、私が愛用するマビックキシリウムエリートUSTに装備されているイクシオンプロUSTに採用されているコンパウンドは、ハッチンソンと共同開発された「11STROM」。
ってことは、同じようなタイヤになるのかなー、と思いつつも、11STROMを採用したチューブレスレディータイヤは3種類ありますので、ハッチンソンの方が使用用途に応じて多様なラインナップを用意しているんですね。
どんな特徴があるのか、じっくり調べて勉強してみたいと思います。
■ HUTCHINSON(ハッチンソン)
フランスの工業用エラストマー製造メーカー。様々な天然、合成ゴムに関わる製品を製造する企業だそうで、1890年に自転車用タイヤの製造を開始。
仏語読みではユッチンソンになるんだそうで、色々なブログを読むと「ハッチンソン」「ユッチンソン」が混在しています。メディア系はハッチンソンが圧倒的に多いですが、個人ブログだと結構ユッチンソン表記も多いようで。最初は「誤記ですか?」なんて早とちりしてしまいました。
ただ、前回調べたIRCに比べると、インプレ記事がやはり少ないですねー。
日本では比較的マイナーな部類になってしまうのでしょうか。
1. ハッチンソン チューブレスレディータイヤのラインナップ
ハッチンソンのロード向けチューブレスタイヤは2020年現在5本がラインナップされています。
11STORMが採用されているのはFUSIONシリーズの3本になります。
- FUSION 5 GALACTIK 11STORM TLR・・・FUSIONシリーズの中では最高の転がり抵抗の低さと軽量性を実現した最もレースを意識したモデル。反面耐久性、パンク耐性がトレードオフとなっている。ディスクロードへの使用は非推奨。25Cがラインナップ
- FUSION 5 PERFORMANCE 11STORM TLR・・・FUSIONシリーズの中で最もバランスのとれた標準的なモデル。25C/28Cをラインナップ
- FUSION 5 ALL SEASON 11STORM TLR・・・名前にある通り、オールシーズン、あらゆるシーンに対応させることを意識したモデル。ロングライドを念頭に、FUSIONシリーズの中では最も耐久性、パンク耐性が高く、グリップ力、快適性を重視する一方で、転がり抵抗、軽量性がトレードオフになっている。25C/28Cをラインナップ
- INTENSIVE2 TLR・・・長距離やトレーニングを意識し、高い耐久性を目指したモデル。転がり抵抗や軽量性がトレードオフとなっている。28Cがラインナップ
- SECTOR 28 TLR・・・グラベル用タイヤ。INTENSIVE2と比較するとよりレース志向となっており、転がり抵抗や軽量性、グリップ力を追求し、耐久性がトレードオフとっている。28C/32Cをラインナップ
レース向けに位置するFUSION5に関しては、転がり抵抗、グリップ力、耐久性など特性毎に点数付けをしており、分かりやすく比較できるようになっています。
製品名 | GALACTIK | PERFORMANCE | ALL SEASON |
転がり抵抗 | 5 | 4 | 3 |
グリップ力 | 4 | 4 | 5 |
耐久性 | 3 | 4 | 5 |
パンク耐性 | 3 | 4 | 5 |
軽量性 | 5 | 4 | 3 |
快適性 | 4 | 4 | 5 |
何が比較し易いって、PERFORMANCEがオール4となっており、そこを基準としてレース寄りのGALACTIK、ロングライド寄りのALL SEASONと味付けを変えているのが分かり易いです。
ちなみに11STROM非採用となっている残り2つについても、以下のように点数付けされています。
製品名 | INTENSIVE2 | SECTOR 28/32 |
転がり抵抗 | 3 | 4 |
グリップ力 | 4 | 5 |
耐久性 | 5 | 4 |
パンク耐性 | 5 | 5 |
軽量性 | 3 | 4 |
快適性 | 4 | 5 |
INTENSIVE2が優っているのは耐久性だけですね・・・。
Amazonを見ても、INTENSIVE2のチューブレスレディータイヤは取り扱いもなく、この製品位置付けからしても日本国内では微妙な位置付けっぽいですね。
海外通販サイトだと8000円程度でペアが購入できるようですので、トレーニング用としては良さそうです。
全く異なるメーカーですので単純比較はできませんが、グラベル用のSECTORを除くとIRCとはほぼ同じような位置付けの製品をラインナップしているようです。
あくまでも同じなのは商品ラインナップとしての位置付けですので、乗り味なんかは大分変わるんだと思いますが。
ハッチンソン | 対比されるIRC製品 |
FUSION 5 GALACTIK 11STORM TLR | FORMULA PRO TUBELESS LIGHT |
FUSION 5 PERFORMANCE 11STORM TLR | FORMULA PRO TUBELESS RBCC |
FUSION 5 ALL SEASON 11STORM TLR | FORMULA PRO TUBELESS X-Guard |
INTENSIVE2 TLR | ROADLITE TUBELESS |
2. ハッチンソン チューブレスレディータイヤの特徴とレビュー
特にレビューコメントは統一基準のない各個人の見解を寄せ集めているだけですので、あくまでも参考、ということになりますが、それなりに傾向は見えてきますので興味深いです。
ただ、前回調査したIRCと比べると、とにかく情報が少ないです・・・。
(1) FUSION 5 GALACTIK 11STORM TLR
スピードと低い転がり抵抗を追求したモデル。HDF>5.1®コンパウンドは低い転がり抵抗(フュージョン3から18%向上)を持っています。
コンパウンドの厚み、ケーシングとコンパウンドの結合過程、ポリアミド製のライトスキン耐パンク素材。そして180グラムのタイヤがスピードと低い転がり抵抗、競技本能を最高レベルに発揮させます。
このコンパウンドのエネルギーを効率的に路面に伝える性能が、比類ないロードホールディングを保証します。
【レビューコメントの傾向】
- 普通のクリンチャータイヤと同じくらいに簡単に脱着できる。石鹸水は不要
- ビードもあっさり上がる
- IRCと比較して転がり抵抗が低く、走りの軽さを感じる
- IRCよりも高反発でありグリップ力は低く「安定」「安心感」はIRCの方が上
- 耐久性は低く「決戦用」タイヤ
(2) Hutchinson FUSION 5 PERFORMANCE 11STORM TLR
軽量性とケブラー耐パンク層の適切なバランスによりHDF>5.2®コンパウンドはグリップ性能と耐久性を兼ね備えました。
127TPIケーシング。どこにも隙のない設計です。フュージョン5ファミリーの決戦モデルはより速く、より遠くに行きたいすべてのサイクリストのために設計されました。
トレッド面の下にはケブラー強化層があり、長距離の走行を可能にします。700×25では、低い転がり抵抗と快適性、グリップ性能と耐久性の最高のバランスを達成しました。
【レビューコメントの傾向】
- はめるのはきつくない、他のチューブレスタイヤよりもはめ易い
- 石鹸水やタイヤレバーを使わなくてもはめられた
- 25Cタイヤの幅は実測27mmあり太め
- ライド数回目でシーラントで塞がらないカット発生。耐久性がイマイチ
- 乗り心地はIRCの方が上だが、グリップ感はハッチンソンの方が上
(3) FUSION 5 ALL SEASON 11STORM TLR
あらゆる天候下で、低い転がり抵抗とグリップ力を発揮します。濡れた路面に対応するために溝が配置されています。適切なコンパウンドの厚みとケブラーの組み合わせで、耐久性を確保しています。
フュージョン5オールシーズンは長距離のレーシング的走行に向いたタイヤです。コンパウンドの厚みを最適化し[1.6ミリ]、粒子が耐久性と濡れた路面でグリップ力を発揮するように設計されています。ケブラーの耐パンク層がケーシングを守ります。長い距離をパフォーマンスと快適性を失うことなく走行することが可能になりました。700×28モデルでは長い期間にわたって柔らかさと走行性能が維持されることに驚くでしょう。
【レビューコメントの傾向】
- クリンチャータイヤだと2〜3回に一度はパンクするような特殊な環境だったが、このタイヤに交換してからはパンクから解放された
- 5000〜6000kmの間パンク知らず
(4) INTENSIVE 2
- 長寿命タイヤ
- すぐれた耐久性、快適性、安全性
- 強化ケーシングで耐パンク性能の向上
- ドライ路面での高性能コンパウンド
- ダブル・コンパウンドで高度な耐久性を確保
- 長距離トレーニング・ライド用に設計
インテンシブ2は群を抜く耐久性、耐パンク性能をもつタイヤです。開発段階では最高の耐久性を持たせることを最優先課題としました。
28ミリタイヤが追加されました。
ジェレミー・モレル
-2017カナダアイアンマン70.3 優勝「ハッチンソンを2年間使っています。練習用ホイールにはインテンシブ2の28ミリを使っています。ずっと使えるからです!1度交換するだけで、1シーズンに22000から25000キロのトレーニングをこなします!フランス・プロヴァンス地方のヴァールの山々は世界でもっとも美しい場所だと私は思っていますが、そこで安心して何時間もトレーニングできるタイヤなのです。長距離トレーニングに理想的なタイヤです!」
【レビューコメントの傾向】
- とにかくはめるのが大変。石鹸水を使ってギリギリはめられたものの、手が痛くて仕方ないという意見もあれば、INTENSIVEからINTENSIVE2になってからは普通に手ではめられるようになったとの意見も
- シュワルベよりははめ易い
- ビードを上げるには石鹸水を使ったうえで、高圧で一気にはめるのがおすすめ
- 頑丈。10,000km走れる
- 乗り心地も快適でグリップ感も高い
(5) SECTOR 28/32 TLR
バリルーベの石畳のために開発された、最高のグラベル用タイヤ。
シーラント材プロテクトエアマックスを併用。
幅広タイヤとしては超軽量
デュアル・コンパウンド構造でパフォーマンスを向上。舗装路から石畳、グラベルにまで対応する多用途タイヤ。
購入前に装着予定フレームのタイヤクリアランスを確認してください。
セクターとは、過酷なロード用標準モデルとして生まれたタイヤです。
当初は、プロ選手の協力を得て、春のクラシックレース向けに開発されました。ロードチューブレスレディの本来の目的はここにありました。
コーナリングで圧倒的な安心感を与えてくれるプロファイル。速くて転がり抵抗がきわめて小さいタイヤです。
700×28モデルは、快適性と比類のないグリップ力を誇ります。
700×32モデルはグラベルや未舗装のスペースでのライディングに適しています。
【レビューコメントの傾向】
- タイヤレバーを使わずに素手で装着可能
- 通常のフロアポンプでビードは上がった
- エア抜けはあるのでシーラント推奨
- 5000〜6000kmでパンクなし
- 路面が濡れていると滑る(当たり前のような気がしますが・・・)
3. ハッチンソン チューブレスレディータイヤ仕様一覧
但し、INTENSIVE2とSECTORについては公式サイトの金額情報が古く、Amazonでも在庫が少ないので金額情報についてはFUSION5だけですが。
製品名 | サイズ | TPI | 重量 | 定価(税抜) | 実売(Amazon) |
FUSION 5 GALACTIK 11STORM TLR | 25C | 127 | 240g | ¥9,800 | ¥10,223 |
FUSION 5 PERFORMANCE 11STORM TLR | 25C | 127 | 245g | ¥8,800 | ¥7,428 |
28C | 127 | 270g | ¥8,800 | ¥6,853 | |
FUSION 5 ALL SEASON 11STORM TLR | 25C | 127 | 260g | ¥8,400 | ¥7,541 |
28C | 127 | 285g | ¥8,400 | ¥8,751 | |
INTENSIVE2 TLR | 28C | 127 | 270g | ? | – |
SECTOR 28/32 TLR | 28C | 127 | 290g | ? | – |
32C | 127 | 315g | ? | – |
4. ハッチンソン チューブレスレディータイヤの総括
ということで、ざっと見て来ましたので個人的に思ったところなど。
- GALACTIK・・・レース向けとはいえ、同じくレース志向のIRC FROMULA PRO TUBELESS LIGHTと比較しても25Cで280gでしたので、1本あたり40gも軽いことになります。数少ないレビュー記事を見ても、「薄い」「耐久性は低い」といったコメントもありますので、週末ローディーには確実に向いていないタイヤになりそう
- PERFORMANCE・・・同じ11STORMコンパウンドを採用しているマビックのイクシオンプロUSTが25Cで260gということを考えると、「少し軽量化したいなー」と思った時には FUSION 5 PERFORMANCEは良い選択肢と言えそう(1本あたり15gの軽量化)
- ALL SEASON・・・いやいやロングライド向けに耐久性が大切でしょ、ということであれば ALL SEASONがイクシオンプロUSTと同じ260gという重量になりますが、そうなるとわざわざ履き替える意味が薄くなってきそう。イクシオンプロUSTも決して耐久性が高いタイヤではないと言われていますので、もしかするとALL SEASONの方が耐久性が高かったりするとそれはそれでアリですが
- INTENSIVE2・・・外でがしがしトレーニングしまっせ、という人には良いのでしょうが、正直あまり魅力的ではないですね。装着も大変というレビューがちらほら見かけられますし。海外通販活用すればお値段は魅力的ですが
- SECTOR 28・・・グラベル用ということで、本来選択肢には入らないタイヤではありますが。今のバイクでグラベルっぽく乗りたいな、という日が来たら考えましょうかね
ということで、現在のイクシオンプロUSTと少し異なる性格を求めつつも、同じような装着の容易性を妥協できないのであれば、FUSION 5 PERFORMANCE 11STORM TLRは面白い選択肢になりそうです。
ALL SEASONも気にはなりますが、とにかくインプレ記事が少なく判断し辛いですね・・・。
ロードバイク向けのチューブレスタイヤに関しては、前回調査したIRCと今回のハッチンソンが豊富なラインナップとなってます。
次回は(気力があれば・・・)その他のメーカーについても調べてみたいと思います。
いやはや、調べて理解してまとめる作業は、想像以上に疲れるし時間がかかりますね・・・。
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