まだまだCOVID-19の影響が残っているようで。寂しい話が続きました。
ここ最近、ローディーに人気の高い英国発ハイエンドサイクルウェアブランドが、次々と経営難に苦しんでいるという話題が続いています。
サイクルウェア業界の苦境
Raphaの8年連続赤字とクラブハウス縮小戦略

Raphaは、プレミアムサイクルウェアの代名詞として知られる英国ブランドですが、2024年時点で8年連続の営業赤字を記録しています。2024年度の営業損失は1,720万ポンド(約30億円)と、前年の2,120万ポンドから改善したものの、依然として厳しい状況が続いています。売上高も1億1,000万ポンドから9,600万ポンドへ減少しており、CEOのFran Millar氏は「修正すべき点がある」と認めつつ、ブランドの潜在力は「非常に強い」と強調しています。
この財務悪化の背景には、COVID-19ブーム後の市場縮小があります。パンデミック時には自転車需要が爆発的に増えましたが、調子に乗って各社価格が鰻登り。値上げをするブランドもあれば、シンプルに需要に供給が追いつかずに値段が上がったものもありますが、その反動で消費者からの信頼感は大きく低下することに。
特に英国市場では売上が18%減と顕著で、北米も2%減と軟調です。加えて、倉庫移転費用として290万ポンドを計上した影響も大きかったようです。
こうした中で、Raphaは2026年4月までに米国4都市(Boulder、Chicago、Miami、Seattle)と英国Manchesterの計5クラブハウスを閉鎖することを発表しました。クラブハウスは店舗、カフェ、コミュニティ拠点を兼ねた同社の象徴でしたが、Fran Millar CEOは「苦渋の決断だが正しい選択」と位置付け、「シンプルでより良い(simpler, better)」運営へシフトすると宣言しました。
今後は残る20店舗のフラッグシップに集中し、オンラインと地域イベントを強化する方針とのことです。日本市場への直接影響は明言されていませんが、東京のクラブハウスは当面継続中。RCC(Rapha Cycling Club)イベントも維持される見込みです。
ただ、この「クラブハウス」を活用した差別化戦略こそがRaphaの強みだったはずなわけで、他社同様の「ごく普通の」販売スタイルへと転換することで本当にこの苦境を脱することはできるのでしょうか?
Raphaの苦境は、ハイエンドブランド特有の高価格戦略が市場縮小で裏目に出た側面もあります。年間数万円のジャージを求めるコア層は限られ、新規顧客が3万人減、RCCメンバーも4,000人減とファン離れが進んでいます。それでもEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は改善傾向にありますので、原価削減とセットで経営を継続することは可能なのでしょうが、マーケットの中に埋没していく危険性は高まってきました。
日本でもロードバイクブーム真っ只中の頃には、1日ライドに出かけるとRaphaのジャージを着たローディーと何回もすれ違ったものですが、最近は出会う機会も大きく減ってきたな、というのが実感だったりします。
Enduraのスコットランド撤退と連続赤字の連鎖
お次はEndura。日本では正規代理店がなかったように記憶していますが、海外のオンラインショップではよく見かけるブランドなんですよね。
1993年創業のスコットランド発ブランドEnduraも、深刻な再編に着手しています。親会社Pentland Group(JD SportsやSpeedoを傘下に持つ)は、マーケティング・製品開発・財務部門をロンドンの新ハブ(Farringdon)に集約し、スコットランドのLivingston本社から完全撤退。縫製工場は2025年3月に売却済みで、ブランドチームはエディンバラ経由でロンドンへ移転します。
財務面では、2023-2024年に1,400万ポンド、2025年2月期に470万ポンドの損失を計上。売上高は4,080万ポンドから2,850万ポンドへ30%減、粗利益は1,880万ポンドから370万ポンドへ急落しました。英国市場の低迷とサイクリング業界全体の厳しさが主因で、カスタムクロージング部門も不採算で閉鎖。Pentland CEOのChirag Patel氏は「長期的な成功のための投資」と説明し、北米市場のリソース強化を約束していますが、デザイン責任者のPete Newton氏(7年勤務)ら複数ベテラン社員がLinkedInで退職・レイオフを公表しており、社内動揺は大きい模様。
この「社内キーマンの離脱」というのは、インパクト大きいんですよね・・・。イコールいきなり倒産とか業務継続不可能となることはまずないのですが、長い目で見ると社員のロイヤリティが低下している顕著な傾向だったりしますので。
Enduraの強みはMTB/ロード両用で耐久性・コスパに優れたウェア群ですが、市場縮小で在庫回転が悪化。Berghaus(7年連続赤字)との共通再編からも、Pentlandグループ全体のリストラ色が濃厚です。
目先でいきなり消費者の目にも明らかな在庫不足や価格の変化があるとは思いませんが、この状況が続くとある日突然、みたいな話になりかねません。
Le Col創業者の退任と再編完了後の展望
そして最後に Le Col。こちらも正規の国内代理店はなかったように記憶していますが、公式サイトで普通に日本語で購入することもできますし、ライドに出ると時々見かけるんですよね。
2009年創業のLe Colは、元プロサイクリストYanto Barker氏が立ち上げ、Bora-HansgroheやMark CavendishのBahrain-McLarenチーム供給、Bradley Wigginsコラボで急成長したブランドです。しかし、2022年に600万ポンド超、2023年に340万ポンド、2024年に260万ポンドの連続赤字に陥り、プライベートエクイティPuma Investmentsから総額1,500万ポンドの支援を受けていました。
2025年10月7日、Barker氏が取締役を退任。新任のRichard Mills氏(Neilson Active Holidays CTO)が「2022年末からの再編を2024年10月に完了。人件費削減とサプライチェーン柔軟化で運転資金改善、収益性回復の道筋を確保した」と述べています。COVID後低迷が響き、UK本社の頭数合理化が主な内容です。Le Col側は「Yantoはブランドの重要な一部。新たな機会を探る」と前向きですが、創業者の離脱はやはりインパクトが大きいですよね。
Le Colの特徴は高性能・ファッション性の高いロードウェアですが、業界全体のプロモーション依存からの脱却が課題。新体制で「成長と収益性」を目指していくようですが、日本市場での認知はRaphaほど高くないですから、直接の悪影響は少ないとは思います。
3ブランド共通の苦境要因:市場縮小と構造問題
今回はたまたま英国ブランドで立て続けに不穏な情報が続いてわけですが、これら3ブランドに共通するのは、COVID-19ブームの反動ということで、背景は共通する部分が大きかったりします。
また、個人的には高価格戦略の限界もあるのではないかなー、と感じています。Raphaのジャージは3-5万円、Enduraのビブショーツは2万円前後、Le Colも同様のプレミアム帯となっています。これらブランドのコア購買層は中高年のある程度お小遣いのあるローディーになるでしょうから、即刻ユーザーの離反を招くといったことはないとは思います。
他方、新しくロードバイクの趣味を始める層にとっては、ここ数年、ロードバイク本体の価格高騰やもろもろの物価高騰もあり、サイクルウェアにいきなり大枚はたけるようなユーザーは少数派になってきたのではないでしょうか。
Raphaのファン離れ(RCC4,000人減)なんかはその顕著な傾向ですよね。
対して、同じようなハイブランドのAssosについてはこういった不審な情報は流れていないですし、日本国内だとパールイズミも堅調なようですし。
こういった競合にシェアを奪われている状況がありつつ、ブランド戦略をマーケットに最適化できていない状況が続いた結果、財務状況が悪化した、といったところでしょうか。
Assosはどうなんだろ?
ということで、ちょっと名前が出たのでAssosはどうなんだろ、と目を向けてみます。
スイス発Assosは非上場で詳細財務非公開ということで、詳細は不明ではあるものの、日本でPROSHOP TOKYO/NAGOYAを拡大中。少数精鋭の専門店+オンライン戦略で、Raphaらの「体験型拡大」という失敗をうまく回避してきました。欧州ではフラッグシップ中心、日本ではコンシェルジュ接客+為替対応値上げ(2025年10%)で柔軟な対応を行なっているようです。
店舗縮小の兆候もなく、プレミアム路線がうまくハマっているようですね。
Assosは今も昔も、「走っていると時々見かける」ブランドですが、Raphaが見かけなくなったのに対して、あまり印象は変わっていないかもです。
私自身、一通りウェアを揃えてしまっているので、ここ数年はあまり新しくウェアを買い足していなかったりします。
dhbやカステリで購入したウェアで満足していますし、耐久性もしっかりあるので、ヘタってきたウェアが出てくれば順次入れ替えていく位ですね。
ちょっとAssosは気になっていますが、確かに今からRaphaを買おう、とは思わないので「ブランド戦略」「ブランドイメージ」って、やっぱり大切なんですね。


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