Strava は自らのブラットフォームを守り切ることができるのか

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先日は「Strava遂に上場か」という記事を書いて、「Stravaも遂に安定飛行に入るか」と思っていたところですが、ここ最近裏では Garmin とのドロドロした紛争が続いていました。

Strava が遂に上場か?
コロナ渦を受けて低調となっていた株式市場への新規上場ですが、ここ数年大分復活してきたようですね。米国市場も日本市場もかなり株高に推移してきていますが、そんな折、Stravaが遂に米国株式市場へ上場を果たすのでは、という情報が飛び込んできまし...

ここに来てまた新しい動きが出てきましたが、はてさてどうなってしまうのやら。

ストラバ、ガーミンを提訴 ― 特許と開発ガイドラインをめぐる緊張関係

世界中のランナーやサイクリストをつなぐフィットネスプラットフォーム ストラバ(Strava) が、ローディーなら誰しも知っているガーミン(Garmin)を相手取り訴訟を起こしました。
焦点となっているのは、特許侵害新たな開発者ガイドライン。2社の長年のパートナーシップが揺らぐ事態となっています。

「ヒートマップ」と「セグメント」特許が争点に

ストラバが訴状で指摘しているのは、ガーミンのフィットネスデバイスやConnectプラットフォームで使用されているヒートマップおよびセグメント機能
これらがストラバの技術特許を侵害していると主張しています。

特にセグメント機能は、両社がかつて密接に連携して育ててきた象徴的なツール。ユーザーが走行区間ごとに記録を競い合えるこの仕組みは、ストラバの成長を支えた核のひとつです。
その機能が今、訴訟の中心にあるという事実は、両社にとって大きな転換点と言えるかもしれません。

ストラバは、これら特許侵害の状況が継続することを抑止する為に、ガーミン製品の販売を差し止めるように主張しています。

この手の「うちの特許を侵害しているんだから、販売を即座に停止せよ」という主張は、なかなか認められるケースは多くありませんが、相手に対してゆさぶりをかける戦略としては最も効果的な主張だったりします。

これがスタートアップ系の会社であれば、特許侵害、販売差し止めの流れの先に求めるものは「金銭的な保障」になるケースが多いのですが、これまで蜜月関係でプラットフォームを育ててきたストラバが、ガーミンから特許料と称して金銭的な補償を得ることを目的としているとは、あまり考えられなかったりします。

その真意はいずこに。

そんな疑問を抱えていたところ、ストラバから第二弾の主張が。係争中とのことで一切のコメントを控えているガーミンとは対照的にストラバはまーよくしゃべってくれます。

対立の火種はガーミンの新ガイドライン

ストラバによれば問題の本質は特許侵害ではないとのこと。
7月にガーミンが発表した新たな開発者ガイドラインが、関係悪化の引き金になったとしています。

そのガイドラインでは、ガーミンデバイスで記録されたすべてのアクティビティに、ガーミンのロゴを表示することが義務付けられました。
さらに、11月1日までに対応しなければAPI(データ連携)アクセスを遮断する可能性があると通知されています。

APIが遮断されると、ガーミン製品からストラバにデータをアップロードすることができなくなりますので、ストラバをメインのデータ管理基盤に使っているユーザーにとっては不便極まりないことになりますし、ストラバにとっては死活問題です。

ストラバの最高製品責任者マット・サラザール氏は、Redditで次のようにコメントしました。
「この新ルールはユーザー体験を損ねかねず、個人データを使った過剰なブランド露出を強いるものだ」と。
同社はより控えめなクレジット表示での妥協案を模索してきたものの、交渉は合意に至らなかった主張しています。

どうでしょう。

何かがうっすら見えてきた気がしませんか?

ガーミンからすると、「オレんところの製品使って集めたデータで自前のデータプラットフォームを構築しているストラバは、ちょっと調子に乗りすぎ。それはガーミンのお陰なんだよ、というクレジットくらい入れろや」といったところでしょう。

ガーミンもデータをテコに独自のプラットフォーム、コミュニティ形成を目指す企業ですから、そのロゴ表記を目にしたユーザーに「ガーミンのコミュニティに戻ってきてもらう or ガーミンコミュニティに新たに興味を抱いてもらう」きっかけを提供したいのでしょうね。

マーケティング戦略としては妥当なものでしょう。

では、ストラバが主張する「ユーザー体験を損ねる」という主張はどうでしょうか?
正直、ちょっと無理筋な気がしてなりません。
ガーミン経由でアップロードされたデータにガーミンロゴが張り付いていると、そこまで目障りに感じますかね?

ストラバが恐れているのは、ストラバに表示される各種データのあちらこちら、大多数にガーミンロゴが表示されることで、「なんだ。みーんなガーミンユーザーなんじゃん。で何? ガーミンにも似たようなコミュニティ機能があるの? じゃそっちも使ってみよかな」と思われてしまうことが怖いのでしょうね。

ストラバ「ユーザーの接続は守る」

法廷での争いとは別に、ストラバはユーザーに向けて安心を呼びかけています。
広報担当者は「この問題はあくまで企業間のものであり、ガーミンユーザーのストラバ接続が途切れるような変更は現時点で予定していない」と明言。
さらに「途切れない接続を維持することが最優先事項」と強調しました。

つまり、訴訟や開発ガイドラインの混乱の中でも、ユーザーの利便性が損なわれることは今のところなさそうです。

11月以降の変更と今後の見通し

ストラバは11月1日から、自社APIのポリシーを更新する予定です。今後、ガーミン由来のデータを使用するアプリでは、「ガーミンへの帰属表示(クレジット)」を含める必要があります。
ただし、「できる限り目立たない形で表示する」ことを原則としており、ユーザー側の見た目や操作感には大きな影響はない方向で調整しようと努力しています。

これまでのところ、できるだけ「控えめな」クレジット表記に止めたい意向をガーミンに伝えるも、折り合えていないというのが実情。

そりゃ困った。それじゃあ別件特許侵害でガーミンを訴えて、そちらの訴えを取り下げる代わりに穏当なクレジット表記に抑えてもらおう、というのが本音でしょうね。

そして今回、ガーミンインパクトを抑える為にストラバは新たな策を講じようとしています。

このクレジット表記に関するルールをガーミンに限らず、他のデバイスパートナーにも平等に適用しよう、というものです。

ストラバとしては、例えばヒートマップなどの個別データが表示されている箇所とは別の場所にひっそり控えめに、「これらデータは各種・各社デバイスから連携されています。ちなみにこのデータはガーミン由来ね」みたいな形で、データの帰属元がどこなのか、といった情報について、特段意味を有さない表記に希薄化してしまおう、というものです。

Stravaとしては、個社依存ではなく、オープンかつ公平なエコシステムを守りたいという考えが背景にあるわけですね。

他社デバイスに依存しているが故に、ここは踏み外したくないところなのでしょうが、立場は弱いですねー。

ユーザーにとっての意味

今回の一件は、一見企業間の対立に見えますが、その根底には「誰がユーザーデータをどう扱うか」という根源的な問題が潜んでいます。
フィットネスデータがAIのトレーニングや広告露出に利用される時代に、プラットフォーム運営の透明性がかつてないほど問われています。

幸いにも現状では接続やデータ共有の制限は発生していません。
ただ、ストラバとガーミンの関係がどう再構築されるかによって、今後のフィットネスアプリの連携モデルそのものが変わる可能性もあります。

アップル同様、デバイスからデータまで一元管理している企業はこの点強いわけで、ガーミンはまさにその路線を目指そうとしているわけです。

公平・中立なストラバには頑張って欲しいところですが、今回の訴訟でうまく自分たちの中立性を担保することができるのか?

11月には新たな動きが出てくると思いますので、紛争の状況については注視したいと思います。

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