先日興味深い記事がありました。
「昔ながらのスチールバイクは最新のレースバイクを打ち負かすことができるのか!?」という内容になります。
なかなか刺激的なタイトルになっていますが、はてさて結末や如何に。
30年前のクロモリバイクは最新のカーボンバイクに勝てるのか?
1. 対決する2台のバイクプロフィール
まず、対決するのはコルナゴのバイク。
- 最新2022年モデルのC68。カーボンにしては珍しいラグで組まれたフレーム。グループセットは最新のデュラエース9200、Di2の油圧ディスクブレーキモデル。フロントは 52/36 、リアスプロケットは11-30という組み合わせ。タイヤは28mm のピレリPゼロレース、そう重量は7.3kg
- 対するクロモリフレームは、1992年モデルのコルナゴマスターオリンピック。コンポーネントはデュラエース7700、9速、フロント53/39、リア12-23(!)のリムブレーキモデル。タイヤは23mmのミシュランタイヤ、重量は9kg超
はい。
かなーり違いがありますね。
この時点で「これはフレームの違い以上に、コンポーネントやタイヤの違いが出るのでは!?」という匂いがぷんぷんしてきました。
これら2台のバイクに、ペダル式のパワーメーター(Wahoo Powerlink Zero)を装着して、同じような走り方(同様の平均出力)をして比較してみた、というお話になります。
2. 起伏のあるコース(7.3マイル)
まず一本目のコースが、起伏のある 7.3マイル(約11.75km)のタイムトライアル向けコース。今回のレビュワーはこのコースを何百回も走ったことのある普段使いのコースだそうで、比較に適した環境となっている模様。
ペースとしては、レビュワーにとってのトレーニングゾーン3に該当する225Wをキープして走行比較を実施。
で、結論がこちら。
- マスターオリンピックでは、平均225W、20.7mph(33.3km/h)でタイムは21:15
- C68では走っていて楽しくなってしまったため若干オーバーパワー(234W)、21.1mph(33.9km/h)、タイムは20:53
- パワーを揃えて「同じスピードで走るために必要なパワー」を計算すると、時速30kmで揃えた場合、マスターオリンピックの方が6.3W少なくて済む計算に
- 但し、例えばC68に乗った時に対向車のトラクターにより速度が落ちたこともあった為、6.3Wは誤差の範囲とも受け止められる
- また、ハンドルの幅がマスターオリンピックが38cmであるのに対してC68は44cmであったことから、全体の空気抵抗係数(CdA)はマスターオリンピックの方が有利。ポジションに基づく空気抵抗の多寡を加味すると、この結果は驚くに当たらないものであった
ハンドル幅が違うとか、できれば事前に揃えておいてよ・・・と言いたくなりますが。
こういった比較レビューをしてくれる人に文句を言ってはいけませんね。
最新の風洞実験をすれば、C68の方が「速い」という結論が出るとは思うのですが、それ以上にライダー込みのポジション(空気抵抗)の方が影響が大きかったね、という、ある意味「そりゃそうだ」という結論になってしまいました。
3. ヒルクライムコース(1.4マイル / 斜度8%)
二本目が1.4マイル(約2.25km)、平均斜度8%のヒルクライムコース。
時速16kmで走った場合、空気抵抗よりも重量差が効いてくるコースでもありますので、2kg近い重量差を考えると、今回はさすがに最新のC68に軍配が上がりそうなコースとなります。
- マスターオリンピックは280Wでタイムが7:53、C68では280Wでタイムが7:39。今回はパワーを綺麗に揃えて走ることができた
- 約2kmのコースでタイム差にして14秒
時間にして14秒と聞くとあまり大きく聞こえませんが、距離にすると約67mほどの開きになります。
そう考えると、ぶっちぎりの差、ではあるんですよね。
ただ、ヒルクライムコースにおいて、フロント39、リア23のギアの組み合わせはかなりしんどかったようで。
いやほんと、そこは揃えておきましょうよ・・・。
4. サマリ
最後にタイム差以外に関しては、「とにかく乗り心地はC68が数段上で、単純に乗っていて楽しかった」というコメントで締め括られています。
ただ、タイヤが 23Cと28Cという違いがありますので、この辺りを捉えて「30年の進化!」と結論付けてしまうのは少し乱暴ですよね。
タイヤやコンポーネント、全てをまるっと含めて「レースモデルのバイクが30年経つとこうなる」という記事として読むべきでしたね。
ただ、今回の走行比較はレースシーンにおいてはかなりクリティカルな違い、劇的な進化、と言えるかと思いますが、週末ローディー的にはそこまで目くじら立てる内容ではなさそうです。
むしろ、ホイールやタイヤ、適切なスプロケットを選択すれば、30年前のクロモリフレームでも十分楽しめるのでは、という内容でもありましたね。
できれば、その辺りを揃えたインプレにしてもらえると、もっと興味深い内容になったのではないかな、と思います。
ま、私にはできない比較なので、文句言ってはバチが当たりますね。
コメント
ハイテンから移行したあとの全盛期がクロモリ7年、アルミ10年、カーボン20年でカーボンの時代が長く、そのカーボンの中ですらパーツ変遷に合わせて色々変化しているますから、記事内容はフレーム素材の違いではなく最新パーツの差ですね。
例えばホイールは最近ディスクブレーキ用のものはリムブレーキ用より200g以上も軽くなって、1500gが目安だったところが1200g代がどんどん出ているし、タイヤもレース用の28Cや30Cは昔の23Cより軽くてしなやかですが(そもそも今の28/30Cは昔と幅の規格が違う)、どちらもフレームが対応していなければ使えません。
比べるなら、今の機材に合わせた設計のクロモリとカーボンでなければミスリードを誘うだけですよね。
せっかくの比較インプレなのに、「惜しい!」という感じのする記事でした。
30年の差を大きいと捉えるか、これだけの差と取るかも、受け止める人によって分かれそうな結論でしたし。
とはいえ、こう言った比較記事って国内だと少ないので貴重なんですよね。