シマノの狙いはうまくマーケットにはまるのか?(CUES Custom Build Project)

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シマノが面白い取り組みに着手しました。

何かを始めるきっかけをCUESで(CUES Custom Build Project)

CUES Custom Build Projectとは

シマノさん、面白い取り組みにチャレンジしてきました。

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シマノが全国5つのショップと手を組んで、CUESを搭載したオリジナルバイクを組み上げて紹介するという「CUES Custom Build Project」を始動しました。

CUES Custom Build Projectは、カスタムビルドを得意とするショップへ、SHIMANO CUESを使った自転車のカスタマイズを依頼。

実際に組みあがったバイクは試乗も可能で、
同じ仕様で各ショップへご注文いただくこともできます。

これだけ聞くと、CUESを普及・認知させるためのちょっとしたマーケティングといったところなのですが、正直、最初に思い浮かんだ印象は、「コンポーネントとしてCUESを選ぶような層はそこまで改造しないのでは?」という懐疑的なものでした。

そもそもCUESとは(ライフスタイル・バイクの「標準」を再定義するコンポーネント)

シマノ「CUES」は、これまで複雑に分かれていたミドル〜エントリーグレードのコンポーネント(Alivio、Acera、Altus、および一部のDeoreやSora/Tiagraの領域)を統合し、全く新しい設計思想で誕生したブランドです。

その最大の特徴は、それまでのコンポーネントに寄せられていた単なる「廉価版」という印象を払拭すべく、「互換性の統一」と「圧倒的な耐久性」を軸とした、ユーザーとショップ双方にメリットをもたらすプラットフォームである点にあります。

ラインナップ構成

CUESは、主に3つのグレードで構成されており、幅広い用途に対応しています。

グレード 主なターゲット 段数 特徴
U8000 シリーズ 最上位(トレッキング・アーバン) 11s 質感の高いポリッシュ仕上げ。上質なアーバンバイクや本格的なライド向け。
U6000 シリーズ ミドル(オールラウンド) 10s / 11s 最も汎用性が高く、MTBから街乗りまでカバーするCUESの中核。
U4000 シリーズ エントリー 9s 優れたコストパフォーマンス。日常使いのクロスバイクやエントリーMTB向け。

3つの核心的テクノロジー

① LINKGLIDE(リンクライド)による高耐久性

CUESの心臓部は、新駆動系規格「LINKGLIDE」です。
従来のハイエンド向け(HYPERGLIDE)に比べ、摩耗耐性が約3倍に向上させています。また、歯の形状は厚く、タフに設計されており、特にE-BIKEのような強い負荷がかかる状況でも、ショックの少ない滑らかな変速を実現しています。

② 驚異的な「互換性の統合」

複数レイヤーにおけるコンポーネントを統合する規格へと進化させています。

9段、10段、11段で、スプロケットのピッチ(間隔)やチェーン、リアディレイラーの引き量を可能な限り共通化。「この変速段数にはこのチェーン」という複雑な組み合わせを覚える必要がなくなり、パーツの入手性やメンテナンス性が飛躍的に向上しました。

③ ユーザーフレンドリーな操作感

シフトレバーは直感的に操作できるデザインを採用。リアディレイラーについてはチェーンの暴れを抑え、障害物への接触リスクを低減する薄型設計を全グレードに採用。

市場における位置付け

これまでのエントリーコンポは、上位モデルの「お下がり」という印象が拭えませんでした。しかしCUESは、独自のマットな質感や統一感のあるデザインにより、「安価な代用品」ではなく「信頼できる標準装備」としてのアイデンティティを確立しています。

メンテナンスやユーザビリティを向上させる為の規格統一という点が最も価値の高いものであるとは思うのですが、CUESはデザイン面にもこだわりを感じていたこともあり、「少しマーケティング戦略を変えてきたのかな?」という印象を持っていました。

そこへ来て今回の「こだわり系」ショップとの連携企画。

シマノさん、色々と考えていますね?

シマノの狙い:エントリー層を「使い捨て」から「ファン」へ

これまでのエントリーグレード(Altus, Alivio, Tiagra等)は、完成車に組み込まれた「初期装備」として完結し、摩耗や故障が起きれば乗り換えるか、あるいは修理に留まるのが一般的でした。シマノはこのプロジェクトを通じて、その構造を破壊しようとしているように見えます。

CUESの核心は、9s/10s/11sでスプロケットのピッチやチェーンを共通化した「LINKGLIDE」規格にあります。この「混ぜて使える(互換性の高さ)」という利点を、単なるスペック表ではなく、ショップのカスタム車両という「具体的な完成形」で見せることで、ユーザーに「自分でもいじれるかも」という想像力を喚起しています。

イメージって、大切なんです。

そして 「Fairweather」や「E.B.S」といった、いわゆる「エブリデーバイク」や「ネオ・ランドナー」に定評のあるショップと組んでいる点が象徴的です。これらは「一生物のフレームを自分好みに育てる」文化を持つ層。そこにCUESというタフで汎用性の高いコンポを合わせることで、「高級レース機材ではないが、愛着を持って長く乗る」という新しい市場(ライフスタイル派)を確固たるものにしようとしています。

また、シマノはショップとの共存共栄も意識しているように見えます。
ユーザーが何をしたいか(通勤か、週末のキャンプか)に対し、CUESの広い互換性(パズルのピース)を組み合わせて最適な「解」を出す。ショップを単なる「販売店」から「ビルダー(ソリューションプロバイダー)」へと押し上げる狙いがあります。

このプロジェクトは成功するのか?

私が小学生だった頃は、子供は漠然と「自転車への憧れ」を持っていた世代だったように感じています。
そもそもギアがついているような格好良い自転車は皆が持っているものではありませんでした。
そうした幼少期の憧れがあれば、大人になって金銭的余裕が生まれた段階で「自転車にこだわるぞ」という意欲が湧き上がるのは自然なことですが、今の物に溢れた時代において、今回のシマノの狙いは成功するのでしょうか。

「性能」ではなく「スタイル」の提案

エントリー層にとって、数gの軽量化(性能向上)はカスタマイズの動機になりにくいものです。成功の鍵は、今回のプロジェクトのように「このショップが組んだバイク、カッコいいな」と思わせるビジュアル的なフックです。CUESのマットな質感や無骨なデザインを、ファッションやインテリアに近い感覚で提示し続けられるかが重要です。

アップグレードパスの明確化

「一気に全部変える」のはハードルが高いですが、「チェーンやスプロケットを交換するタイミングで、一つ上の段数にしてみませんか?」という漸進的なカスタマイズを容易にする(LINKGLIDEの恩恵)という訴求です。消耗品交換の延長線上にカスタマイズを置くことで、心理的障壁を下げられます。

コストの透明性と「満足度」のバランス

エントリーバイクにカスタム工賃をかけると、新車を買うのと変わらないコスト感になりがちです。ここを「自分だけの1台」という付加価値で納得させられるか。あるいは、DIY層(メンテナンスを自分で行う層)に対して「いじりやすさ」をどれだけアピールできるかが鍵となります。

 

特に最初の2点に関しては「ショップとの関係性」が強くものを言う世界となっていますので、今回のようにショップとタッグを組んでプロジェクトを進めることに意味があるわけです。

と、教科書的な流れはその通りだよなー、とは思うのですが、果たして日本において「ロードバイクおじさん」以外のマーケットをどこまで掘り起こすことができるのか、そしてその層を「長く」そのポジションに留めることができるのかが重要になってきますが、ロードバイクブームですら約10年程度しか持続しませんでした。

シマノの挑戦がどこまで実を結ぶのか、自転車好きな人間としては応援したい気持ちがありつつも、興味津々で見守りたいと思います。

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