インドアサイクリングを今から始めるなら何が良いのか?(Zwift vs TrainerRoad vs Rouvy)

きっかけ
気づけばロードバイクを初めて約9年が経過しました。
ロードバイクに乗り始める前にもマウンテンバイク、クロスバイクと自転車趣味はありましたので、自転車という観点からは30年以上続いている趣味だったりします。
当然、野山を走ったりツーリングに出かけたりとリアルライドが一番楽しいことに変わりはないのですが、気候の変化や生活スタイルの変化に伴い、リアルで走りに行ける「時間」が昔ほど取れなくなってきたのも事実。
今でも3本ローラーでインドアでも走っているのですが、基本動画を見ながら走ることが多いです。
過去にZwiftにトライしたことはあったのですが、何かしっくり来なかったという経緯も。

とはいえ、動画ばかり見て走るのも、それはそれで飽きてきますので、ぼちぼちインドアサイクリングの幅を広げようかなと思い、あれやこれやと調べてみました。
今回はタイミングよくCycling Weekly に各プラットフォームの比較記事が転がっていましたので、ちょっと今回は読み物風にまとめてみたいと思います。



インドアサイクリング三強の進化史:Zwift、Rouvy、TrainerRoad
屋内サイクリングは、もはや冬季トレーニングの代替手段ではない。
Zwift、Rouvy、TrainerRoadという3大プラットフォームは、仮想走行・現実拡張・AIトレーニングという異なる方向から「室内で速く強くなる」ことを追求し、プロチームからアマチュアまでを巻き込む巨大エコシステムを形成している。
本稿では、それぞれの歴史、技術哲学、そして2025年現在の立ち位置を徹底比較していく。
Zwift:ゲームの世界から生まれたリアルな競技空間
起源と発展
Zwiftは2014年にカリフォルニアで誕生した。当時、単調なローラー台練習を面白くしたいという構想から始まり、ゲームデザインとサイクリングデータを融合させた。
パンデミック期には世界中で同時接続者数4万人超を記録し、「Fun is Fast(楽しさこそ速さ)」を掲げて市場を一変させた。
2020年代初頭からはZwift Racing LeagueやUCI eSports World Championshipsを開催し、eスポーツ化したサイクリングの象徴となった。
技術と競技性
Zwiftの魅力は、単なる仮想世界ではなく、FTPやワットベースの定量トレーニングを「ゲーム的動機付け」と結びつけた点にある。
仮想国Watopiaには100以上のコースと時間帯別ロボペーサー(AIペースメーカー)が存在し、常時レースやグループライドが開催されている。
ZwiftPowerとの連携により、詳細なパフォーマンス分析も実現。仮想でありながら、実戦的レーストレーニングが可能だ。
近年はハードウェア事業にも拡大し、自社開発のスマートトレーナー「Zwift Hub」やハンドルコントローラー「Zwift Play」をリリース。
2025年にはTrainerRoadとの公式API統合を発表し、AIトレーニングと仮想走行の融合を実現している。
特徴まとめ
-
創業:2014年
-
世界同時接続:最大43,000人以上
-
専用ハードウェア:Zwift Hub, Zwift Play
-
主な競技:Zwift Grand Prix, Zwift Racing League
-
価格:約20ドル/月
Rouvy:実写ARが生む“デジタル現実主義”の走行体験
歴史と背景
Rouvyの起源は、2003年のチェコ地方都市ヴィソケー・ミートに遡る。創業者Vít Vondráčekが「外で走る感覚を室内に持ち込む」ことを目指し、2017年に現在のブランド名へ統一。
実写映像とGPS標高データを組み合わせたAR(拡張現実)技術で、世界中の実在ルートを再現する新たな方向性を打ち出した。
プロチームとの提携(La Vuelta、Lidl-Trek、Visma | Lease a Bikeなど)を通じ、ツール・ド・フランス級のステージ再現を可能にしている。
技術的特徴
他のアプリが仮想空間を構築するのに対し、Rouvyは「現実世界を再構築」する。
数千本のARルートを備え、GPSカメラからアップロードした映像を独自のRoute Creatorツールで仮想化。
2025年10月には「タイムセグメント」機能を導入し、コースごとにスプリントやヒルクライム区間のランキングを可視化。
AR技術とパワーデータを統合し、ヒルクライム専用トレーニング・実走再現分析に特化する方向へ進化している。
Rouvyは単なる「風景アプリ」ではなく、勾配再現の精度が業界随一。
プロ選手は登坂パワー分布と浮動負荷の管理に利用しており、特にAlpe d’Huez、Stelvio、Mortiroloなど実在コースの事前シュミレーションに強みを持つ。
特徴まとめ
-
創業:2003年(2017年に現ブランド化)
-
テクノロジー:拡張現実(AR)映像、GPSルート生成
-
提携:La Vuelta、Visma-Lease a Bike 他
-
主対象:トライアスリート、ヒルクライマー
-
価格:約19.99ドル/月
TrainerRoad:AIで“速くなる”を科学する
誕生と進化
TrainerRoadは2011年、米ネバダ州リノで創業。創業者Nate Pearsonらが「科学的に速くなる(Make You a Faster Cyclist)」を掲げ、パワートレーニング理論の自動化に挑んだ。
初期は単純なERG制御ソフトだったが、2018年以降に構造化トレーニングアルゴリズムを導入。
2021年からはAdaptive Trainingをリリースし、AIがトレーニングプランを自動調整。
2025年には念願のZwift API連携が実装され、Zwift内でTrainerRoadのワークアウトを直接走行可能となった。
科学的アプローチ
TrainerRoadは、250万件を超えるアスリートログと25億件以上のワークアウトデータを解析。
それを機械学習モデルに反映し、疲労検知・パフォーマンス予測・トレーニング負荷管理(TSS、CTL、ATL)を自動最適化する。
FTPテストももはや過去のものとなり、実走データから動的に閾値パワーを更新する。
上級者にとっては、レースカレンダーに基づくピーキング戦略の再現性が高く、Zwiftの「感覚的トレーニング」を数値的に裏打ちする理想的なツールといえる。
特徴まとめ
-
創業:2011年(米ネバダ州)
-
主要開発:Adaptive Training、AI FTP Detection
-
データ:2.5億件以上のアクティビティ
-
連携:Zwift API(2025年統合開始)
-
価格:21.99ドル/月
Zwift vs Rouvy:仮想か現実か、哲学の違いが生むトレーニング体験
世界観の根本的差異
Zwift と Rouvy は、どちらもスマートトレーナーを活用したインドアサイクリングアプリであるが、設計思想が真逆に近い。
Zwift はゲームエンジンで構築された「仮想世界」。都市や山岳などを模した3D空間で、数千人のライダーが同時に走る完全なメタバース型サイクル・シミュレーターだ。
一方で Rouvy は現実データに基づいた「実写拡張型」。世界中の実在コース映像をストリーミングし、拡張現実(AR)で勾配変化や他選手をオーバーレイ表示する。
この根幹の違いにより、Zwift は**モチベーションの社会的循環(レース・コミュニティ・称号)を作り出すのに長け、Rouvy はリアリズムと再現精度(実走力育成・登坂戦略)を極めている。
視覚・データ体験の質
-
Zwift:架空ワールド(Watopia、London、Parisなど)を組み合わせ、多様な標高・レイアウトで常に“変化”を演出。ゲーム感・色彩・報酬設計が強く、心理的に高出力を維持しやすい。
-
Rouvy:実写ルート数千本を配信。ARタイムセグメントを活用し、先頭ライダーや過去記録をオーバーレイ表示。Zwiftよりも小規模ながらも、実戦登坂感=トレーナー負荷と映像勾配が完全連動するため、ヒルクライムの再現精度は業界随一。
Zwift が「どんどん強度を上げていくゲーム的課題解決型」であるのに対し、Rouvy は「一定強度を正確に維持して登り切る現実型」。この哲学差はトレーニング思考にも影響する。
コミュニティ vs 個の集中
Zwift では同時接続が数万人規模に達し、Zwift Racing League や Tour of Watopia など恒常イベントが開催される。これが群集心理的モチベーション維持を生む。
対して Rouvy はユーザー数こそ少ないが、個々のトレーニング目的への忠実度が高い。実在する峠(Alpe d’Huez, Stelvio, Ventoux等)を事前ビューで再走し、本番用のペーシングを最適化する実戦派ライダーが中心。
ハードウェア要求と環境特性
Rouvy は HD映像ストリーミングが基本のため、安定した高速回線(5〜10 Mbps以上)が推奨。GPU性能はそこまで必要ない。
Zwift は逆にレンダリング処理をGPUで行うため、ゲーミングPCやiPad Pro級の性能が望ましいが、多少の通信遅延にも強い。
結論:次元の異なる「リアリティ」
どちらが優れているかではなく、どんな“リアリティ”を求めるかが選択の基準である。
-
“視覚的リアル”と“実在コース再現” → Rouvy
-
“心理的リアル”と“社会的競走再現” → Zwift
両者は方向が異なるが、2025年現在はZwift×Rouvy併用派も増え、Zwiftで有酸素負荷をゲーム的にこなし、Rouvyで登坂リピートを精緻化する形が上級者の常套パターンになっている。
Zwift vs TrainerRoad:感覚的走行か、数理的合理性か
開発思想の対極
Zwift がリアルタイム走行型シミュレーターであるのに対し、TrainerRoad は「数理的トレーニング最適化エンジン」。
2011年の創業以来、AIと統計解析による構造的パワートレーニングを軸に発展。Adaptive Trainingにより日々の状態から最適負荷を計算し、FTP(Functional Threshold Power)を自動更新する。
Zwift が感覚とコミュニティを重視する「走る場」であるなら、TrainerRoad はデータによる「鍛えるラボ」である。
モチベーションと学習効果の違い
-
Zwift:他者と走る“臨場感”が動機を維持する。レース、バッジ、XP、ZwiftPowerでの記録管理といったゲーミフィケーション要素が大きい。強化は継続習慣の中で自然に積み上がる。
-
TrainerRoad:人間要素を排除し、AIによる逐次調整で効率的にFTPを向上。毎回のトレーニング効果(負荷率・再現性・TSS推移)を計算し、ビルド期~ピーク期を体系的に設計できる。
Zwiftは「走りたい時に気楽に入れる臨場バトル環境」であり、TrainerRoadは「レース期ピーキングを支える科学的マネージャー」。
最新の融合トレンド
2025年に両者がAPI統合を開始し、TrainerRoadで作成したトレーニングをZwift上で走行可能となった。
これにより、Zwiftの仮想世界を背景にAIアシストされたセッションを実施できるようになり、「感覚×科学」の融合が実現。
ZwiftのデータにTrainerRoadの解析アルゴリズムを反映し、TSS・CTL・ATL変化をリアルタイムに学習する仕組みが導入されつつある。
メンタル・フィジカルの使い分け
ロードバイク上級者は両者を明確に使い分ける。
-
週中のインターバルトレーニング:TrainerRoad(AIが負荷調整)
-
週末のグループレースやロングライド:Zwift(モチベ維持)
このハイブリッドを採ることで、「最適化」と「継続性」の両立が可能となる。
比較表
以下にざっと比較表でまとめてみましたので、こちらもご参考までに。
| 観点 | Zwift | Rouvy | TrainerRoad |
|---|---|---|---|
| 世界観 | 3D仮想空間 | 実写ARルート | データ指向トレーニング |
| 主目的 | モチベーション・競技感覚 | 実走再現・登坂練習 | パフォーマンス最適化 |
| コミュニティ性 | 非常に高い | 中程度 | 低い(個人特化) |
| データ解析 | 標準的(ZwiftPower) | 限定的 | 高度(AI・TSS管理) |
| 推奨ユーザー | レース志向・社交派 | 実戦派・トライアスリート | 数値思考型アスリート |
2025年の結論:融合のフェーズへ
かつては「Zwift=楽しむ」「TrainerRoad=鍛える」「Rouvy=リアルさ」と明確に棲み分けられていたが、現在は三者が相互接続と融合の時代に突入している。
ZwiftとTrainerRoadの統合は象徴的で、仮想コースを走りながらAIベースでトレーニング負荷を最適化できる“ハイブリッド環境”が現実のものとなった。
Rouvyは一方でAR技術による実走路面再現を磨き、Zwiftとは別ベクトルの「リアルロード体験」を極めている。
上級者が今選ぶべきは、単一アプリではない。
Zwiftでモチベーションを保ち、TrainerRoadで精密に追い込み、Rouvyで実コースをシミュレートする。
これこそが、2025年における「最速への最短ルート」である。
私に最も合うアプリは何なのかAIに聞いてみた
ちょっと最後まで読み物風にまとめてみましたが、私も今回改めて内容調べてみるまでは、シンプルに「Zwift=楽しむ」「TrainerRoad=鍛える」「Rouvy=リアルさ」という観点でインプットされていました。
各プラットフォームがそれぞれの強みを活かしつつも、「使い分け」も念頭に連携機能を用意していたりと、棲み分けが進んでいるようですね。
確かに、トレーニング上級者であれば、それぞれの良いところを使い分けて、より総合的なトレーニングを行うのが良いのでしょうね。
とはいえ、私のような「ノンシリアス」ローディーの場合、いきなり3つも契約したところで、そこまで効果的に使い分けなんてできるとも思えません。
ちょっと、私のペルソナ情報も交えつつ、このご時世ですのでAIにおすすめのアプリがどれかを聞いてみました・笑
せっかくなので、プロンプトとして打ち込んだ週末ローディーの属性も晒しておきますね。
・平日は仕事をしており、平日は室内で自転車に乗るのは一回30分、平日に1、2回程度
・週末は基本外に走りに出かけるが、天気がよくない週末や、暑さの厳しい夏場は室内で走りたい
・他のユーザーとつながるコミュニティ機能はそれほど重視しない
・走る目的は、レースに出場することではなく、「走ることを楽しむ」ことが一番
・その他の目的としては、自己成長や健康増進、体力増強
・年齢は50歳前後、体力は一般的な成人男性並み
以下がAIからの回答です。
提示されたペルソナのように「運動習慣を保ちたい一般サイクリスト」「平日は短時間・週末は屋外中心」「コミュニティ要素は重視しない」「楽しさと健康維持が目的」という条件の場合、最も適しているのは Rouvy(ルービー) である。以下にその理由を詳しく解説する。
Rouvy が最も向いている理由
1. 短時間でも“実走感”を味わえる
Rouvy は現実世界のコース映像を使う拡張現実(AR)型アプリで、実際のヒルクライムや景観を走るようなリアルな走行体験を再現できる。
30分程度のセッションでもモチベーションを維持しやすく、風景の変化が退屈さを防いでくれる。
Zwift のような仮想世界よりも落ち着いた雰囲気があり、「自然の中を走る快感」を室内で手軽に味わえる点が大きな強みだ。
2. コミュニティ依存ではない世界観
Rouvy にも他ユーザーとのライド機能はあるが、基本的には一人でも完結できる構成。
TrainerRoadほどストイックではなく、Zwiftのように大勢のプレイヤーの中に自分を投げ込む必要もない。
自分のペースで走りたいユーザーにぴったりのバランス設計である。
3. トレーニング目的より“健康維持”に適した刺激設計
TrainerRoadのようなAI構造化トレーニングは精密だが、短時間・気分転換の使用には心理的負荷が高い。
Rouvyは勾配変化や現実的な地形に基づく自然な強弱があり、“ちょうどよい負荷”で有酸素能力を刺激する。
特に暑い夏場や雨の日に外出代替として使う場合、トレーニング感よりも「心地よい汗をかく」目的に合っている。
4. コストと柔軟性
Rouvy はZwiftより安価(月15〜19ドル前後)で、年間契約の場合でも割安。
さらに「一時休会(最大180日)」に対応しており、週末は屋外重視というライフスタイルにも適応する。
5. 実際の外ライドとも相性が良い
Rouvy のルートは実在する峠や観光地をモデルにしており、外でのライド計画や旅行のモチベーションに直結する。
外を走る派のユーザーにとって、室内トレーニングが「実走準備」や「旅のシミュレーション」になる点は心理的な価値が大きい。
比較視点から見た適性整理
| アプリ | 長所 | 弱点 | ペルソナ適性 |
|---|---|---|---|
| Zwift | ゲーム感・イベント・大規模コミュニティ | グラフィックが人工的、月額固定 | コミュニティ興味薄なら魅力減 |
| Rouvy | 実写ARとリアルな勾配、課金柔軟、自然派 | 競技性は低い | ◎(楽しく体力維持したい中高年層) |
| TrainerRoad | AIで構造化されたプロ級トレーニング | 単調で負荷が高め | △(健康維持・趣味には過剰) |
結論
平日30分前後で軽く回し、週末は外を走るというライフスタイルにおいては、Rouvy が最も自然で持続可能な選択である。
仮想よりも本物の風景を眺めながら、無理なく筋力と心肺を維持できる。
コミュニティよりも「自分の時間としてのサイクリング」を楽しみたい成熟世代にとって、Rouvy はストレスの少ない理想的な屋内環境となる。
どうでしょうか。
なかなかに説得力のあるオススメになっている気がしますね。
何となくこの記事をまとめるまでは「Zwiftを再開するか否か」くらいで考えていたのですが私の場合は確かにZwiftを再開しても長続きするイメージがなかったものですから、ちょっと Rorveyの使用者レビューなんか掘り下げて検討してみましょうかね。












コメント