ロードバイク文化と「コーヒー」は、切っても切り離せない関係にあります。
紅茶や緑茶大好きな日本人からすると当初はあまりピンと来ていなかったのですが、欧州のロードバイク文化とコーヒーは非常に密接な関係にありましたので、見事に日本も同じような風潮に染まりました。
私自身コーヒーも大好きなのですが、ヘロヘロにななりながら走ったライドで、胃腸よわよわローディーとしてはコーヒーは「胃に優しくない」ので、この文化にはそこまで両手をあげて賛成ではないんですけどね。
ただ、コーヒーはローディーのパフォーマンスをブーストしてくれるという科学的なお話もあったり。

いきなり横道に外れまくりましたが、尾根間の基点にある CROSS COFFEE が大幅にリニューアルされることになりました。
その狙いや如何に。
CROSS COFFEE のリニューアルは吉と出るか凶と出るか
絶好の立地にあるCROSS COFFEE

尾根幹の基点となる矢野口交差点のすぐ近く、2017年にCROSS COFFEE は開業しました。
私も何度お邪魔していますし、尾根幹を走る際にお店の前を通過すると、お昼は当然、午後のティータイムまで常に自転車ラックはいっぱいだったりと、とても繁盛しているカフェだったりします。
こちらがCORSS COFFEE のコンセプト。
矢野口交差点は、サイクリングの集合場所や目的地として最適なロケーションでした。
サイクリングをレクリエーションとして生活に取り入れている欧米では、バイクライドの前後にはカフェに入り、コーヒーを飲みながら自転車について、ライドについて、次の計画について、語り合うことが習慣化しています。そのクロスロード(交差点)にサイクルカフェを作ったのは、サイクリングの最も楽しい時間を過ごす場所が少ないと考えたからです。
週末のライドの目的地として、あるいは仲間との待ち合わせ場所として、上質なコーヒーを提供するサイクルカフェはローディーにとってはとても有難い存在ですよね。
そして、従来CROSS COFFEE では 運営主体である チャンピオンシステムのウェア販売も行っていました。
ブランド戦略として「ウェア販売」と「カフェ」を融合させるビジネスモデルの難易度は、決して低いものではありません。
Raphaが証明した「コミュニティ形成」の熱狂と実店舗ビジネスの限界
サイクルウェアブランドにカフェを併設し、コミュニティの熱狂を生み出したパイオニアといえば、間違いなくRapha(ラファ)でしょう。
彼らは単なるウェア販売店ではなく、「クラブハウス」という概念を打ち出しました。最高品質のエスプレッソマシンを置き、ライドの発着点として機能させ、有料会員組織「Rapha Cycling Club(RCC)」の拠点とする。この「自転車×コーヒー」のライフスタイル提案は世界中のサイクリストの心を掴み、Pas Normal StudiosやCafé du Cyclisteといった後発のハイエンドブランドもこぞってこのスタイルに追随しました。ブランディングと超高LTV(顧客生涯価値)顧客の囲い込みという点で、この戦略は金字塔を打ち立てたと言えます。
しかし、ビジネスモデルとしてこれをグローバル規模で維持・拡大するのは別の問題でした。主要都市の一等地にカフェ併設の大型店舗を構えることは、莫大な固定家賃と飲食部門の運営コスト(人件費やオペレーション)を伴います。コロナ特需後のスポーツ自転車市場全体の冷え込みも直撃し、Raphaは世界的に長らく赤字に苦しむことになりました。
その結果、近年はマンチェスターや北米をはじめとする各地のクラブハウスを閉鎖・縮小し、ローカルの既存カフェと提携する「パートナーカフェ」制度へと方針転換を余儀なくされています。「コミュニティの熱狂」だけでは、巨大な実店舗の固定費を賄い続けることは難しかったのです。

そうなんです。
最初CROSS COFFEE が登場した時にも、「Raphaがうまくいっているもんね、なるほどね」と思ったものですが、その後のRaphaの苦境を見るにつけ、大丈夫なんかい?と気になるように。
CROSS COFFEEの成功
他方、ロードバイクブームこそ落ち着きを見せたものの、CROSS COFFEEは比較的活況を維持している印象でした。(平日はちょっと分かりませんが・・・)
CROSS COFFEE は、カスタムオーダーウェアを手掛けるChampion System Japanの運営拠点としてオープンしましたが、おそらく「ウェアを見に行こう」という目的で立ち寄る人よりも、「とても良い立地にあるカフェだし立ち寄ろう」というローディーが圧倒的に多いものと思われます。
運営さんには申し訳ないのですが、Champion Systemのウェアを買うために行く場所というよりも、その圧倒的な立地の良さと居心地の良さから、「週末のローディーが自然と吸い寄せられる繁盛カフェ」として独自の成功を収めてきた印象です。
Raphaのクラブハウスが「ブランドに帰属するコミュニティ」であったのに対し、CROSS COFFEEは「あらゆるサイクリストを受け入れるフラットなインフラ」として機能していました。BtoB(チームオーダー)が主力のChampion Systemにとって、店舗でのウェア直販利益に過度に依存しなくても、カフェ自体がコミュニティのハブとして自立して回っていたことは、非常に健全で理想的なスタイルだったように見えます。
BtoB拠点からBtoC旗艦店へ(KPLUS TOKYOへの大胆なシフト)

そんなCROSS COFFEEですが、大きなニュースが飛び込んできました。2026年9月、同店は台湾のプレミアムヘルメットブランド「KPLUS」のフラッグシップショップ「KPLUS TOKYO -CROSS COFFEE-」として大規模なリニューアルを果たします。

運営主体は引き続きChampion System Japanですが、店舗のフロントを飾るメインブランドを、BtoB主体のウェアから、BtoCど真ん中のヘルメット(KPLUS)へと掛け替えたのです。
ほほーう・・・。
最初このニュースを見た時に、「事業不振で事業売却したのか!?」ドキドキしてしまいましたが、運営主体は変わらず。
なんでK-Plusなの?と思わないではないですが、ロードバイクのウェア関連の中では、「最もフィッティングをしてから買った方が良いもの」の筆頭がヘルメットなんですよね。
フィッティングしないでウェアを買うことはありましたが、ヘルメットは必ず実店舗でフィッティングしてきました。
なるほど。
とても理にかなっているのかもです。
今回のリニューアルでは、フランスで自転車修行を積んだ元日本トッププロの新店長のもと、カフェメニューもフランスの風を感じさせるラインナップへと刷新されるそうです。
さらに、KPLUSのヘルメット「NOVA」などのストラップを好みのカラーに換装できる、店舗限定のカスタマイズサービスも導入されるとのこと。
個人的には、ヘルメット購入したらドリンクを1杯サービスしてくれるサービスが、結構心惹かれますね。
Raphaの事例を見てしまうとちょっと心配になってしまいますが、CROSS COFFEE はもともと「カフェとしての地力が強かった」お店です。
これまでのように「サイクリストの憩いのカフェ(ついでにウェアも置いてある)」という受け身のスタイルから、「KPLUSのブランド世界観を全面に押し出し、ショールーム機能と販売を最大化する」という攻めのBtoC戦略への舵切りは、なかなか面白いシフトだなー、と感じました。
従来のフラットでオープンだったCROSS COFFEEの居心地の良さを維持したまま、高いシナジーを生み出すのか。あるいは、ブランド色が強まることで、純粋なカフェ目的のサイクリストの足が遠のくリスクを孕んでいるのか。
これ、平日のお昼や午後がどうなっているの、気になりますねー・・・。
平日はご近所のお姉様方が立ち寄っていた場合、ちょっと入りにくくなる可能性があったり?
ちょっと今後の動きがどうなるか気になります。
早速立ち寄ってみないと、です。


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