新型 TREK Domane に見るシマノの退潮

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超絶個人的な意見ですが、過去イチ顕著なラインナップ傾向だな、と感じています。

新型DomaneではSRAMコンポが売れ筋価格帯に

先日、TREKから新型のDomaneが発売されました。IsoSpeedの廃止と圧倒的な軽量化が話題となっていますが、個人的にはそれ以上にラインナップに目を奪われてしまいした。

ちょっと今回はそんな週末ローディーの与太話にお付き合い頂ければと思います。

TREKから新型のDomaneが登場

TREKのエンデュランスロードを牽引する名車「Domane(ドマーネ)」の第5世代となる新型モデル(Gen 5)が発表されました。

クラシックレースを勝つための機材から、「真のエンデュランスロード」へとパラダイムシフトを遂げた今回の新型。長年ドマーネの代名詞だったギミックをあえて「捨てる」という英断により、かつてない軽量化を実現しています。

これにはちょっと驚きました。

旧型(第4世代)からの大きな変更箇所

新型ドマーネ最大のトピックは、これまでのアイデンティティであった複雑な機構を廃止し、「圧倒的な軽量化」へ舵を切ったことです。

IsoSpeedの完全廃止

初代から搭載されていた振動吸収システム「IsoSpeed」を廃止。これにより、フレーム単体での大幅な軽量化と構造のシンプル化に成功しました。

ダウンチューブ内蔵ストレージの廃止

第3世代から採用されていたフレーム内蔵ストレージも廃止。代わりにトップチューブやフロントトライアングル内に専用のボルトオンバッグマウントが新設され、外付けでスマートに積載する現代的な仕様へ変更されています。

ダウンチューブ内蔵ストレージは、Specialized がMTBで2015年に初めて採用車種を発表したと記憶していますが、ロードバイクに関しては、Trekが第三世代のDomaneで2020年モデルで採用したことによ、その後各社へと波及していった印象でした。

そのDomaneで採用を見送ったというのは、ちょっと意外でしたね。

サイズ展開のシンプル化

今作からフレームサイズが「S / M / L」といったシンプルなサイジングに変更され、より選びやすくなりました。

IsoSpeedの廃止、並びにダウンチューブストレージの廃止により、最上位のSLRフレームセットでは前作比マイナス305gという驚異的な軽量化を達成しました。SRAM RED XPLR搭載の最軽量完成車(SLR 9)では、エンデュランスロードでありながら6.63kgという異次元の数値を叩き出しています。 また、ミドルグレードの「SL」フレームでも重量は1,492gに抑えられており、同社の軽量特化モデルであるEmonda SLよりも144g軽いという下克上が起きています。

Emondaを逆転するというのは、もう訳わからんですね。。。

ギミック無しで「快適性」を維持する3つの新特徴

「IsoSpeedを無くして、ドマーネの乗り心地は維持できるのか?」という疑問に対して、TREKは以下の3つの要素を連携させることで完璧な解答を用意しました。前世代と比較しても、快適性の指標は同等(5%以内の差)に収まっていると主張しています。

カーボンの積層(レイアップ)最適化

SLRには最高峰の「OCLV 900」、SLには「OCLV 500」カーボンを採用。縦方向のしなり(コンプライアンス)を徹底的に追求し、路面からの突き上げをいなす設計へとフレーム自体が進化しています。

RSL丸型シートポストの採用

エアロ形状ではなく、汎用的な27.2mmの丸型シートポストを採用。シートポスト自体に振動吸収に特化したカーボンレイアップを施すことでサドルへの振動をカットします。

35mm幅の新型ワイドスリックタイヤを標準装備

新開発の35mm幅タイヤ「ボントレガー Kwaremont(クワレモント)」を標準装備(最大クリアランスは40mm)。圧倒的なエアボリュームで路面の凹凸を飲み込みます。

さらに、ブラケット部が20mm高くなる新型のライザーハンドルバー(ドロップ部は40mmフレア形状)が標準装備されており、スペーサーを積むことなくアップライトなポジションを実現できるのも、エンデュランスロードとしてはアピールポイントになりますね。

ラインナップと価格一覧(SLR / SL)

ラインナップは、最高峰カーボンとフルカスタマイズ(Project One)に対応する「SLR」と、コストパフォーマンスに優れる「SL」の2本立てです。

Domane SLR 完成車(電動コンポーネントのみ)

上位モデルにはフロントシングルの「XPLR 1×13」仕様もラインナップされているのが時代を感じますね。

まずは電動コンポを採用したSLRシリーズのラインナップがこちら。

モデル名 コンポーネント 変速タイプ 公称重量 税込価格
Domane SLR 9 AXS No. 76 SRAM RED AXS (2×12) SRAM (電動) ¥2,300,000
Domane SLR 9 AXS SRAM RED AXS (2×12) SRAM (電動) 7.29 kg ¥1,850,000
Domane SLR 9 AXS XPLR SRAM RED XPLR (1×13) SRAM (電動) 6.63 kg ¥1,780,000
Domane SLR 9 Shimano Dura-Ace Di2 (2×12) シマノ (電動) 7.34 kg ¥1,700,000
Domane SLR 7 AXS SRAM Force AXS (2×12) SRAM (電動) 7.73 kg ¥1,450,000
Domane SLR 7 Shimano Ultegra Di2 (2×12) シマノ (電動) 7.66 kg ¥1,100,000〜

ボトムラインのSLR7(Ultegra Di2)でも余裕の100万円オーバーとなっています。

続いて、多くのローディーが購入ターゲットとして考えるであろう、新型Domane SLシリーズのラインナップがこちら。

モデル名 コンポーネント 変速タイプ 公称重量 税込価格
Domane SL 7 AXS SRAM Force XPLR (1×13) SRAM (電動) 8.14 kg ¥880,000
Domane SL 6 AXS SRAM Rival AXS (2×12) SRAM (電動) 8.64 kg ¥630,000
Domane SL 5 Shimano 105 (2×12) シマノ (機械式) 8.84 kg ¥379,000
Domane SL 4 Shimano Tiagra (2×11) シマノ (機械式) 9.10 kg ¥339,000

※重量や価格は発表時点のものです。

新型Domaneは中高年ローディーが購入を検討する価格帯にシマノコンポが存在しない

ここでようやく今回の記事の主旨となります。

今の日本の自転車界隈で業界を支えているのは、購買余力のある中高年ローディーだと思うのですが、その価格帯にシマノコンポが存在しないんですよ。

びっくりしましたがな。

なぜ「50万円〜80万円」が最多価格帯なのか?

現在のロードバイク市場は、コロナ禍以前(2010年代後半)から劇的に相場が上昇しています。中高年層がこの価格帯を選ぶのには、明確な「要求仕様(要件)」があるためです。

握力が低下しがちな中高年(失礼)のロングライドにおいて、ボタンを押し込むだけの電動シフト(シマノDi2やSRAM AXS)は疲労軽減に直結します。現在、電動コンポ搭載のカーボン完成車は各社50万円台がボトムラインとなっています。

また、見栄っ張りな中高年ローディーにとって、「ケーブルの完全内装ってやっぱり格好良いよね?」というアピールポイントはとっても魅力的。
安全性の高い油圧ディスクと、空力・見た目に優れるケーブル内装フレームは今ではミドルグレードでは標準化しつつありますが、どうしても製造・組み立てコストが上がりがち。
かつては30〜50万円程度で狙えたミドルグレードも、今では50万円オーバーが一般的となりました。

さらに穿った見方ではありますが、自動車の購入・維持費や、ゴルフの会員権・プレー代などに比べると、ロードバイクは「機材に50〜80万円投資すれば、プロと同等に近い最新技術を数年間は維持費ゼロに近い形で楽しめる」ため、一定の購買余力のある中高年にとってコスパの良い自己投資だったりします。

ちょっと個人的偏見も入り混じってはいますが、マーケティングの見方としては、そこそこ妥当なラインなのでは?と思っています。

参考となる公表データと市場の動向

ロードバイクの購入価格に関するアンケートは、初心者とベテランで回答が大きく乖離するため、公的な統計データとして正確なものを見つけ出すのが難しいのが実情です。しかし、いくつかの調査や市場動向から傾向を読み取れます。

情報源・動向 読み取れる傾向

一般向けアンケート調査

 

(PR TIMES / 2024年3月)

ロードバイク購入価格のアンケートでは、1位が「15万円以上」で全体の約3割を占めています。一般的な調査では15万円が選択肢の上限に設定されてしまうほど、世間一般の金銭感覚とローディーの感覚に乖離があります。

専門メディアの読者調査

 

(FUNRiDE等)

ロードバイク乗りの約7割が「年間10万円以上」を自転車用品に費やし、うち3割は「年間30万円以上」を使っているというデータがあります。機材への継続的な投資を惜しまない層が確固として存在します。
ショップの販売動向・円安の影響 多くのプロショップのブログ等で言及されていますが、円安や輸送費・原材料高騰の影響で、コロナ禍前と比較して完成車価格は約1.3倍〜1.5倍になっています。かつての「30万円で買えたアルテグラ完成車」が、現在では50〜60万円となっています。
メーカーのラインナップ構成 TREKのDomane SL、PinarelloのFシリーズ、SpecializedのTarmac SL8 Expertなど、各社が最も注力し、在庫の厚みを持たせているのが「セカンドグレードフレーム + 第3世代105 Di2 or Rival AXS」の50万〜80万円のパッケージです。

なぜシマノが排除されSRAMに集約されたのか

正直、今回のラインナップであれば、日本市場だけを見ればDomane SL6として シマノの105Di2 をラインナップさせた方がマーケティングとしては「正解」だったと考えています。
にもかかわらず、なぜ SRAMがSL6/SL7で採用されたのでしょうか。

組立て・製造コストとフレーム設計の相乗効果(フルワイヤレスの利点)

DomaneはISOスピードやヘッドまわりのフル内装ケーブルルーティングなど、フレーム構造が非常に複雑となっています。

SRAM eTap AXSは完全ワイヤレスであるため、ジャンクションやエレクトリックケーブルをフレーム内部に通す必要がありません。工場の生産ラインおよび販売店での組立て・メンテナンス工数が劇的に削減されるわけです。

また、複雑なフレーム内部を通線する際の配線噛み込みや断線リスクを排除することもできますので、トラブルの低減や習熟度の低い作業員での対応によるオペレーショナルコストの低減まで可能となります。

私自身SRAM eTap AXS を愛用していますが、取り付けやメンテナンスは、そりゃもう楽ちんです。エレクトリックケーブルを内装する必要のあるシマノ Di2に今から積極的に戻りたいとは思わないほど。

これを組み立て工賃(コスト)とのバランスで考えた場合、経営者目線ではSRAMを選択するのはとても合理的な判断だったりします。

特に製造コスト高騰が続く中で、組立て作業の簡略化はメーカーにとって強力なコストダウン要因となります。

SRAMとのグローバルなOEM提携および調達コスト

TrekとSRAMは、プロチーム(Lidl-Trek)での機材サポートをはじめ、グローバルレベルで極めて強力なアライアンスを組んでいます。

SRAM Rival AXS / Force AXSの大量採用と引き換えに、非常に有利なOEM価格(あるいは供給優先枠)を獲得している可能性が高く、利益率の確保(減価率の低減)を実現している可能性が高いわけです。

また、ワールドワイドで見ても、従来はシマノコンポへの依存度が高かったわけですが、単一メーカーへの依存度を下げ、特定グレードでSRAMへ寄せることで、グローバルなパーツ調達リスクを分散・安定化させることも可能になります。

エンデュランス/オールロードとしてのSRAM AXSの製品特性

Domaneのアイデンティティである「ロングライド・舗装路からライトグラベルまで対応する多用途性」において、SRAM AXSのギヤ比設計は非常に相性が良いと評価されています。

SRAMはリア10Tからのワイドスプロケット(10-36Tなど)を展開しており、急坂からグラベル、ハイスピード巡航までカバーするギヤ幅を容易に構築できます。
これは特にフロントシングル(1×)の場合に際立つメリットとなります。

また、SRAMはRivalグレードからパワーメーター内蔵クランク(片側計測等)をリーズナブルに展開しており、完成車パッケージとしての「高機能感」を打ち出しやすいメリットがあります。

中華な 3rd パーティーからは安価なパワーメーターは供給されているわけですが、やはり「完成車パッケージとして」既にパワーメーターが組み込まれているというのは、販売店からしても売りやすい特徴になりますよね。

グローバル統一ラインナップによるSKU管理の効率化

日本市場では「シマノの105 Di2 / Ultegra Di2搭載モデル」の需要が非常に高いものの、TREKのようなグローバルブランドは全世界共通のスペックで大量生産を行うのが基本です。

地域ごとにコンポーネントを変更すると、生産・在庫管理コストが跳ね上がります。欧米市場ではSRAM AXSの評価・シェアが高いため、グローバルでのボリュームゾーンに合わせてSL6/SL7をSRAM仕様に一本化することで、SKU(在庫保持単位)を削減することが可能になります。

メーカーに寄り添う姿勢次第で今後のシマノマーケットシェアが激減するリスクも

で、私が危惧しているのが、シマノの凋落ですね。

私自身は現在はSRAMユーザーですが、それ以前は105/Ultegra とシマノユーザーでしたし、日本国内では交換部品、パーツ類の入手性はシマノが圧倒的に高く、SRAM のような完全ワイヤレスを実現してくれれば、いつでもシマノに乗り換える気満々だったりします。

ですから、シマノには頑張って欲しいのです。

今回の一件はあくまでも「TREKのお家事情」という経営判断が背景にあるわけですが、このような考え方は蟻の一穴となりうるもので、欧米の自転車ブランド各社が今後同じような経営判断を採用する可能性だってあるわけです。

欧米でのロードバイクコンポは、ここにきてSRAMのシェアが伸びていると言われていますしねMTB市場では既にSRAMが過半のシェアを実現しています。

シマノも「販売店」との取り組みについては色々と考えているようですが、ロードバイクブランド各社との関係性についても、メーカー側の経営課題に訴求するような販売手法、製品ラインナップを確立していかないと、向こう数年でSRAMにシェアを大きく奪われるリスクが高まってきていると感じています。

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ただの中年おじさんの懸念ではありますが、SRAMユーザーだからこそ分かる「パーツ・コンポの入手性の低さ」を感じているからこそ、本当はシマノにもっと感張って欲しいんですよね。。。

おそらく、来年、再来年あたりに発表されると思われる、新型のUltegra / 105コンポで、シマノの逆転劇が開始することを期待したいと思います。

 

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