マビックの試乗会にてコスミックプロカーボンをたっぷりライドしてきた
マビックのキシリウムエリートUSTの次のホイールに悶々と物欲を膨らませる日々でしたが、先日マビックの試乗会が開催されていましたので、コスミックプロカーボンUSTの試乗をしてきました。
この試乗会、何が有難いかというと、事前に予約を入れておくことでがっつり1時間半ホイールを貸し出してもらえるんです。
普段自分が走り慣れているコースを新ホイールで試乗することができるというのは、とても有難いですよね。
ちなみに世間ではコロナの影響を受けて緊急事態宣言が出されましたが、本試乗会は3月の外出自粛要請が出される前に訪問した際の記事であり、実際に私が試乗してきた翌々週には試乗会も中止となりました。
ホイールの受け渡しは完全に屋外、試乗会参加者も私の方には3名、常に距離を保って濃厚接触を避けることができるのですが、ご時世ですからこればかりは仕方がありません。
1. マビックコスミックプロカーボンUSTのスペックをおさらい
まずはホイールスペックのおさらいです。
比較項目 | キシリウムエリートUST | コスミックプロカーボンUST |
重量(前後セット) | 1520g | 1650g |
リム重量 | 405g〜430g | 405g 〜450g?? |
リム内幅 | 17mm | 19mm |
リムハイト | 22mm / 25mm | 40mm |
スポーク | スチール | スチール |
マビックはリム重量を公表していませんので、あくまでも「推測値」ですが、さすがにキシリウムエリートUSTよりはリムハイトがある分重くなりそうですが、極端に重くなるわけではなさそうです。
ホイール全体だと130g重量アップですので、「軽量」ホイールとは呼べませんね。
試乗するにあたって、一番気になっているのはこの重量増が実感としてどの程度のものなのか、になります。
また、カーボンホイールではありますが、リムブレーキモデルになりますので、ブレーキの効き具合も気になるところ。
本音を言えば、カーボンホイールはディスクブレーキ車で乗りたいんですよね。もともとディスクブレーキのロードバイクが欲しいな、と思ったきっかけは、カーボンホイールを安全に乗りたいから。裏を返すと、リムブレーキモデルでもカーボンホイールが問題なく乗れるようであれば、ディスクブレーキモデルへの買い替えはまだまだ先でも良いかな、と思うくらい。
というわけで、今後のロードバイクの購入スパンにも影響を与えかねない、とっても重要な試乗会となりました。
2. コスミックプロカーボン試乗インプレ
ちなみに、この日の天気は晴天。
それは良いのですが、朝から風が吹き荒れていました・・・。一足早い春の嵐ってやつですね。
今回選んだ試乗コースだと、横風を食いまくる感じになります。
試乗会が開催されているショップに向かうまでの間、10km程度川沿いを走ることになるのですが、その際は常に横風を受ける形になり、時々突風に煽られてふらつくシーンも多数。
ローハイトなアルミホイールでこれですから、40mmのセミディープで横風にどこまで耐えられるかドキドキでした。
(1) 外観
セミディープホイールの醍醐味の一つが「外観がイカつくなる」ではないでしょうか。
はい。
素直に「格好良い」です。
これだけでも満足できそうですね。
このカーボンならではの表面パターンが格好良いですね。
ただ、ブレーキ面がツライチでリム全体と同じに見えますので、本当にブレーキ性能大丈夫なの?と心配になってしまいます。
(2) 低速加速
まずは低速からの加速感ですが、普段履いているキシリウムエリートとの違いを感じることがありませんでした。
あれ? リム重たいはずだよね、と少し不思議な感覚。
普段履いているキシリウムエリートとはハブもスポークの素材も同じですので、ハブの回転性能が高いから云々、という話ではなさそうです。
踏んだ時の応答性はコスミックプロカーボンの方が気持ち高く感じます。これはカーボンで全体の剛性が上がったからなのか、リムハイトが上がり、スポークが結果的に短くなったことで剛性が上がったからなのかは分かりませんが、踏んだ時にクイックに反応してくれる分、リム重量の増加を打ち消し、漕ぎ出しの軽さをキシリウムエリートと変わらないところまで持って行ってくれている感じでした。
とはいえ、おそらく重量は増えていますので、ロングライドで何十回とゼロスタートを繰り返すと「やっぱり重いかも」という感想になるかもですが、1時間半乗った範囲では全く気になりませんでした。
(3) 横風の影響
今回は横風が強く、セミディープになることで、この点がとても不安でした。
なのですが、思いっきり風速5〜6mクラスの横風を食らっても、キシリウムエリート以上に煽られる感じはありませんでした。
当然このクラスの横風になると、「気にならない」と言えば大嘘になりますが、ローハイトのアルミホイールとあまり変わりはありませんでした。
横風のいなし方が上手なリムなのかもしれませんね。
特に春先や晩秋になると、特に川沿いは風が強くなります。
先日キャニオンの試乗会でレイノルズのストライク(リムハイト62mm)に乗った時には、「とてもこんなん普段履きには使えんっ」という位横風を受けまくりで、怖くてスピードを出すこともできませんでした。
普段使いのホイールにできるかどうかは、横風の影響を過剰に受けないか、というのがとても大きなポイントになりますが、この点は合格点と言えそうです。
(4) 登坂
次に気になるのは登坂でしょうか。
特にホイールが重くなりますので、重くて上り坂が苦痛になるようなら敬遠したいところです。
特に私が住んでいる所は場所柄、どうしても坂が多くなりがちですので、とっても重要なポイントになります。
で、結論から言うと、7〜8%程度の斜度までは、むしろキシリウムエリートよりも「上り坂が得意」というのが個人的な感想になりました。
これは驚きましたね。
今回は普段走り慣れている尾根幹も走ったのですが、何度も登ったバーミヤン坂を試しに登ってみました。
バーミヤン坂のプロフィールはこんな感じです。
距離にして550m、平均勾配が7.25%になります。
今回はあくまでも試乗会ですので、そこまで追い込んで登るつもりはなく、できるだけ普段と同じような「まだこの先80kmくらいは走る予定あるからねー。抑え気味でくるくるペダル回して行こうねー」という感覚で登りました。
ところが、あら不思議。
走っている時から、「あれ?いつもよりスピード落ちないな」と、ペダルがくるくる回る感覚がありました。
当然上り坂ですので、「楽に登れる」なんて感覚はさらっさらありませんが、ペダルを回したら回した分だけ、ロスなく前に進んでくれる感覚が強く、結果的にスピードがあまり落ちることなく最後まで登り切ることができました。
で、自宅に戻ってから確認してびっくり。
プライベートレコードが出ていました。
(いやいや、そもそもタイムが遅すぎるやろ、というツッコミはご容赦ください・・・汗)
ちなみに過去のNo.2&No.3の記録は追い風参考。
この日は向かい風でベストレコードでした。
(ま、上り坂ですので、そこまで向かい風がきついわけではないのですが)
この辺りもホイールの剛性が上がったことが良い方向に働いているのかもしれませんね。
(5) 巡行
この辺りは心配になる要素はありませんでしたが。
直線が多いコースではありませんでしたし、どうしても「逆風」「追い風」の二択になり易いコースでしたので、巡行性能をきっちり確認できたわけではないのですが、おおよそ期待通りの巡行性能が確認できました。
- 30km程度まで加速していく時の感覚は、そこまでキシリウムエリートと変わらない
- 時速30kmを超えた辺りから、巡行を維持するのが普段のキシリウムエリートよりも楽に感じる
- 向かい風だと、この日は風がきつかったこともありキシリウムエリートだと時速28kmを越えた辺りから「壁」を感じるようになりましたが、コスミックプロカーボンだと時速30〜32km程度までは壁を感じることなく加速できた
- 向かい風の影響がない場所では、時速35km程度の維持はあまり苦にならない
- 普段の私の脚力だと、時速38kmあたりで壁を感じ、そこから加速していくにはがっつり踏み込んでいく必要があるのですが、コスミックプロカーボンだと、時速40〜42kmまではするっ、と加速することができた
- 感覚的には、同じようなパワーで維持できる巡行速度は、キシリウムエリートよりも時速2km分くらいは上げられそう
これはロングライドの時には強力な武器になりそうな予感がします。
(6) ブレーキ(制動)
こちらももう一つの心配要素でしたが、心配は杞憂に終わりました。
ブレーキの制動力はアルミリムとほとんど変わりませんでした。
カーボンホイール 特有の「シュルシュルシュル」という音はあまり好きになれませんでしたが、晴れの日のドライな環境では、アルミリムの時と全く同じ感じで走ることができました。
この日はせいぜい500m程度の下り坂までしか走れませんでしたが、試しにポンピングブレーキをかけてみたり、前輪と後輪を交互にかけてみたりしましたが、そういったブレーキのかけ方も慣れてしまえば特に問題なくできそうな気がしました。
都民の森のように10km以上下り基調だったりすると、さすがに不安は残りそうですが、普段の2〜3km程度の峠道であれば、そこまでカーボンリムの強度(耐熱性)を気にし過ぎる必要はないかもですね。
(7) 快適性
これは予想はしていましたが、キシリウムエリートUSTよりも、更に一枚上手の快適性でした。
あれ、ホイールの剛性が上がったとき言ってません?という話なのですが、快適性に大きな影響を与えるのは何と言っても空気圧。
コスミックプロカーボンはリムの内幅が19mmという今時なワイドリムになります。
タイヤは普段履いているのと全く同じイクシオンプロUSTの25mm。マビック謹製のチューブレスレディータイヤになるのですが、リムの内幅が変わると適正空気圧も変わってきます。
こちら、マビックのアプリ、My Mavicで計測した結果になります。
まずは、普段乗っているキシリウムエリートUST。リム内幅は17mmになります。
私の場合、5BARですね。
ま、この空気圧の段階で、すでに十分快適なんですが。
で、体重や車体重量など、条件をまったく同じにして、リムの内幅だけを変えた場合の適正空気圧がこちら。
更に10%空気圧を下げることができます。
ここまで来ると、28mmのタイヤの空気圧に近づきますね。
で、今回の試乗会でも上記のアプリで計測された通り、4.5BARで試乗したわけですが、普段以上に路面の細かな振動を吸収してくれ、大きめな段差も、普段以上に角が取れた柔らかい衝撃になりました。
ほんと、快適、の一言に尽きます。
もしかするとホイールの剛性が上がった分、4時間、5時間と乗り続けると「足に来る」かもしれませんが、その分振動吸収性も上がって、全体的な疲労の蓄積は緩和されそうな気がします。
ほんと、チューブレスは一度経験してしまうと、止められませんね。
3. キシリウムプロカーボンSL UST試乗インプレ(おまけ)
で、おまけ。
コスミックプロカーボンUSTの試乗をギリギリまで実施(1時間28分!)して戻ったのですが、「まだ時間あるからキシリウムプロカーボンも試乗していけますよー」という有難いお言葉を頂きましたので、こちらも20分ほどですが試乗させてもらいました。
コスミックプロカーボンほどではありませんが、リム面も真っ黒になり、戦闘力は上がりますね。格好良いです。
リム面もコスミックプロカーボンと同じですね。
ホイール重量は1445g、ハブはインスタントドライブ360とキシリウムエリートUSTよりも上位ハブ。
反応はよりクイックに、より軽量・軽快になりつつも、リム内幅が19mmになって安定性が増しているホイールとなります。
リムハイトは25mmですので、キシリウムエリートと後輪は同じ、前輪だけ3mmハイトアップですが誤差の範囲ですかね。
こちらはざっくりまとめてこんな印象でした。
- ハブがインスタントドライブ360になり、「かかり」が良くなっているはずだが、ゼロスタート時でもハブの差を感じることはできなかった。ホイール重量と合わせてゼロスタートはより軽快になっていはずだが、短時間での試乗では体感することはありませんでした
- 残念ながら上り坂で試せませんでしたので、このホイールの真骨頂を体感することもなく
- フラットでの加速、巡行維持はキシリウムエリートとの違いはあまり感じず
- 快適性は空気圧の分だけ少しアップ
はい。
結論から言うと、限られた時間で、フラット基調な試乗コースではキシリウムエリートUSTとの違いを感じることができませんでした。
そりゃそうでしょうね。
おそらく峠道に行けばその差を感じることはできるのでしょうが、微妙ですね。
これがディスクブレーキモデルになると、リムハイトが一気に32mmまでアップしますので、キシリウムプロカーボンに手を出すなら、ディスクブレーキモデルでないと、キシリウムエリートからのアップグレードとしてはその差を感じることは難しいかもです。
4. マビック試乗会 インプレサマリ
ということで、コスミックプロカーボンをたっぷり試乗した感想をまとめると、こんな感じになりました。
- カーボンホイールにすることのデメリット(ブレーキ制動)はあまり感じずに済みそう
- セミディープホイールにすることのデメリット(横風、重量増)もあまり感じずに済みそう
- カーボンセミディープホイールにすることのメリット(巡行性能、剛性アップ)は確実に実感することができた
- コスミックプロカーボンには今回試乗したモデルと、より反応性と剛性の高いSLモデルの二つがありますが、今回試乗した non-SLモデルであれば、剛性も適度で気持ち良く乗れそう
- やっぱりマビックのチューブレス、ロードUSTって素晴らしい。快適の一言に尽きる
マビック社はカーボンホイールの開発に際しては、重りを背負って峠道を下ることで十分な強度、耐熱性があるかを確認したそうですが、見た目のカタログスペック(ホイールの重量)に過剰に捉われることなく、強度やメンテナンス性をとても大切にしている姿勢が、個人的にはとても好感が持てたりします。
今回の試乗会では、コスミックプロカーボンのリムだけ展示されていたのですが、全体重かけてもビクともしませんでしたし、手にしてみるとリムの軽さも実感。(デジタル測り持って行って重量測れば良かった・・・)
今の所購入の第一候補の座に躍り出ましたね。
あとは、コツコツ資金を貯めないと、です・・・。
コメント
私もキシエリとnon-SLコスカボを併用しています。両ホイールを比較した感覚は筆者様
とほぼ同じです
コスカボのメリットはロングライドの疲労の少なさですね。後半まで足が残ります
デメリットはブレーキシューの減りの速さ!しかもお高い!
貧乏人にはブレーキングするたびに10円玉を落とす音が聞こえます
SLモデルはその剛性の高さ故、剛脚方向けと聞いたことがあります
>nanaCさん
既にお持ちのオーナーさんのご意見、心強い限りです!
レビュー探しても、SLモデルの記事ばかりでお持ちの方の情報に飢えておりましたので(^ ^)
ライド後半に足が残るというのは、とても嬉しいですね。めっちゃ惹かれます。
ただ、やはりブレーキシューはもりもり減りますか。。。
仕方ないのでしょうが。
私もリムがほぼ同じコスカボSL UST Disc初期モデルで3万km以上走ってますが、コスカボは丈夫で走り易いですね。SLモデルは少し軽く、インスタントドライブ360のメンテナンス性が高い…フリーが千kmオイルアップではなく3千kmグリスアップで良いのと、スプロケごと簡単に外れるのが利点ですね。
なお「かかりの良さ」は0.1秒未満の世界なので単独走では分かるものでは無く、レースで35km/hで走っている所からのアタック反応時に最大ホイール半分差が付く程度です。(30km/hでリアホイールは毎秒約4回転しますから3本爪と24爪の差は最大で1÷4÷3=0.08秒、漕ぎ出しなんかで分かりませんよ)
>>たかにぃさん
インスタントドライブのメンテナンス性が高いというのは聞いていましたが、グリスアップが3000kmで良いというのはかなり良いですね。
「かかりの良さ」というのは、どこでも語られている話なのですが、ご説明頂いたところまで具体的に語られると、よーーーーーく分かりますね。
時速35km/hでホイール半分差。
レースの世界ではとても大きな差なんですよね、きっと。
ただ、そのレベルだと漕ぎ出しで分かる世界じゃありませんね・・・。
「分からなかった」という自分の感覚が正しかったということで、安心しました・笑
そうですね。
またゼロスタートや上りで急に力が掛かったときは、スポークの材質・長さ・組み方によるたわみのほうが、違いが出ますね。