タイム ロードペダル(Xpresso 4)とSPDペダルの比較レビュー
タイムのロードペダル(Xpresso 4)を購入してから、かれこれ15時間超、350km超走ることができましたので、この辺りでファーストインプレッションをまとめてみたいと思います。
それ以前はシマノのSPDペダル(PD-ES600)を使っていましたので、そちらとの比較となります。
1. これまでのペダル遍歴
参考までに、私のこれまでのペダル遍歴を振り返ってみたいと思います。
むかーし学生時代〜独身時代はマウンテンバイクに乗ってツーリングに出かけたり、里山や林道を走り回っていた時にはトゥークリップをつけていました。
その後結婚して子供が生まれてからは自転車から遠ざかっていたのですが、子供がある程度大きくなった頃からロードバイクに乗り始めることに。
そこで初めてビンディングシューズなるものの存在を知ることになるのですが、最初は怖くて手が出せず。
かといって昔使っていたようなプラスチッキーなトゥークリップはロードバイクに似合うわけもなく。
三ヶ島のハーフトゥクリップから始めることになりました。
これはこれで気に入っていました。
三ヶ島のペダルの回転性能が鬼のように高かったのが印象的です。
この状態で約3000km、150時間くらい乗っていました。
次に手を出したのがシマノのクリッカーペダル。
最悪、斜め上に足首を持ち上げるようにしてひねってもクリートが外れる優れものでした。
それでもペダルから足がずれない安心感はありましたので、こちらも満足して使っていました。
この頃はまだまだのんびりポタリングしかしていませんでしたから。
こちらもハーフトゥクリップと同じくらいで、3000km、150時間程度使っていました。
で、その後ロードバイクの試乗会に出たりして、SPDペダルを試す機会に恵まれたことと、この頃にはビンディングにすっかり体が慣れていたこともあり、そろそろSPDにしても良いかも、という気持ちに。
当時発売されたばかりだったPD-ES600を購入。
ライドの記録を振り返ったところSPDペダルはおよそ8000km、400時間ほど乗っていた模様。
私のペダル遍歴はこんな感じになりますが、マウンテンバイクの時代からトゥークリップを使ってある程度足が固定されている状態に慣れていたこともあり、ビンディングの外し忘れに起因する立ちゴケは幸いなことに経験せずに済んでいます。
ま、ポールにぶつかってコケたり、濡れた路面で泥に滑って落車したことがありますが、その手の不注意に起因するものはフラットペダルで咄嗟に足をついたとしても、バランス崩して転んでたかも?なんて思っています。
個人的には足がペダルに固定されていない状態の方が不安で仕方ない体になってしまいました。
2. ロードペダルとSPDペダルの比較
さて、前置きが長くなりましたが、ここから各項目に沿って比較していきたいと思います。
まずは一般的によく言われるような脱着のし易さだったり、歩き易さといった項目です。
(a) 装着のし易さ
シマノのSPD-SLなんかだと、SPDペダルと比較すると装着はし辛いという声も聞きますし、逆にペダルを回すと自然と装着し易い位置にペダルが回ってくるので、片面SPDペダルと比べるとむしろ嵌め易いという声もありました。
で私の場合はどうだったかと言うと、「諸々まとめて良し悪しあって同じくらい」といったところでしょうか。
ただこれは「400時間くらい乗って扱いに慣れているSPDペダル」と「使用開始から数時間しか経っていない」タイムのペダルが同じくらい、という状態ですので、使い慣れていくとタイムのペダルの方が装着はし易くなるかもしれません。
一番良いと思ったのは、クリートの先端をペダルに引っ掛けて嵌め易いという点です。
SPDペダルでも、クリートを引っ掛けてから踏み込んで固定するのは同じなのですが、なにせクリートの先端の大きさがSPDとタイムのiCLiCでは全然違いますからね・・・。
引っ掛け易さはタイムの方が明らかに上でした。
ただ、今となってはSPDペダルもどの位置にペダルがあって、どこに足を置けば装着できるか、という点は体が覚えてしまっていますので「明らかにタイムの方が装着し易い」とまでは感じませんでした。
あと、これはタイムのクリート or ペダルの特性なんだと思いますが、「パチン」と音がして嵌る時もあれば、足を置いた時にはあまり音がせず、嵌ったかどうか分かりにくいものの、ぐにっ、と嵌っていたことがありました。
あまり強い力を入れずに装着できる点はメリットですが、大きな音がして明らかに嵌めた感触が欲しい、という人には若干不満があるかもですね。
この辺りの「控えめさ」「軽い力で装着できる」点は、SPDペダルと近いものを感じました。
おそらく、シマノのSPD-SLだと、もっと強い装着感があるのでしょうが、装着時に必要な力加減でいくと SPDとタイムのiCLiCは近しいものがありますので、SPDからの交換先としてはなじみ易いかもです。
(b) 外し易さ
お次が外し易さですが、こちらはタイムのiCLiCと、SPDペダルの固定力を強くした時が同じくらいといったところでしょうか。
私は今でもPD-ES600の固定力に関しては一番弱い状態にして乗っていますので、その状態と比較すると「もうちょい強く捻らないと外れないかな」と感じています。
感覚的には、PD-ES600 の固定力をちょうど真ん中くらいに設定した時と同じくらいでしょうか。
個人的にはロングライド終盤でもしんどく感じない位で、許容範囲内の「外し易さ」でした。
(c) 固定力
ペダルとシューズはクリートを介して固定されることになります。
当然、SPDとは比較にならないほど大きなクリートで固定されますので、その点からはタイムの方が固定力は高いはずなのですが、事はそう簡単ではありません。
タイムのペダルはフローティング機構を採用しており、ペダルに固定された状態で、うにうにとシューズを動かすことができるようになっています。
- SPDペダルは、固定された状態から足を動かすと若干の遊びがあり「カチカチ」とクリートが上下左右に動く
- タイムのペダルでは、固定された状態で足を動かすと、上下の遊びはなく動かないが、左右には「うにうに」と動かせる
- 上下含めた立体的な「遊び」についてはSPDペダルの方が上だが、平面的な左右の動きに関してはタイムのペダルの方が遊びは大きい
「どちらががっちり固定されているか?」と問われると、これはタイムの方が上な気がしています。
遊びがある点は同じなのですが、上下立体方向での遊びがない分、固定感が高いのはタイムですね。
ただ、実用上の固定力で差があるかと問われると、どちらも同じかな、と思います。
また、どちらも方式による違いこそあれ、遊びがある点は共通ですので、SPDが気に食わない人であればタイムのペダルも無理でしょうし、逆もまた真でしょうね。
裏を返すと、SPDペダルで満足していた私のような人間からすると、「実用上の違いはないとはいえ、ワンランク上の固定感」を体感しつつも、そこまで外しにくさを感じないという点はとても気に入りました。
(d) 歩き易さ
これは比較にすらならないかと・・・。
まー、歩きにくいです。
SPDペダルはソールの硬い靴を履いている感覚でしたが、それでも普通に歩けました。
iCLiCクリートをつけた状態で歩く場合、歩き方は2つでしょうか。
- つま先を上げ、踵を地面につけた踵歩き
- 踵を受かせ、クリートだけ地面につけたつま先歩き
今までのイメージは 1. のかかと歩きだったのですが、iCLiCのクリートが大きいこともあり、意外と 2. のつま先歩きの方が歩き易いかもしれません。
3. タイムペダルの特性
これはタイムペダル特有の機構になるかと思いますが、フローティング機構について思ったことをまとめてみたいと思います。
(e) フローティング機構
タイムのペダルは膝に優しいとよく言われますが、それはこちらのフローティング機構の恩恵になります。
ペダルに固定された状態でも、左右に角度にして 5°、並行に2.5mm動かすことができます。
個人的にもこのフローティング機構にはとても期待していたのですが、結論から言うと、期待通り、とても満足のいくものでした。
まず最初に気になっていたのが、力を目一杯かけた状態で「足が滑る」ような感覚があるのか?という点でした。
もともとビンディングシューズの目的は足をペダルに固定することで、雨でペダルやシューズが濡れた状態だったり、坂道で高いトルクをかけた状態でも足が滑ることなくペダルを回せる点になるかと思いますが、力をかけた状態で「足が滑る」感覚があるのであれば、あまり気分はよくないだろうな、と思っていたからです。
ライドの結果を振り返ると、坂道で目一杯ペダルを回した時にはFTPの2倍、瞬間的には3倍近くトルクがかかっていましたが、その際には足が左右にスライドする感覚はありませんでした。
巡航時に意識的に足を左右にスライドさせたり、踵を左右にずらしたりすると、足が「うにうに」動く感覚はあるのですが、普通にペダルを回している間はあまり動く感覚がありませんでした。
これは面白いですね。
もともとライド後に膝に大きな痛みが出るタイプではありませんでしたが、それでもライド後の膝への負担感はかなり低くなった気がします。
足ががっちり固定されていないと嫌、という人もいるかと思いますが、私のようなSPDペダルを使っていた人であれば、特に違和感なく乗り換えられるような気がします。
4. ペダル & シューズの総合比較
続いて、ペダル単体ではなくシューズと合わせて総合的な比較をしてみたいと思います。
SPDシューズはフィジークのTERRA X5 BOA。
私には十分過ぎるほどのソール剛性を持っています。
対するタイムのペダルに合わせたシューズはシマノ のSH-RC5。
シマノの数値によると、ソール剛性は8。
フラッグシップモデルのSH-RC9がソール剛性12だそうで、私のような週末ローディーにとっては十分な剛性かと思います。
(f) スタックハイト(ダイレクトな踏み心地)
先日記事にも書きましたが、今回の組み合わせだとタイムのペダルに変更したことでスタックハイトが3〜4mm低くなりました。
これにより、ペダルにトルクをかけた際のパワーの伝達がよりダイレクトになりました。
例えば、よりパワーロスなくダイレクトに力が加わるようになったことでFTP更新できました!みたいな話になれば話は早いのですが、なかなか数値的には検証し辛いですね。
あくまでも感覚的なものになりますが、確かに踏み込んだ力が逃げにくくなったかな?という気がしないでもないですが、この辺りはもう少し時間をかけてみないことには何とも言えなさそうです。
逆に気になっていたのが、作用反作用の関係で、足裏に痺れが出たりしないだろうか?という点になりますが、スタックハイトに合わせてサドルの高さも調整したこともあり、特に足裏に痺れが出たりといったことはありませんでした。
ちなみに、ソールの剛性に関してはフィジークのTERRA X5 BOA と、シマノのSH-RC5に関してはほぼ同じか、わずかにシマノの方が剛性が高いように感じました。
特に体感できるような差はなかったです。
(g) 広い踏み面
短期間での比較において、最も大きな違いを実感できたのがこちらの点でしょうか。
「あー、踏み面が広くなった」というのは、乗り始めて一番最初に実感した点になります。
そりゃ、クリートの大きさが全然違いますからね・・・。
SPDペダル(PD-ES600)とフィジークのTERRA X5 BOAは相性は良いようで、ペダルとシューズの接地は、クリート だけではなくシューズのブロックパターンもきっちり高さが合っており、それなりに広くなっています。
よく「SPDペダルは点で踏む感覚があって嫌」という話を聞きますが、あれは個人的にはシューズとペダルが合っていないのでは?と思いますね。
SPDのクリートだけで結合されている場合、確かに点になるんだろうなと思いますが、上記のようにシューズ裏のブロックパターンでもきっちり接地できていれば、少なくとも面で踏み込む感覚にはなります。
これまではそれで十分満足していたいましたので、「SPDペダル最高!」と声高に叫んでいたのですが。
実際にタイムのペダルで走ってみると、明らかに踏み面が広いですね。
もう感動しました。
SPDの場合、縦幅は約35mm。
ですので、感覚的には「縦幅35mmの長い木材の上に両足を乗せて立っている」状態になります。
対するタイムのロードペダル。
縦幅84mm程度でしょうか。
感覚的には「縦幅84mmの長い木材の上に両足乗せて立っている」状態。
踏み込んだ時の足裏サポートに関しては、そりゃ後者の方が安心感、安定感がありますね。
ま、最初にクリートを見た時から「こりゃ結構違いを感じるだろうな」とは思っていましたが、全く違いました。
(h) 軽さ
今回は片足につき61gの軽量化が図られました。
まだ4時間以上のライドに2回しか出かけられていませんので断定的なことは言えませんが、心なしか足回りは軽くなったかな?というところ。
ここももう少しじっくり時間をかけて比較しないとですね。
5. 総括
で、総括です。
ざっくりまとめると、「ペダルを回した時にペダルにぐいぐい力が伝わるダイレクト感が気持ち良い」と感じました。
これはおそらく、スタックハイトが低くなったことと、踏み面が広くなったことが影響しており、もしかすると軽量化でより軽く気持ちよくペダルを回せるようになった点も影響しているかもしれません。
他方SPDペダル対比で言うと、「ペダルへの固定感はそこまで違いを感じない」「脱着のし易さも気になるほどの違いはない」と感じています。
シマノのSPD-SLとSPDの比較では、よく「より強く固定される」みたいな記述がありますが、タイムのロードペダルの特性もあるのでしょうが、色々な意味であまり違いは感じませんでした。
あと、フローティング機構は「最高」の一言に尽きますね。
輪行やポタリングにおいてはその歩きにくさから、とても最適解にはならないと思いますが、「がしがし走りたい」という目的においては、とても良い選択になりそうだと感じています。
最終的には「使い分け」になりそうな気がしていますが、折角ですので SPDペダルは一旦仕舞い込んで、しばらくはタイムのロードペダル1本で使い込んでいこうかな、と思います。
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