そもそもオールロードバイクとは何なのか?

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先日オールロードバイクについての個人的な興味から記事を1本書いたのですが、ふと「そもそもオールロードバイクって何さ?」という興味が出てきました。

日本のマーケットにオールロードは定着できるのか?
日本のマーケットにオールロードと呼ばれるロードバイクカテゴリは定着できるのか心配個人的にはオールロードに大賛成最初に述べておきますが、私はここ最近まとまりつつある「オールロード」と呼ばれるロードバイクのカテゴリについては大賛成です。もともと...

調べてみると、定義があるような、無いような。

オールロードバイクとはそもそも何なのか? ――ロードとグラベルの境界で進化する「自由の象徴」

自転車の世界で「オールロード」という言葉を耳にするとき、何を思い浮かべるでしょうか? ロードバイクのシャープなスピードと、グラベルバイクの自由さを両立させた「中間種」か、それとも単なるメーカーが掲げる「売り易さ」としてのマーケティングの産物なのか。

おそらく、登場した当初はちょっと荒れたアスファルトの路面でも快適に走れるワイドタイヤ対応バイクとしてある意味明確だったこのカテゴリだったと思うのですが、数年経って各社がオールロードを掲げた結果、自転車界隈における境界を曖昧に溶かし始めている気がしてなりません。

例えばGemini(AI)に「オールロードとは何か」と問いかけると、以下のような回答を返してくれます。

オールロード(All-road)とは、舗装路(オンロード)の高速走行性能を維持しつつ、砂利道などの未舗装路(グラベル)も走行可能にした、汎用性の高い「万能型ロードバイク」です。ロードバイクとグラベルロードの中間的な立ち位置で、太めのスリックタイヤや耐久性の高いフレームが特徴です。

自転車雑誌やWebメディアでもある程度共通的な定義付けはされてきている気がしますが、調べれば調べるほど、意外とその定義が曖昧なことに気付かされます。

ということで、各メーカーの定義づけをあれこれと覗いてみたいと思います。

Canyonの視点:多目的高速バイク

Canyonはオールロードを自社で明確に定義付けしているブランドとなっています。

オールロードバイク は、単にワイドタイヤを履いたロードバイク以上の存在なのです。軽量で空力性能に優れ、安定していながらも俊敏なハンドリングを実現しています。オールロードバイクは28mmから50mmまでのタイヤに対応しているので、目的のライドに合わせタイヤをその時々で選ぶことができます。次に、ジオメトリー。悪路での長時間の走行にも十分快適でありながら、グランフォンドに並ぶのに十分なアグレッシブさを備えたジオメトリーを持っています。ディスクブレーキは優れたストッピングパワーを発揮するために使用されており、数日に及ぶ森の中でのバイクパッキングに必要な バイクパッキングバッグ を積むこともできます。簡単に言えば、すべてのことをこなすことができ、そしてそのすべてをうまくこなすことができるということです。

オールロードを「ロードバイクの最先端技術+ワイドタイヤ(28-50mm)クリアランス」で定義し、軽量・空力・俊敏性を融合した「どこでも速く到達する」バイクと位置づけています。
単なるワイドタイヤロードではなく、路面変化をシームレスにこなす点が特徴となっています。

かつて快適性を前面に押し出していたエンデュランスバイクとは明らかに定義づけが異なるわけですね。

CannondaleとColnago:エンデュランスの拡張

対して、エンデュランスの延長線上にあるのかな?と思わせられるのがCannondale。
例えばCannondaleのSynapse LAB71は、42mmクリアランス+日常装備(ライト・収納)で実用性を高めています。そもそもSynapseが従前よりエンデュランスバイクとしてカテゴライズされてきたブランドであり、公式サイト上もエンデュランスバイクというカテゴリとなっていますので、そりゃそうだよね、という話ではあるのですが、今風に言うと各社がオールロードとして主張している内容に沿う形に進化してきています。

ColnagoのC68 Allroadはその名前にある通りオールロードを標榜していますが、Canyonと比べると若干表現は控え目。

多様化するサイクリストのニーズに応えるために新たに設計されたロードバイク。

舗装路から未舗装路までを快適に走破し、ライダーの冒険心を満たし、クラス最高峰の走りを約束するロードバイクが誕生した。

「舗装から未舗装まで快適走破」を謳い、冒険心を満たすロードとして設計しているわけですが、「クラス最高峰の走り」という曖昧な表現にもある通り、グラベルバイクなの? エンデュランスロードとは何が違うのか?といったところは「敢えて」なのかは分かりませんが若干曖昧なまま。

エンデュランスロードの延長線なのか、ロードバイクとグラベルバイクの中間点なのか。伝統的なレースブランドであるColnagoてすが、カテゴリ境界を曖昧にしています。

TrekとScott:安定ジオメトリ重視

Trekもご時世に倣ってカテゴリは「オールロード」としていますが、ラインナップされているものはかつてエンデュランスと呼ばれていたDomaneシリーズだったりします。
「広いタイヤクリアランス+リラックスジオメトリ」でロードバイクカテゴリでありながらも、グラベル移行を可能と定義付けしています。

Scottは革新的クリアランスで知られ、Addict RCのようにレース性能を保ちつつAllroad領域に踏み込むアプローチを取っていますが、公式サイト上では従来から変わらずエンデュランスカテゴリだったりします。
ただ、Trekとは「リラックスジオメトリ」という点が共通しています。

ロードバイクはレースだけのものではありません。体験や人とのつながりも大切です。新たなアディクトの哲学は、サイクリングコミュニティをとなえ、人々がともに経験を分かち合うことを可能にします。
新しいADDICTは剛性、重量、ワット数の節約だけが目的ではなく、「快適性の向上」、「リラックスしたジオメトリー」、「ニュートラルなハンドリング」、「ロングライドに対応する実用的な機能」をテーマに開発され、自由なスピードで、自由な場所へ、をテーマに、新型ADDICTはADDICT RCと別のアプローチで新しいロゴ、新しいデザイン、新しいアイデンティティ、でリニューアルしました。
新型アディクトは、何よりも冒険心とライディング体験を最優先にしています。

これはマーケティング的な用語なのでしょうが、各社「冒険心」はよく使ってきますね。
これ、分かるような分からないような用語なんですよね・・・。

個人的には、半日ライドを続けても人っこ一人すれ違わないような環境で走り続けたこともありますが、そういった環境で「冒険」をするのに適したバイクは、マウンテンバイクのような気がします。
いやいや路面がね、とか、より速く走りたい場合はオールロードなんだよ、という話なのでしょうが、そんなツッコミが入る位、この「冒険心」というワードは、何かを訴えかけているようでいて、何も表現していないような「中途半端」なワードに思えてしまうんですけどね・・・。

もうちょい頑張れ、マーケティング担当者。

Specialized: 実用エントリーのAllroad化

Specializedは商品ラインナップがはっきりしているが故に、あまりオールロードを前面に出したマーケティングは行なっていません。
何よりエンデュランスロードといったら Roubaix というイメージが強いですからね。
その意味では、TrekがDomaneシリーズを時代に合わせてオールロードの冠を被せてきたのとは対照的に、Roubaix はあくまでもエンデュランスカテゴリのまま。
この辺りの各社の考え方の違いはとても興味深いです。

それではオールロードの影響を全く受けていないのかというとそんなわけもなく。

Allezシリーズ(エントリーロード)は最大35mmタイヤクリアランス、ラック/フェンダーマウントを備え、「ちょっとしたグラベルも走破可能」と明記。

多才で高性能な走り:Allezは、いつものルートでKOMを達成したり、週末にグループライドを楽しんだりするだけでなく、通勤通学も行えるよう、ラックとフェンダーのマウントを装備。どんな道でも希望の用途を叶える汎用性の高さが特長です。タイヤクリアランスは最大35mm(フェンダー装着時で32mm)で、荒れた舗装路や比較的スムースなグラベルを物ともしません。険しい坂が現れても、ワイドなギア比でケイデンスを適切に保てるので、効率よく上れます。

公式にオールロードとは呼ばずとも、通勤・ツーリング・軽グラベル対応を売りにし、レース性能を保ちつつ日常汎用性を拡張することで時代の流れにも対応していることをアピールしています。

エンデュランスロードのRoubaixは正常進化を続けつつ、Allezシリーズで時代の流れを取り入れていくというのは、ちょっと面白いですよね。

Pinarello: レース志向の境界拡張

PinarelloはDogma FやPrinceで32-35mmタイヤ対応を謳い、「パヴェ(石畳)レース由来の悪路耐性」をアピール。純粋レースブランドながら、現代モデルはAllroad要素(安定ジオメトリ、コンプライアンス)を自然に吸収してきており、「ロードバイクがグラベルに近づく」現象を体現しています。

Pinarelloはもともと自社の各バイクのブランド(Dogma、Prince、GAN、etc)について、他社ほど明確なカテゴライズを意識しているわけではなく、時代に合わせてエアロ性能をそれぞれ進化・吸収してきたようなブランドですので、現在のマーケットが喧伝するオールロードの意図を自然と吸収していっているのは、ブランドとしてもある意味一貫性が保たれているように感じます。

数年前のPrinceだと、「もう年齢も重ねて体の柔軟性も落ちてきたし、もう少しリラックスなポジションとワイドタイヤを履かせたいかな」なんて思って見ていましたが、Princeの延長線上で進化を遂げたXシリーズであればそういった要望に応えられるものになっていたりします。

一貫性がないのでは、と思う人もいるかもしれませんが、時代の要求を常に吸収し続ける適応性があるという意味では、一貫性のあるのが Pinarelloの特徴、といったところでしょうか。

結論:ラベルを超えた「無限の自由」へ

こうやって各メーカーの情報をさらってみると、オールロードに「固定スペック」は存在しないということがよく分かります。

すべてが「タイヤ35-42mm+中間ジオメトリ+快適バランス」を基調としつつも、各社が独自の解釈を加えていることがよく分かります。
SpecializedのAllezがとても分かり易いのですが、ロードバイクはグラベル要素を積極吸収し、「全てがオールロード化」した結果、逆にオールロードというラベルは不要になってしまったような気がします。重要なのは「どこへでも連れて行く一台」、時速40kmで舗装路を攻めて走ることもできれば、少し荒れた裏道をバイクパッキング装備で走る走り方まで、笑顔でこなすマインドセットがオールロードなのでしょうね。

裏を返すと、とても「幅が広く」「曖昧なもの」がオールロードとも呼べますので、オールロードという言葉だけを信じて自分に合った一台を探すことも困難なわけで。

各社のマーケティングに踊らされることなく、各人の目利き力が試される時代になってとも言えます。

ま、各社がラインナップするバイクで「大外れ」なんてないでしょうから、そこまで神経質になる必要はないとは思いますが、ショップの店員が「これはオールロードと呼ばれるジャンルなので、大体なんでもこなせますよ」みたいな言い方をしてきたら、逆に警戒した方が良いかもしれません。

何にでも対応できるからこそ、ホイールをどうするのか、タイヤをどうするのか、乗り手が自分で考えないと「何と中途半端な」バイクを買うことにもつながるわけです。

売り手には優しいラベルですが、買い手には何とも難しいラベルな気がしてなりません。

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