週末ローディーがパワーメーターを持つことの意味(パワーメーター奮闘記 最終章)

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週末ローディーがパワーメーターを持つことの意味

特にレースに出るわけでもなく、短時間にがつん、とパワーを出す必要のない走り方をしている週末ローディーにとっては、「1時間でどれだけのパワーを出すことができるのか」という数字には、あまり意味がなかったりします。
おいおい、数ヶ月かけてなんちゃってFTP推測値を求めてきたおじさんが、いきなり全否定かーい、という話ではありますが・・・。

FTP値算出にこだわっていたのは、TSS(トレーニングストレススコア)を算出して、その日のライドが自分にとってどれだけ疲労を貯めるものだったのか、今後のライドに向けてどれだけ自分を成長させてくれるものだったのかを数値で理解したかったから、でした。

そして、もう1つ興味があるのは、「この距離、この獲得標高であれば、どれだけの平均パワーを維持すれば問題なく走りきることができるのか。オーバーペースにならずに済むのか」になります。
同じような距離や標高であればある程度想像できるようにはなりましたが、夏場で気温が高い時期や、あまり走り慣れていない、もしくは初めて走るルートだったりすると、数字ってとても役に立ちますよね。

今回は、パワー値をライド中に役立てることができるのか、を少し考えてみたいと思います。

1. ロングライドにおいてパワーデータを理解することに意味

なんでまたそんな小難しいこと考え始めたかというと、個人的に、以下の記事が私にはしっくり来たからなんです。

FTP、パワーウェイトレシオって何?パワトレにまつわる用語を知ろう – ガーミン パワーメーターを使いこなす Vol.2

幾つか「そうだよなー」と思った記事を抜粋させて頂きます。

 

パワーメーターを購入したのであれば、まずはあらゆる所を走ってデータを蓄積することから始めることが良いと思います。

 

 

またパワーデータで何を知りたいのか自分自身で知ることも大切なことです。パワーで何を知ることができるのかも分からない方もいるかもしれませんが、そういった方は「自分がどうなりたいか」と具体的な目標を設定することで、目標を達成するためには「何が必要か」「自分には何が足りないのか」がわかるかもしれませんね。パワーメーターは抽象的な事を具体化する道具ですので、目標も具体化しなければメーターの真価を発揮することができません。

 

自分がどうなりたいか、という目標ははっきりしていて、より遠く、より高くまで登れるようになりたい、です。

理由は単純。
その方が色々な場所に出かけられるようになるわで、より楽しいじゃないですか。

そうなると、より遠く、高くまで出かけられるようになる為に、パワーメーターで計測した値をどのように活用できるかを考えれば良いわけです。

なんとなくの感覚(仮説)としては、パワーとの関係性でいくとこの辺りが思い当たります。

  • パワーは抑えめにした方がより遠くまで走れる最後まで走りきれるようになる
  • パワーを抑えめにした方がより高く(獲得標高)まで走れるようになる

果たして、本当にそうなのか。
もしくは、自分のライドは本当にそうなっているのか。

今までは心拍数しか参考になる情報がありませんでしたが、より長距離を走る場合、心拍数を気にするべきなのか、パワー値を気にするべきなのか、「どちらにより注意を払った方が良いのか」を数値面から確認してみることにしました。

2. ライド中に気を配るべきは心拍数か、パワー値なのか

パワーメーター導入後、ライドに出た回数は10回。
但し、そのうちの3回は走行距離にして50km程度のライドでしたので、ロングライドという観点から、7回のライドについて走行距離、平均心拍数、平均パワー、獲得標高の相関関係を調べてみました。

なお、相関値の説明は以下の通りとなります。

相関係数 r の値 相関
-1 < r < -0.7 強い負の相関
-0.7 < r < -0.4 負の相関
-0.4 < r < -0.2 弱い負の相関
-0.2 < r < 0.2 ほとんど相関がない
0.2 < r < 0.4 弱い正の相関
0.4 < r < 0.7 正の相関
0.7 < r < 1 強い正の相関

それでは、それぞれのグラフと相関係数をずらーっと並べてみたいと思います。

(1) 獲得標高との相関関係

graph_01
graph_06

  • 獲得標高が上がると、平均心拍数は下がる傾向にある(負の相関あり)
  • 獲得標高が上がると、平均パワーは下がる傾向にある(負の相関あり)

はい。
相関関係はありますが、そこまで強い相関ではなかった模様です。
また、獲得標高に強い相関があるのは平均心拍と平均パワーのいずれか、という意味では平均パワーの方が強い相関がありますが、その差は大きくはありませんでした。

私の場合、より高くまで登るライドの時には、心拍に気をつけるよりは、パワーに気を配った方が良いようですが、その差は大きくない為、心拍にもパワーにも等しく気を配る、というのが正解のようですね。

(2) 走行距離との相関関係

graph_05

graph_04

  • 走行距離が長くなると、平均心拍は下がる傾向がある(強い負の相関)
  • 走行距離が長くなると、平均パワーは下がる傾向がある(強い負の相関)

こちらは、獲得標高よりも強い相関が確認されました。
走行距離が長くなると、平均心拍は下がる(というか、心拍が下がるような走りにならざるをえない)し、平均パワーも下がる(力を抜いた走りをせざるを得ない)ようですね。
そりゃそうだ。

数値から分かったこととしては、走行距離により強い相関があるのは、平均心拍よりも平均パワーのようです。

3. サマリ

 

私の場合、より高くまで登る場合、より遠くまで走る場合、いずれにおいてもより強い相関があるのは心拍よりもパワーだということが分かりました。

良い意味では「心肺機能が強い」ということに、悪い意味では「脚力が弱い」ということになるのですかね。

なんか、納得の結果でした。

昔から短距離よりは長距離の方が得意でしたし、長く(というか地道に)プールに通っていたりしましたので、どちらが強いかという意味では脚力よりは心配機能なんだと思います。

ということは、私がより注意を払うべきはパワー値になるわけで。

それがどういう意味かというと。

あんたパワーメーター買って正解だったよ、ってことですね。
分かります。

特に「脚力に自信ないんだよなー」という人ほど、脚力のマネジメントにはシビアになる必要がありますので、ガーミンに表示されるパワー値にきっちり注意を払うことで、より遠くまでのライドを実現することができるようになるわけですね。

ま、そんなこと、つらつら数字を並べ立てるまでもなく「当たり前じゃん」という話なのですが、数字できちんと確認したい性分なもので、今回がっつり調べてみて、とてもスッキリしました。
ということで。

週末ローディーの皆さん。

パワーメーター、導入してみませんか?

 

コメント

  1. ナナシ より:

    たかにぃ氏の見解も聞きたいのですが、とりあえずコメントします。
    >「1時間でどれだけのパワーを出すことができるのか」という数字には、あまり意味がなかったりします。
    意味ありますよ。
    TSSを知りたい理由はよくわかりませんが(疲労を数値化できるだけだし)、そのTSSはFTPを元にして算出されるので、FTPが高いほど「疲れにくくなる」からです。違いますか?数値とはそういうものです。
    おそらく、「素人にFTPなんて関係ない」という思い込み、もしくはそう思いたくない何か(心理的な作用)で、実際に出ているデータをちゃんと見られなくなっているのでは?と私は感じています。(パワーを見ると脚力は一般素人比較で確実にあります。)
    私も数値大好きなのですが(笑)、足りないデータがありますので少し質問させて下さい。
    NP165Wの時のライドについてですが
    ・アベレージ
    ・獲得標高
    ・心拍の平均値最大値あとゾーンも
    ・平均ケイデンス
    ・(数値ではないですが)脚の疲労はどうですか?この部分が疲れたとかあれば。

  2. ナナシ より:

    上のTSSの書き方だと真意が伝わらないと思うので…こっちで考えてください。
    FTPが300Wの人と、150Wの人がNP150で同じ時間走った場合の疲れやすさの話です。

  3. たかにぃ より:

    慣れてない人がFTP、TSSに拘ってもあんまり意味無いっていう意味で、おとーさんの話に同意です。
    コーガン式の簡易FTP計測の5分全力部分で疲れ切ったり、20分パワーバンドを維持出来ずに測定失敗する人のFTPは低いし不安定で、無理に高いFTP値を用いたTSSも微妙です。参考記事の竹谷さんが言ってる「TSS150なら一日で回復」という話もCTL150(3ヶ月間の日平均TSS150位)といった高強度慣れしたプロ選手レベルの話ですし。
    ただそれを抜きにして週末ローディにとってパワーメーターは、一日のライドの決算としてNPが使えるし(平均ワット数は微妙)、パワー値も坂を上る際の加減に大変有効だと思います。特に峠で初心者は心拍数を上げ過ぎてしまい一度上がった心拍数は指標として使いづらくなりますが、パワー値なら素直に反応するので前半抑え後半に繋ぐほうが速いっていうのが客観的に理解しやすくなります。
    理論的な話はPTバイブルを読み進めていくと実業団選手などのホビーレーサーに対して分かり易く書いてあるので、週末ライダーはそこから更に一段程考える必要はあります。闇雲に頑張るのではなくその人の程度に合わせた回復走や、短時間集中と休憩の反復で欲しい強度の出力や技術を身に付けるインターバル練習など、良い物を選んで買えるおとーさんなら「何故やるべきか・やらないべきか」も含めて受け取れるかと思います。

  4. おとーさん より:

    >ナナシさん
    むむ。鋭いご指摘ありがとうございます。
    私の書き方が悪かったですね・・・汗
    私のような週末ローディーですと、「1時間だけ走る」というケースは皆無で、ライド時間は2〜6時間くらいになります。
    その意味で、「1時間がんばったらいくつだよ」というFTPだけだと、あまり参考にならないんですね。
    ただ当然、そのFTPがあるからこそTSSが求められるわけですし、「素材」としてのFTPは重要だけど「生のFTP」そのものだと使い途がないなと、と。
    PTバイブル読み込み中の生半可知識ですが、パワープロフィール(5秒、1分、5分、FTP)に、「2時間、4時間、6時間」とかあったら、私のような週末ローディーにはとても参考になるのかな、なんて。(そんな数値、とても計測できませんが・・・笑)
    NP=165の時のライドの他の数値はこんなでした。
    平均速度 : 26.1kph
    獲得標高 : 453m
    心拍平均 : 155bpm
    最大心拍 : 184bpm
    平均ケイデンス : 84rpm

  5. おとーさん より:

    >たかにぃさん
    つくづく、私のブログ記事よりもたかにぃさんのコメントの方が内容があって貴重だな、と・・・汗
    とても的確なまとめありがとうございます。
    まさにコメントいただいたように、パワーを一定に保つこともできず、極端に上がったり、直後にへばって極端に下がったりしてしまうど素人なもので、コーガン式での測定ができるようになるには、もっと練習が必要だよなー、と痛感しております。
    ただ、今回NP=165という数値を一度経験することができましたので、PTバイブル読んでも「ほほーう。自分の場合だとそんな感じなんですね」と、とても勉強になっています。
    ただ、私の場合ライドのデータもまだ多く溜まっていませんので、先日頂いたアドバイスのように、「ちょいときつい」のであれば下方修正するとか、もう少し時間をかけながら見極めて行こうかな、と思っています。
    TSSについては、週末ローディー的な、自分なりの使い方を今度別記事にまとめてみようと思いますが、ライド後の疲労に関しては、TSSとNPは参考になりそうかも、という気になってきました。
    ただ、PTバイブルとか読んでるとどんどん興味が出てきて、少しトレーニング頑張ってみようかな、なんて気になるから面白いです。
    私の性格的にもどストライクな書籍でした!! たかにぃさんに勧められてなかったら、「自分には関係ないかな」と、まず確実に買ってなかったと思いますが・汗
    早速ガーミンでワークアウトとか作ってしまいました・笑

  6. ナナシ より:

    >私のような週末ローディーですと、「1時間だけ走る」というケースは皆無で、ライド時間は2〜6時間くらいになります。
    その意味で、「1時間がんばったらいくつだよ」というFTPだけだと、あまり参考にならないんですね。
    と思うでしょ?それが思い込みなんですよ。なんにしてもやってみなけりゃ実際のところはわからないんです。私は自分が経験してきたから言えると自負しています。なぜ、短時間高強度が必要かというと、FTPが実力の数値であると同時に、その短時間高強度が自分の実力だからです(感覚としての)。それを経験しているのとしていないのとでは全く違います。(1回すればいいということではなく、繰り返しすれば経験値は溜まります)
    短時間高強度の具合がわかるからこそ、長時間低強度の具合がわかるようになります。
    相対的な「感覚」の問題です。例えば「パワーを一定に保つこともできず」とありますが、このパワー一定ということの基本が短時間高強度です。
    でも、パワーメーターを使えば「感覚」に頼る必要はなく数値を見ればそれでいいです。
    その点でもたかにぃ氏のおっしゃる通りで素人がパワーメーターを使う利点になります。

  7. ナナシ より:

    「生のFTP」の意味がいまいち理解できないのですが(笑)、たかにぃ氏がおっしゃる数値に拘り過ぎるのは意味ないということなら同意できます。数値はあくまでも数値で高いから良いとか低いから悪いとか言う話ではなく、その数値は客観的に見る材料になるので「意味がある」のです。TSSの算出でもわかるでしょう?なので、その数値をただ事実として受け入れるだけなんですよ。
    その点で見ると、間引き計測の不確実な数値を例にして計算したのはダメですよね。客観的数値ではありませんから。NPというある程度正確な数値があるにも関わらず、NPを算出に使わなかったのはどうしてか?自分で考えてください(笑)。
    パワープロフィールに60分超の長時間がないのは、パワーカーブを見ればわかりますよ(笑)。それを算出する意味がほとんどないからです。(そもそもパワープロフィールでわかる脚質とはごく短時間の出力からわかるもの)
    追加の数値を見る限りでは、1時間程度の高強度の練習をやってみればもっとFTPが高いということがわかります。ケイデンスも極端に低いわけでもないので、筋力だけに頼った出力でもないようですし、やっぱり素質としての脚力はありますよ。
    ただ、高強度で一定の出力を維持することに慣れていないだけだと思います。
    高強度での一定出力に自信がつけば、ロングで意味のない高出力をしなくなります。
    それが自分の実力を知るということです。

  8. おとーさん より:

    >ナナシさん
    なるほど。勉強になります!
    >ただ、高強度で一定の出力を維持することに慣れていないだけだと思います。
    >高強度での一定出力に自信がつけば、ロングで意味のない高出力をしなくなります。
    これは分かりやすいご説明ですね。確かにそうだよな、と納得。
    短時間であっても、一定で高出力を出すことができるからこそ、低出力でも出力をコントロールして、一定で無駄なく走りきることができるようになる、というのは感覚としてもしっくり来ますね。
    同じスピードでも、最大馬力のある車の方が、最大馬力が貧弱な車よりもゆったり走れる、みたいな。(例えがイマイチですかね・・・)
    知識が中途半端、思い込み、というのはよく陥りがちな話ではありますので、きっちり確認、勉強を積み重ねて行かないとですねー。

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