ほんと、いつになったら明るい話題が出てくるのでしょうか・・・。
シマノとSRAMは「苦境からの脱出」シナリオを描けるのか
自転車を愛してウン十年、機材の進化を楽しみとしてきた週末ローディーにとって、2026年という年は「かつてない忍耐」の年として記憶されるかもしれません。
先日発表されたシマノの2026年12月期 第1四半期決算。その数字は、我々が肌で感じている「ショップの在庫過剰」や「価格の高止まり」が、メーカーの屋台骨をいかに激しく揺さぶっているかを如実に物語っています。
自転車業界の冷え込み(シマノの大幅減益発表)

まずは、発表されたばかりのシマノの最新実績(2026年1Q)を見てみましょう。
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売上高: 1,176億4,400万円(前年同期比 +3.6%)
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営業利益: 104億円(前年同期比 ▲35.6%)
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自転車部門 営業利益: 46.3%減(ほぼ半減)
売上高こそ好調な「釣具部門」の反発によって微増を保っていますが、本業である自転車部門の利益は「半減」という衝撃的な着地になっています。
なぜこれほどまでに利益が削られているのか。その正体は、「なかなか掃けない在庫」と「動かせない工場」にあります。コロナ禍の熱狂で積み上がった流通在庫はいまだに掃けず、シマノは在庫調整のために工場の稼働を抑えざるを得ません。結果として、製造原価が跳ね上がり、利益率を直撃している模様。
まさに、強風の中、重いギアで坂を登らされているような状況が続いています。
シマノの対策(外科手術と新たな需要創出)
この逆風に対し、業界の巨人・シマノは「守り」だけでなく、組織の「根本的な再定義」と、マーケットを自ら耕す「需要創造」に踏み切りました。
2026年より購買機能を「自転車」と「釣具」に完全に分離。同時に「CUES」による規格統合を推し進め、「どこでも直せる、長く使える」という安心感を提供。不況期だからこそ、ユーザーが安心してシマノのコンポーネントに投資できる「インフラ」としての地位を固めていこうとしています。
先日記事でも紹介しましたが、CUESについてはCUES Custom Build Projectを通して新たにファン層の掘り起こし、新規創造にもチャレンジしており「攻めの姿勢」を打ち出してきています。


また、シマノは今、単にパーツを売るだけでなく、世界各地でMTBトレイルの整備支援を行う「Trail Born」プロジェクトを加速させています。自転車に乗る「場所」そのものを守り、増やすことで、中長期的な需要の土壌を自ら作ろうとしているのです。
これは日本にいるとそこまで実感することはないのですが、欧州を中心とした調査を実施した結果、ユーザーが「維持費や修理の不透明さ」を理由に利用を控えている課題に着目。サービス拠点のデジタル化を推進し、不透明だった工賃や納期を可視化することで、休眠層が再びハンドルを握るための「心理的障壁」を取り除く施策を打ち出しているそうです。
「需要が戻るのを待つのではなく、自ら市場を健全化し、文化を育てる」。この姿勢に、王者のプライドと覚悟が透けて見えます。
SRAMの回答:反逆者の「破壊」と「ワイヤレスへの全振り」
これはシマノだけの問題かというと、当然そうでもありません。
米国・SRAMは非上場企業ということもあり、シマノほど財務状況が開示されていないのでどこまでの打撃を被っているかは分かりませんが、欧米での在庫過剰問題はシマノもSRAMも共通の課題です。
対して、SRAMはシマノとは真逆の「攻めのスリム化」でこの不況を突破しようとしている模様。非上場ゆえに詳細な利益率は不明ですが、彼らの2026年の動向は極めてアグレッシブです。
2026年に入り、彼らは「Eagle S-Series」を導入し、複雑だったグレードを「3つ」に集約。製造コストを下げつつ、ユーザーの迷いを断ち切りました。
また、シマノがコンポーネントに関しては有線・無線の共存を探る中、SRAMは「全てのハイエンドはワイヤレスであるべきだ」という哲学をさらに加速。e-BIKEやグラベルといった成長分野において、圧倒的な「先進性」という付加価値で高単価を維持しています。
「古い規格は捨て、新しい体験を買え」というSRAMのメッセージ。
コンポの電動化に関しては常にSRAMが一歩先を行く状況は続いてきましたが、この点は企業アイデンディティとして今後も徹底していく模様。
私自身ロードバイクのコンポはシマノから入り、105、アルテグラとステップアップしてきましたが、一度SRAMの電動コンポを体験してしまうと、もう一度シマノに戻ろうという気にはあまりなれないんですよね。

製造業を突き詰めるか、テック企業として進化するのか
おそらく、自転車業界におけるこの「激坂」のような状況は2026年中は継続することでしょう。
全世界を熱狂に巻き込む「弱虫ペダル」のような作品が登場すれば話は別なのでしょうが・・・。
ビジネスの視点で見れば、シマノは「製造業としての規律」を取り戻そうとしており、自らマーケット創出に走るなど「攻めの視点はありつつも、製造業としての正常進化」を続けようとしています。
対してSRAMは電動化での優位性を武器に「旧来からの製造業してだけではなく、テック企業としての革新」まで意識していそうな雰囲気。
どちらも本業を疎かにするような企業ではないので屋台骨がゆらぐようなことはないとは思いますが、一歩先んじることができるのはどちらの企業(コンポ)なのか、興味深いところではあります。
やはりコンポは「一強体制」はユーザーにとってあまり健全な状況ではありませんから、両社が切磋琢磨して成長を継続して欲しいところです。
欲を言えば、カンパも復活してくれると嬉しいのですが・・・。

コメント
未だしっかりしたロード用バイクを持っていない自転車乗りからすると、新しいバイク全然欲しいんですが…円安の影響もあるのかやっぱり高く感じちゃうんですよねぇ…
維持費の不透明さというか、一消費者として感じてるのは、自転車を買った時は本当に何も考えてなくて、「よっしゃ、一番良いの買ったわ!」って思ってしばらく満足して乗ってるんです。だけどコンポーネントが消耗品だったり、パーツを更新したりと色々お金がかかることを、ちゃんと理解していなくて、いざしばらく乗らない時期が続き、久しぶりに整備しようと思うと、結構お金がかかっちゃって…結局整備もロクにしないまま、そのまま乗らなくなっちゃうパターンへ。本来自分の安全にかかわることなのでお金がかかるのは当たり前の事なんですけどね。今は何とか週末ライダーまで戻ってきました。
企業主導のトレイルの整備は面白そうですね。日本だと人様の山林に入るわけにもいかないし、自転車で乗り入れることのできる山が少ないのが残念です。北欧では自然享受権という考え方があるようですが、このあたりの法整備が進めば、グラベルもトレイルももう少し流行るかも…自然破壊と自然利用は表裏一体で、悩ましい限りですが。