ブルベやグラベルライドとか、ニッチだけどハマる製品かも?しれません。
ライド中にボタン一つで注油完了(電動チェーン自動注油システム)

近年、世界中で盛り上がりを見せているグラベルレース。200マイル(約320km)を激走する最高峰のレース「Unbound Gravel(アンバウンド・グラベル)」をはじめ、過酷な環境下で人間の限界と機材の性能を競うイベントが注目を集めています。
そんな中、「ライド中にボタン一つでチェーンにオイルを自動注油してくれる魔法のようなシステム」が開発中であるというニュースが。

今回は、カナダの気鋭のデザインスタジオ「Faction Bike Studio」と、プログラベルレーサーの「アンドリュー・レスペランス(Andrew L’Esperance)」選手がタッグを組んで開発を進めている、この革新的なシステムについてご紹介します。
ニッチではありますが、こういった意欲的なチャレンジ、好きですねー。
なぜグラベルライドで「ライド中のオイル切れ」を気にする必要があるのか?

「出走前にしっかり注油していれば、わざわざ走っている最中に注油しなくてもいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、長距離のグラベルレースは想像を絶するほど機材を酷使する走り方だったりします。
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急変する路面環境: 乾いた砂埃が舞うセクションを走ったかと思えば、次の瞬間には粘土質の泥が詰まるエリアに突入する。
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圧倒的な距離と時間: Unbound Gravelのようなレースでは、トップ選手でも8時間以上、一般ライダーなら十数時間以上も未舗装路を走り続けます。
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駆動効率(ワット数)の損失: 砂埃や泥がチェーン、カセット、チェーンリングに付着すると、潤滑層が瞬く間に破壊されます。オイルが切れてギチギチになったドライブトレインは、数十ワットものパワーロスを生み出し、ライダーの体力をジワジワと奪っていくのです。
私のような素人でも、マウンテンバイクで西東京の林道を小1時間走っただけでチェーンは砂・泥まみれになり、帰路はチェーンが「キシキシ」と軋みを上げるレベルには汚れますので、何時間も、より高いワット数でがしがし漕ぎまくるレースでは、機材へのストレスたるや半端ないことでしょう。
コンマ1秒、1ワットを削り合うプロのトップ集団において、後半戦でチェーンが「カラカラ」に乾いてしまうことは、致命的なわけですね。
これまでライダーたちはどう対処してきたのか?

これまで、長距離レース中にオイル切れを起こした場合の対処法は、主に2つしかありませんでした。
エイドステーションやコース脇で「一時停止」して注油する
これが最も確実ですが、最大のデメリットは「タイムロス」です。一度止まれば貴重な秒単位の時間を失うだけでなく、それまで必死に食らいついていた先頭集団からちぎられ、二度と追いつけなくなるリスクがあります
走りながらアクロバティックに注油する(DIYの歴史)
過去のレースでは、走行中にボトルから強引にチェーンへオイルを振りかけようとする命知らずなライダーや、独自のDIYシステム自作に挑むライダーがいました
実は、今回共同開発に名を連ねるアンドリュー・レスペランス選手自身も、昨年のUnboundで超アナログなDIYシステムを実戦投入していた一人だそうです。彼はなんと、チェーンオイルを満たした注射器(シリンジ)をシートチューブに結束バンドで固定し、走行中に手でプランジャーを押してチェーンに直接垂らすという力技を使っていました。
なかなかの荒技ですね。。。
今回の新製品は、その「レーサーの執念が生んだDIYアイデア」をプロのエンジニアリングで極限まで洗練させたものなのです。
今回の製品の狙い
Faction Bike Studioとレスペランス選手が目指したのは、「1秒も足を止めることなく、エアロダイナミクスを犠牲にせず、常に最高の駆動効率を維持し続けること」です。
完全にハンズフリー(ハンドルから手を離さない状態)かつクリーンに注油を行うことで、集団内での位置取りや補給に集中したまま、レース終盤までチェーンの摩擦抵抗を最小限に抑え込む。これぞまさに、現代のレースシーンで勝敗を分ける「マージナル・ゲイン(微小な優位性の積み重ね)」の追求そのものです。
レースシーンで語られると今ひとつピンと来ない側面もありますが、ブルベで「残りあと30分でゴールした」とか「わずか15分届かなかった」みたいな話はよく聞きますので、ブルベ中に注油する時間を削減する為に、みたいに考えると「確かに価値はありそうだな」と思えてきますね。
開発中の「電動自動注油システム」の特徴
では、具体的にどのようなメカニズムなのでしょうか? 明らかになっているプロトタイプの特徴がこちらです。
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スマートに隠された内部構造: オイルを蓄えるリザーバーは、シートチューブ(またはシートポスト)の内部にすっぽりと格納されるそうです。外観からはシステムが付いていることすら分からず、グラベルバイクの美しい外観や空力性能を一切損ないません。
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ハンドルバーのボタンで一発作動: 変速レバーやドロッパーポストのリモートレバーのように、ハンドルに取り付けられたボタンを押すだけで、電動で注油がスタートします。
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正確な注油量: ボタンを一回(約1秒)タップすると、システムがあらかじめ計算された正確な量のオイルを注油してくれます。ケイデンス約75rpmでペダリングしている状態であれば、チェーンがちょうど1周する間にすべてのリンクへ均一にオイルが行き渡るよう設計されています。
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超軽量設計(わずか100g): バッテリーや電動変速が当たり前になった現代のバイクにおいて、これ以上重くなるのは避けたいところ。このシステムは総重量わずか「100g(公称値)」と、非常に軽量に仕上げられています。
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専用ガイドによる確実なドリップ: フロントチェーンリングのすぐ上部にカスタム設計されたトップガイド兼ドリッパーが配置されており、風や振動に影響されることなく、狙った位置(チェーン)へ的確にオイルを滴下します。
1秒垂らすとちょうどチェーン一周する量が滴下されるというのは、なかなかよく考えられていますね。
ただ、チェーンが暴れたり、そもそもチェーンがすでにドロドロに汚れていたりするとチェーンリンクの中に適切に浸透してくれるのか?という問題はありますが、小まめに注油していけば適度に汚れも洗い流されて丁度良くなる・・・のですかね。
歴史的な製品になるか? 週末のUnboundで実戦投入!
実は、過去を振り返ると「自転車の自動注油システム」という概念自体は完全な初出ではありません。オートバイ用で有名な『Scottoiler』の自転車版(Cycle S1)や、かつて『Rohloff』が開発した「Lubmatic」など、いくつか先例はありました。しかし、それらは重量や見た目の無骨さ、当時の市場ニーズ(ここまでの過酷なロングレースの少なさ)から、商業的な成功を収めるには至りませんでした。
しかし、今回のシステムは、これまでのどれよりも「軽量で、洗練されており、現代のグラベルレースに特化している」と言えます。近年流行しているチェーンワックスとの相性や、オイルを注油し続けることで逆に砂埃を吸い寄せないか?といった議論はありますが、その答えはまもなく出ます。
どうやらプロトタイプが「Unbound Gravel 2026」の本番レースで実戦投入される模様。
過酷な Flint Hills の鋭利な砂利と過酷なダストの中で、この100gの電動ガジェットがどれほどの威力を発揮するのか。
当然一度や二度のレースで結果が出るわけでもないでしょうし、今後改善も重ねられていくのでしょうが、新たな電動ガジェットの地位を獲得することができるのか、ちょっと興味津々です。

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