自分に最適な炭水化物の摂取量が測定できる時代に(ExoAnalytics)

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科学の進化は目覚ましいものがありますが、科学的に実現できることと、それが庶民にも手の届くものであることは必ずしも同義ではありません。

ロードバイク界隈でいうと、風洞実験用の専用施設を使えば自分に最適なエアロ装備、ポジションを判断することが可能になりますが、それには多額の費用が発生してしまいます。富士エアロパフォーマンスセンターに自転車を持ち込めば、個人でも2時間75,000円で計測してもらえますが、ちょっとハードルは高いですよね。

今回は、特にレースやロングライドで問題になる「効率的な補給」を科学的に見える化してくれるサービスのご紹介です。

自分にとって必要にして最小限の補給量を見える化してくれる(エクソアナリティクス)

「どれだけの炭水化物を摂れば最も速く、遠くまで走れるのか?」——その問いに科学的に答える時代がやってきました。

ローディーにとっての永遠の課題

ライド中のエネルギー切れを防ぐために、ジェルやドリンクで炭水化物を補給するのは、特にタイムや距離を競うライドにおいては当たり前の光景ですよね。
一般的な炭水化物の補給目安としては「1時間あたり60〜90g」と言われていたり、プロになると「120g近く」にも達すると言われています。

とはいえ、私のように胃腸よわよわローディーにとっては、補給の過剰摂取をしてしまうと胃が重くなって余計に補給効率は落ちてしまいますし、かといって補給に失敗してしまうとライド終盤で力が出ないなんてことに。

最適な補給量は本来人それぞれに違うはずです。

リバプールの企業「エクソアナリティクス」は、その“最適解”を科学的に導く家庭用検査キットを一般向けに発売しました。1回あたり350ポンド。自宅でテストを行い、ラボ分析の結果から「あなたが実際に有効活用できる炭水化物量」を算出してくれるとのこと。

ExoAnalytics
Exoanalytics

科学的アプローチの中身

以下は公式サイトの宣伝文句。

炭水化物利用能力の個人差を理解することは、パフォーマンス向上の鍵です。この能力を測定するため、40年以上にわたり研究では外因性炭水化物評価法が用いられてきましたが、実験室外では容易に利用できませんでした。

私たちはこの常識を変え、あらゆるレベルのアスリート(トップ選手から一般愛好家まで)に、自宅やフィールドで個人に合わせた栄養補給法を提供します。サイクリスト、ランナー、トライアスリート、オールラウンダーの方々に最適なテストです。

科学に裏打ちされたテストを、ご自宅までお届けします。

このテストを率いるのは、リバプール・ジョン・ムーアズ大学のピュー博士。彼らの「外因性炭水化物酸化テスト」では、摂取した炭水化物中の同位体(13C)を追跡し、どれだけが実際に燃焼されたかを計測するそうです。

被験者は、13Cでラベル付けされた炭水化物溶液を摂取し、特定の強度・時間でペダリングを実施。その後、呼気サンプルを分析することで「酸化率(燃焼された割合)」を明らかにする。

いやー、こ難しくてしんどいですね・笑

テストの中身

そんな私には、「実際にやってみたよ」という記事はほんとにありがたいもので。

Cycling Weekly の記者さんの体験記事をまとめてみました。

No more fuelling guesswork: We trial the home test kit that promises carb precision – to the gram
How much carbohydrate do you need to consume per hour on the bike? A new test promises to give you a precise number. Cyc...
  • 手元に届いたキットは驚くほどおしゃれな箱に入っており、検査前に避けるべき食品(結果を歪める可能性のあるレベルのC13を含むもの)についての明確な指示書が同封されている
  • 検査手順自体は特に複雑ではなく特定の順序で実施する必要があり、動画ガイドのおかげで簡単に進めることができた
  • 90分間のワークアウトを実施し、その間に飲料を摂取しながら計測を行う
  • 摂取する飲料は粉末炭水化物180gを水で溶かし、750mlの液体にまで希釈したもの
  • 90分間のライド開始前に、ストローを通して呼気を専用容器に採取して素早く蓋を閉めて密封
  • FTPの約70%でペダリングを行い、15分ごとに甘味炭水化物溶液125mlを摂取
  • 75分経過時点で、代謝マスクを頭から被り、顔に装着した後、アプリと接続して校正を実施
  • 80分経過時点でアプリのスタートボタンを押し、テスト終了10分前までペダリングを続け、90分終了時に自転車から降り、最後の呼気サンプルを採取すれば完了
  • マスクと専用容器を研究所に郵送し、結果が届くのを待つだけ

専用マスクをつけるとか、ちょっと本格的ですね。

テスト結果

上記記事の記者さんの結果も興味深いです。

  • 実際にテストを受けた結果、摂取した炭水化物(90分で180g)のうち、燃焼されたのは1時間あたり約59g。摂取量の半分にとどまった
  • テスト結果をもとに導き出された理想の1時間あたりの摂取量は、「ライド前半は73g、後半は82g」

摂取した量のうち、実際に吸収できた量がどの程度なのか。

それによって、実際に摂取すべき量も大きく変わるわけですね。

ちなみに、この企業のテスト結果は、摂取量が44%から90%までと、人によって大きく差が出ていたとのことです。

データが導く“あなた専用の補給戦略”

このキットの真価はその「精度」にあるのではないでしょうか。
平均的なガイドラインではなく、自分の代謝データをもとに補給計画を立てられるわけであり、過剰摂取による胃の不快感を防ぎ、経済的にも無駄がありません。

さらに、同社は膨大なサイクリストデータを蓄積中で、年齢・性別・環境による炭水化物代謝の差や、トライアスロン中の競技間差異なども分析しているという。栄養科学がいよいよ一般サイクリストの手元に届いたと言えるのではないでしょうか。

なかなか個人での実施には限界もありそうですが、お金を湯水のように使ってことを厭わなければ、自分にとって最適な摂取効率を誇る炭水化物を特定することも可能になりそうです。

世に出ているエナジージェルのうち、自分にとって最適な商品はどれなのか。

そこまで把握できたら最強ですよね。

私のような週末ローディーにとって、そこまで神経質に補給効率を考える必要性は高くないとは思いますが、胃腸よわよわな観点からすると、あまり大量に摂取することができないのも事実なわけで。

補給効率の良い補給食が何なのか、どの程度の頻度で摂取すれば良いのかを正しく理解することはとても大切です。

ハンガーノックの辛さは、一度経験してしまうと「もう2度とごめん」と思えるものですから。

このテスト、あなたなら試してみますか?

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