少し前の記事になるのですが、個人的にとても共感した記事があります。

タイトルは若干刺激的でして、"Does Your Bike’s Frame Material Matter?" (自転車のフレーム素材は重要か?)というものです。





いやいや、重要でしょ?という話ではありますし、この記事を書いた人も「重要ではない」とは言っていないのですが、「それだけじゃないよ?」という問いかけをしています。






■ とにかくカーボンフレーム買えば良いんでしょ?という風潮は面白くない



1. フレームの素材だけに目を向けると全体像を見失う

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最初にお断りしておきますが、この記事を書いた方は「スチールが最高」とか「アルミが一番」といったような主張をしているわけではありません。
フレームの素材「だけ」で全てを説明しようとするのは短絡的だ、という話ですね。




フレーム素材は、バイクの全体的な特徴に何らかの影響を与えますが、フィーリングやパフォーマンスに寄与するのはそれだけではありません。アルミは硬くて乗り心地が悪く、スチールやチタンは滑らかな乗り心地が得られると言われていますが、実際にはもっと微妙な違いがあるのです


そりゃそうですよね。
おそらく上記のような話を聞いたら多くの人が「そうでしょ」と答えると思いますが、では次のアップグレードではどんなフレームのバイクを買いたいですか?と聞くと、多くの人は「カーボンフレーム」と答えるでしょうね。

この執筆者は、過去に「高級フレーム」と呼ばれるものは、カーボン、チタン、スチール、アルミと全てのフレームに乗ったことがあり、当然「当たり」「外れ」を色々と経験してきたそうですが、「不快でまさにクソみたいな」フレームが3台あったそうで、それはチタン、カーボン、スチールだったそうです。
唯一、アルミフレームだけは大外れがなかったそうで。

それはそれで興味深いな、と思いました。
(ちなみに、ハズレのフレームにそれら3種類の素材があったと言っているだけで、カーボンのフレーム全てがダメだった、という話ではありません)

よく言われる話ですが、アルミフレームが「固くて乗り心地が悪い」と言われます。
私が一台目に購入したアルミフレームよりも、二台目に購入したカーボンフレームの方が乗り心地は良かったですし、あながちこういった指摘は間違っていないとは思います。

ただ、弾性係数だけみると、鉄は約200GPa、チタンは約100GPa、アルミニウムは約70GPaということで、鉄はアルミの3倍の剛性があります。
但し剛性が全てを決定付ける要素ではなく、実際にフレームへと変わる際には、密度、強度、耐久性、伸び、コストといったファクターも絡んできて、最終的なフレームが出来上がりますので、結局は設計思想だったり、ビルダーによって異素材、同素材であろうと全く異なる性格のフレームが出来上がることになります。 



2. フレーム以外の要素も大きなファクターになる

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ロードバイクの性格を決定付ける要素としては、フレームの素材の他には各種コンポーネント類があります。ホイールのたわみ、タイヤの空気圧、バーテープの振動吸収性、靴底の硬さ、クイックリリースの締まり具合によっても結果は変わってきます。

体重も大きな要素になります。
フレームやホイールのインプレ記事を読むと毎回思うのですが、全く同じホイールであってもインプレする人によっては「柔らかい」「硬い」と全く結論が異なってきます。
身長が違えばフレームのジオメトリに微妙な違いが出てくることもあり、背の低いライダーが乗る小さなフレームでは挙動が違ってくることもあります。

ポジションもアップライトかローポジションかによってもハンドリングに大きな違いが出てきます。

そして最も事態を難しくしているのが、「同じ価格帯で異素材のフレームだけ交換して乗り心地を比較する」ことがなかなかできない点にあります。



このような素材の話で私が不満に思うのは、選択肢が実際よりも多くあるように思わせてしまうことです。ショップに行けば、チタン、カーボン、スチール、アルミでできた1000ドルのシマノ・クラリス搭載のバイクがあるような。それは明らかに間違いです。600ドルから2000ドルまでは、ほぼすべての自転車がアルミニウム製です。しかし、2,000ドルのカーボンバイクと2,000ドルのアルミバイクでは、装備の仕方が異なるため、素材だけを直接比較することは困難です。

3,500ドル以上になると、ほとんどのフレームがカーボンになります。ハイエンドやブティックのバイクを見ているときだけ、4つの素材で作られた同等のバイクを選択することができるのです。その場合でも、素材そのものというよりも、メーカーやその哲学が重要です。リチャード・サックスのバイクは、スチールだから買うのか、それともリチャード・サックスが作っているから買うのか?チタンを使っても、サックスはサックスだと思うんです。アルミでもいい。あるいはカーボン。

そりゃそうですよねー。
金属フレーム(アルミ、スチール、チタン)であれば、コンポ揃えて乗り比べとかできそうではありますが、実際にそんな機会ってないですしね。




どんな素材でも乗り心地は良くできるし、どんな素材でも乗り心地を悪くすることができる。素材よりも、デザイン、設計、ディテールが重要なのです。



そりゃそうです。
ただ、ビルダーであれば設計ポリシーとかデザイン傾向などを把握することはできるかもしれませんが、メジャーブランドになると逆に難しそうです。
結果的に「レース向け」「エンデュランス向け」みたいなカテゴライズになってしまうんでしょうね。

そう考えると、キャノンデールが CAAD13 で今でもアルミフレームにこだわり続けている点は、多様な選択肢の提供という意味でとても好感が持てます。

ビジネス上の扱い易さから、どうしてもエントリーとしてのアルミ、ミドルグレード以上のカーボンというカテゴライズになってしまうのは致し方ないのでしょうが、何でもかんでもカーボンフレーム!というのではなく、アルミ、スチール、チタンと幅広い選択肢がこの先も変わらずに残り続けてくれることを期待したいと思います。

最後に、私が一番「そうだよなー」と共感したフレーズで締めくくりたいと思います。




I get it—people like it when things are black or white. But cycling equipment isn’t like that: I’m more surprised to be proven right than to be shown I’m wrong. 
(物事が白か黒かで判断されるのが好きなのはわかります。でも、サイクリング用品はそういうものではありません。僕は自分が間違っていることを指摘されるより、正しいことを証明されるほうがうれしいんです)


何事においてもそうですが、特に自転車に関しては「決めつけ」「一般化」「1か10か」ではないよな、と改めて考えさせられる記事でした。

 



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