数字大好き人間にとって、こういった具体的な研究に基づく具体的な数値って、とても興味深いです。
ロードバイクにおいて重要な指標の一つであるVO2MAX。
レースに出るようなシリアスローディーにとっては当然のように重要な指標ではありますが、週末のロングライドを楽しむだけの週末ローディーであっても、この数値が高い方がライドを楽しめたりしますので、自転車に乗るなら少しでも数値が良いに越したことはないですね。
VO2MAX と健康の関係性について
そもそもVO2MAXとは何か
まずはおさらいから。
VO2MAXって何?
みんな大好きガーミンが公式に説明してくれている定義がこちら。
VO2 Max は、最大のパフォーマンスで体重1キログラムあたり1分間に消費できる酸素の最大量 (ミリリットル単位) です。
これは有酸素フィットネスの指標であり、フィットネスのレベルが向上するにつれて増加します。
VO2 Maxスコアは、フィットネスレベルを確認、理解、管理するための鍵です。
技術的なレベルでは、酸素を体内に取り込み、筋肉に運び、有酸素エネルギーを効率的に生成するために使用できる最大速度を表します。
個人レベルでは、健康とパフォーマンスにさまざまな影響を与える万能ツールです。自分の VO2 Maxスコアを理解することになると、VO2 Maxスコアが低いほどフィットネス レベルが低く、VO2 Maxスコアが高いほどパフォーマンスキャパシティが高いことを示すことは容易に理解できます。
身体能力に関連するほとんどの側面と同様に、身体がどれだけ効率的に酸素を使用し、ひいては VO2 Maxの範囲にも遺伝的側面があります。とはいえ、VO2 Maxスコアは動的であり、生活やトレーニングに反応します。
はい。わかりやすいですね。平たく言うと心肺機能の強さを表す指標、といったところでしょうか。
VO2MAX は加齢とともに低下する
VO2MAXは加齢とともに低下していきます。男性であれば20代半ばから後半にピークを迎えますし、女性の場合はもう少し遅く30代前半にピークを迎え、その後徐々に低下していきます。
その理由は様々かと思いますが、ざっとこんなところでしょうか。
- 高齢になると心臓が全身に送り出す血液量も最大心拍数もいずれも低下する
- 高齢になると血液循環が悪くなる(血管が固くなる等理由もさまざま)
- 血液を循環させるために必要な筋肉が減少する
ではどれくらい低下するのか?というと、こちらのサイトによるとおおよそこの程度の低下スピードになるそうです。
- 成人男女の平均的なVO2maxは、25歳から1年あたり約1%(0.4~0.5ml/kg)、10年あたり約10%低下する。これは、体重に対するVO2maxの話なので、体重の増加も原因のひとつである可能性がある
- 座りがちな人と活動的な人では、VO2max)は活動的な人の2倍の速さで減少する
- 活動的なライフスタイルを維持し、健康的な体組成を維持すれば、平均して年間0.25ml/kg/分程度まで減少を抑えることができる
運動を継続して筋肉量を維持したり、心肺機能を高めるよう心がけていれば低下のスピードを落とすことはできるわけですが、上記サイトによると低下スピードは「半減」させることができるに止まるそうで。
私の場合、ロードバイクに乗り始めて8年程度が経過していますが、確かにVO2MAXは2〜3低下しています。自転車に乗り続けることで低下スピードは抑えられているようですが、それでも確実に低下してきています。
ローディーブログで、数年前のVO2MAXの値と比較して「嘆く」記事って沢山見かけますよね。加齢に反してVO2MAXを維持したり向上させることは、とても大変なことなんです。
一般的(平均的)なVO2MAXはどれくらい?
それでは、平均的なVO2MAXはどれくらいでしょうか。
ちなみに、ロードバイク界隈でVO2MAXの話になると、「プロのVO2MAXは80を超えるし、90の人だっている」みたいな話になりますが、そんな化け物の話を気にしてはいけません。
マラソンランナーでも、トップアスリートになるとやはり80を超えてくる、といった話があるので、「天井」の値は80-90といったところなんでしょうね。
知ったことではありませんが。
まずはとっつき易い国内の数値から。
少し古い情報ですが、厚生労働省が発表した「健康づくりのための運動基準2006」でまとめられた数値が参考になるかと思います。これは体力向上や生活習慣病の予防のための基準値として厚生労働省が発表した数値になりますので、ごくごく普通な生活を送る人間として参考になる数値ですね。
男性 | 女性 | |
20代 | 40 | 33 |
30代 | 38 | 32 |
40代 | 37 | 31 |
50代 | 34 | 29 |
60代 | 33 | 28 |
こうやって見ると、決してそんなに大きな数値ではないんですよねー。ローディー界隈でオープンにされる数値ばかり見ていると、ちょっと通常の感覚からズレてくるようで・・・汗
続いて、年齢別に当該VO2MAXを評価している海外のサイトがありますので、そちらの数値を引用させていただきます。
ちなみに、以下は男性の数値となります。女性の数値が気になる方は元サイトを参照して頂ければと。
評価 | 〜29 | 30〜39 | 40〜49 | 50〜59 | 60〜69 |
EXCELENT | 53 | 50 | 45 | 43 | 41 |
GOOD | 44-52.9 | 42-49.9 | 39-44.9 | 36-42.9 | 36-40.9 |
AVERAGE | 34-43.9 | 31-41.9 | 27-38.9 | 25-37.9 | 23-35.9 |
FAIR | 25-33.9 | 23-30.9 | 20-26.9 | 18-24.9 | 16-22.9 |
POOR | -24.9 | -22.9 | -19.9 | -17.9 | -15.9 |
先の厚生労働省の数値と対比させると分かるのですが、厚生労働省で推奨とされている数値は、上記表の「AVERAGE」に該当しています。
レースに出るようなアスリートを目指しておらず、あくまでも健康的な生活を送ることを考えている週末ローディーであれば、おそらくこの表上では「GOOD」や「EXCELENT」に該当する方が多いのではないでしょうか?
それだけ、ロードバイクというのは健康に良い趣味なんだ、ということかと思います。私もこの表に当てはめると、「EXCELENT」の評価でした。
ちなみに同サイトでは、アスリートレベルでトレーニングを行っているのであれば、これら「一般人向け」のチャートと比較すべきではない、と釘を刺しています。
そりゃそうですよね。
アスリートのVO2MAXは、やはり同じ分野のアスリートと比較すべきとのこと。
ということで、こちらも参考までにチャートを載せておきます。
Sport | Age | Lower | Upper |
---|---|---|---|
Skiing (Nordic) | 20-28 | 65 | 94 |
Track and field (running) | 18-39 | 60 | 85 |
Bicycling | 18-26 | 62 | 74 |
Speed skating | 18-24 | 56 | 73 |
Rowing | 20-35 | 60 | 72 |
Swimming | 10-25 | 50 | 70 |
Skiing (alpine) | 18-30 | 57 | 68 |
Canoeing | 22-28 | 55 | 67 |
Wrestling | 20-30 | 52 | 65 |
Soccer | 22-28 | 54 | 64 |
Ski jumping | 18-24 | 58 | 63 |
Ice hockey | 10-30 | 50 | 63 |
Racquetball | 20-35 | 55 | 62 |
Jockey | 20-40 | 50 | 60 |
Football | 20-36 | 42 | 60 |
Basketball | 18-30 | 40 | 60 |
Track and field (running) | 40-75 | 40 | 60 |
Gymnastics | 18-22 | 52 | 58 |
Baseball and softball | 18-32 | 48 | 56 |
Track and field (discus) | 22-30 | 42 | 55 |
Orienteering | 20-60 | 47 | 53 |
Weightlifting | 20-30 | 38 | 52 |
Track and field (shot put) | 22-30 | 40 | 46 |
ロードレースの分野でアスリートと呼ばれる層(18-26歳)であれば、VO2MAXは「62-74」はないとダメですよ、ということですね。
一般人向けチャートの「EXCELENT」の20%以上大きな数値となっています。私にはとても手が届かない数値ですねー・・・。
VO2MAX を向上させるためにはどうすれば良いのか
VO2MAXを維持、向上させるにはトレーニングを継続するしかありません。
効果的なトレーニング方法としては80/20トレーニング法が挙げられることが多いようです。
レーニングの80%は低強度(ゾーン2)で、20%は高強度で行うトレーニングになります。
低強度のトレーニングが重要となる理由ですが、低強度で運動すると、ミトコンドリアと毛細血管がより多く生成されるからです。ミトコンドリアは酸素をエネルギーに変える場所であり、毛細血管は実際に血液から酸素を取り出して筋肉に送り込み、ミトコンドリアに入れてエネルギーを作り出す血管となる為、低強度で運動することが効率が良いわけですね。
VO2MAX が1上がると寿命は45日伸びる
レースに出るような人であれば、言われなくてもVO2MAXを向上させることを重要視しているでしょうが、一般人だったり週末ローディーであっても、VO2MAXを高めることはとても大切なことだったりします。
わかり易い研究成果として、VO2MAXが1上がると寿命が45日伸びる、というものがあります。
ざっとまとめるとこんな感じ。
- 平均年齢48.8(43-55歳)の男性5,107人が対象
- 46年間の追跡期間中に4,700人(92%)の男性が死亡
- 死亡者のうちの2,149人(42.1%)と最も多くの死因はCVD(脳血管障害、脳梗塞、くも膜下出血、脳卒中等であり、発症原因に脳の血管の変化や動脈瘤等血管異常により引き起こされるもの)
- 死亡者を対象にVO2MAXとの相関性を調査した結果、VO2MAXが1単位増加するごとに寿命は45日伸びた
- なお、追跡開始後10年以内に死亡した人を除外しても結果はほとんど変わらなかった
VO2MAXが1上がると寿命が45日(1ヶ月半)伸びるというのはすごい!と思ったのですが、よくよく考えると、8上がって1年の違い、なんですよね。
この差を大きいと感じるか、大したことはないと受け止めるかは人それぞれかとは思いますが。
ま、健康になることは良いことですからね。
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