ちょっと面白いデータを見つけました。
原文に倣うなら、「正しいチェーンルブを選べばメンテナンスコストが10万円は安くなる」という記事になります。





本気ですか!? という刺激的なタイトルですよね。





■ チェーンルブ毎の「摩耗率」に基づいた真のコスパ最強のチェーンルブとは何か



1. 潤滑性能に着目したテスト

今までも「最強のチェーンルブとは!?」ということで、色々と調べたことがありました。





記事中でも引用していますが、チェーンの潤滑性能に着目したテストとして、こちらのテスト記事は結構有名ですよね。

こちらのテストでは UFO DRIP が最強のチェーンルブとされていますが、お値段もなかなかですので、それに次ぐ第2の評価を獲得した Squirt を買いました。

実際にそのスムーズな潤滑性能と持続距離には驚かされました。





この頃はSquirt Dry Lube の入手性がやたらと低く、国内ではプレミア価格がついてなかなか入手が難しかったのですが、最近は落ち着いてきたようで普通に Amazon でも帰るようになりましたね。






2. チェーンやスプロケの摩耗率に着目したテスト

そして今回取り上げるテストは、チェーンの摩耗率に着目しています。

先に引用した Bicycling の記事だけ見ると、ちょっと誤解を招きかねないのですが、ちょっとサマリで引用してみます。

  • チェーンは常に駆動するパーツであり金属同士が接触しており常に摩耗が発生する。一般的に2000〜3000マイル毎に交換する必要がある
  • チェーンの交換時期を誤ると、より高価なチェーンリングやスプロケットの摩耗が進んでしまう為気をつける必要がある
  • Adeam Kerin氏は様々なチェーンルブを用いてチェーンの摩耗と、それがドライブトレインのメンテナンスコストにどのような影響を与えるかを執拗にテストした
  • 一例として、コンポーネントがアルテグラ11速の場合、Muc Off Ludicrous AF(65ドル)を使用した場合はメンテナンスコストが613ドルかかるが、Silca Super Secret Chain Lub(28ドル)を使用するとそのメンテナンスコストは197ドルで済み、416ドル節約することができる
  • これがデュラエース11速の場合、約10000kmの走行において、1078ドルの節約につながる

さらっと読むと、Muc Off の高いチェーンルブを使うのに比べて、もっと安いSilca のチェーンルブを使えば安く済むよ、と読み間違えてしまう記事なんですよね・・・。

ちなみに国内だと Muc Off Ludicrous AF(50ml)は軽く諭吉超え。





対して Silca のSuper Secret ChainLube (120ml)も4000円近くしますので、それなりにお高いチェーンルブとなります。 





同じ容量に換算したらその差2万円しますから、そりゃメンテナンスコスト高くつくよね?と勘違いしかねない例なんですよね。

これだと分かりづらいですから、元記事を更に掘り下げてみたいと思います。 



3. テスト条件

元記事はこちらになるのですが、Webサイトはとっっっってもシンプルなので、これだけ見てもさっぱり理解できません・汗

詳細が記録されたエクセルファイルやPDFファイルをダウンロードして読み込んでようやく全貌を理解することができます。

なんてユーザーフレンドリーでは「ない」サイトなんでしょう・・・。






とにかく情報量が多くぐったりしてしまいますが、ざっと要点をピックアップしてみました。
まずは本テストに至った問題認識から。

  • 現在、潤滑剤が汚染にさらされたときにどのような性能を発揮するかについてのデータはほとんどない
  • ごく一般的なラボテストでは、クリーンな環境で行われることが多い為、汚れを弾く性能や潤滑しながら洗浄する、といったチェーンルブの性能は評価されることがない
  • これらラボテストでは、浸漬法や超音波法を使ってチェーンルブを塗布するが、これはあまり一般的なやり方ではない。ごく一般的なライダーが、ライド後に毎回チェーンを完全に取り外して、専用器具を使って、過剰なチェーンルブを用意して塗布することは考えられない
  • クリーンで特別な環境におけるテストよりも、もっと現実世界に近いテストが必要ではないか
  • 今回のテストにおいては、「乾燥粉塵に対する耐性」「汚れを除去する能力」「ウェットコンディションにおける汚れ」「極度の汚染」についても評価が可能となる
  • 本テストにおいては、チェーンルブの潤滑性能そのものを評価することはできないが、摩耗率と潤滑性の相関は非常に高いことがラボテストで証明されている
  • テストはブロック毎に異なる環境で実施している。汚れのないクリーンなラボテスト、ドライコンディション、クリーンなラボテスト、ウェットコンディション、クリーンなラボテストといった順に実施して、累積される摩耗率を計測している

こうやって見てみると、個人的にはとても共感できる内容ばかりでした。

我々が普段乗っている環境は、とても「クリーン」ではないですからね。

では、どういったテストを実施しているのかを見ていきたいと思います。

  • 工業用モーターを搭載したTacx neoスマートトレーナーを使い、インターバルの負荷と距離をコントロールし、さらにクリーン、ドライ、ウェットな環境を作り出し、潤滑剤を数千kmに及ぶテストを実施
  • 摩耗の測定には正確なデジタルチェーンチェッカーを使用
  • チェーンは全体的に均一に摩耗するわけではないことから、チェーンを7つのセクションに分けてそれぞれのポイント毎に摩耗を確認
  • 7つのセクションで誤差が0.15mm以上発生した場合はチェーンの摩耗性能を測定するには「不均一」であったと判断して当該チェーンの測定は無効とする
  • 誤差が0.15mm以内となった場合、測定値の平均値を採用
  • チェーンの汚染には砂、泥、粘土をほどよく混ぜたものを使用
  • 潤滑剤の塗布はメーカーの指示に従い厳密に実施。再潤滑の間隔はフラットシミュレーションでは400km毎、ヒルクライムシミュレーションでは200km毎で実施。但し再潤滑の頻度が高すぎると汚れが付着しやすくなるため、メーカーの指示に従った再潤滑の頻度が有害となる場合はこの限りではない
  • 汚染ブロックにおいては、平坦シミュレーションでは200km毎、ヒルクライムシミュレーションでは100km毎に再塗布を実施
  • 負荷は250W、100rpmで実施
     

いやいやそのテスト方法は、とツッコミを入れる人もいるでしょうが、これらは「その条件の妥当性の是非」を問うのではなく、こういった条件であれば、こういった結果が出る、と冷静に受け止めるべきですね。

個人的には、そこまで荒唐無稽なテスト方法ではなく、ラボテストの結果よりは信頼できるのでは?と思います。


続いて、実際のテストブロックの考え方についてです。

  • ブロック1:汚染なし。フラットシチュエーション400km、ヒルクライムシチュエーションで200km。ここでは潤滑剤が適切に浸透してくれるかを確認する。このブロックでメーカーの指示通りに塗布したにもかかわらず摩耗度が大きい場合、潤滑剤がピンまで浸透していない可能性がある。通常であればこのブロックが最も摩耗が低くなるはず
  • ブロック2:ドライ、汚染あり。再塗布の間隔を2倍(平地200km、坂道100km)にし、途中で5gの汚染剤(砂、泥)を投入。このブロックの摩耗率とブロック1の数値を比較することで、潤滑油が汚染された場合に「吸収」してしまうのか「洗浄」する能力があるのかを見極めることができる
  • ブロック3:汚染の追加はなし。ブロック2と比較することで、摩耗速度を低下させることができるかが見極め可能
  • ブロック4:再塗布の間隔を倍にし、間隔の途中で500mlの水を小型圧力噴霧器からチェーンに噴霧し、5gの汚染剤(砂、泥)を投入。濡れた状況でどうなるかが把握可能
  • ブロック5:汚染の追加なし。ブロック3と同様に「復活」するチャンス
  • ブロック6:過度の汚染。再塗布の間隔を倍にし、汚染財の投入頻度を増やすとともに、汚染剤、水の投入量も倍にする過酷なコンディションを再現
  • ブロックの途中であっても、摩耗が0.5mmを超過した場合、そこで当該潤滑剤のテストは終了



ss-01



なるほど。
このテストコンディションだと、ドライルブは不利かもしれませんね・・・。

「いやいや、自分はそんな濡れたコンディションでは走らないし」という人は多いかもしれませんが、雨上がりで路面が少し濡れていたり、水溜りを少し走り抜けたり、みたいなシチュエーションも考えると、めちゃめちゃ過激な環境ではないのかもしれません。

しかも、先の記事で槍玉にあげられてしまった Muc Off の Ludicrous AF に関しては、ブロック3に到達することすらできませんでした。
また、半数はブロック5にも到達できていません。そりゃそうだろうな・・・。
Muc Off に関しては他にもエントリーしているのですが、総じて汚れには弱い模様。
クリーンでドライなコンディションにしか対応できないようですね。

今回テスト対象にはなっていませんが、Muc Off セラミックドライルブを愛用している人間としては、少し複雑な心境・・・。
ま、ドライルブである以上、このテスト結果には耐えられないだろうな、とは思いますが。





 



4. 最も「コスパの良い」チェーンルブ

正直、ここまで読み解くのに3時間かかってぐったり、あとはみなさん元サイトで結果見てね、と言いたい気持ちでいっぱいです・汗


上位製品と、私も愛用している Squirt Dry Lube、槍玉に挙げられた Muc Off をピックアップしてみたいと思います。


チェーンルブ トータルコスト/10,000km チェーン
交換回数
カセット
交換回数
チェーンリング
交換回数
Molten Speedwax New Formula 101.60$ 0.4 0.2 0.07
Silca Hot Melt 142.9$ 0.4 0.2 0.07
Effetto Mariposa Flower Power wax 159.35$ 0.98 0.49 0.16
Ceramic Speed UFO Drip 237.73$ 1.1 0.6 0.2
Squirt Dry Lube 369.45$ 2.5 1.25 0.42
Muc Off Ludicrous AF 898.6$ 4.3 2.1 0.7



とても全てをピックアップする気にはなれませんので、気になる方は原典をあたって下さい・汗

今回のテスト環境を見て「そうだろうな」とは思ったのですが、ワックスが総じて強いようですね。

コストに関してはアルテグラでパーツを揃えた場合ですので、デュラエースだともっと高額になります。

なお、Squirt に関しては初期潤滑に問題があったそうですので、初回の脱脂、塗布をもう少し正確に実施できていればもう少し数値は良くなったかも、とのコメントもあります。



本テストに関しては受け止め方は人それぞれかとは思いますが、条件を揃えて数値化していますので、「信用ならん」と一蹴することはできません。
また、バックに企業などはついていませんので、札束で結果を操作されたものでもありえません。(本テストでもその辺りの懸念に触れられています)


個人的な受け止め方はこんな感じでした。

  • ワックスタイプは塗布が面倒ではあるものの、汚れにも強く、実際のライド環境においてはかなりの効果を発揮している模様
  • ウェットタイプの潤滑剤は総じて成績が悪い。汚れを抱え込んでしまい摩耗を進める傾向が高いように伺える。ウェットタイプこそ、洗浄、塗布を小まめに実施してあげないと、がりがり摩耗が進み、チェーンだけでなくより高額なスプロケ、チェーンリングをダメにしてしまう元凶となりえてしまう
  • 愛用しているSquirt がそこそこの好成績だったのが嬉しいかも。メンテナンスの容易性、高い持久性も踏まえると、本当にコスパが高いと再認識
  • ここでも UFO DRIP が高得点。チェーンルブとしては高価だが、汚れた際の摩耗性などが低い点も踏まえると高いコスパを誇っており、ちょっと使ってみたくなった

私のような週末ローディーにとってみると、「チェーンルブで5W削減できる!」と言われるよりも、「摩耗率低下で年間のコストが5万円は下がるよ!」と言われる方が嬉しいですね。

内容が複雑なこともあり、腹落ちするまでに時間がかかるテスト内容ではありますが、真の意味でのコスパ、という観点、メンテナンス性や国内での入手性を考えると、高い潤滑性と合わせて UFO DRIP と Squirt DryLube のどちらかを使っておけば間違いはない、という結論なのかもしれません。






 



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