色々と慌ただしく過ごしていたら、シマノのクランクセットに関して「無償点検プログラム」と称した案内が発出されていましたね。

今回ばかりは一般誌にも取り上げられるほどで、各種メディアでも取り上げられていました。

これは「リコール」なのか「シマノの良心に基づく無償点検」なのか。
何とも判断に迷う内容ですね。





■ シマノのクランクセット破断はリコールとすべきなのか?



1. シマノ公式見解(日本)

まず、シマノ公式による見解として、一部モデルのクランクセットに不具合が出る可能性がある為、無償で点検させて頂きます、という内容となっています。



    対象製品の一部において接着された箇所が剥がれ、隙間や段差が発生する可能性がございます。
    つきましては、お客様がご使用されている対象製品を無償にて点検させていただき、点検の結果、交換が必要と判断された場合は、無償交換をさせていただきます。交換の必要性が確認されなければ、そのままご使用いただけます。
     

      「隙間や段差が発生する」というあまりリスクのなさそうな表現がされているが、海外ではクランクセットが破断する事例が報告されており、今回の件がその原因なのではないか、とも騒がれていますので、もし今回の件との因果関係があるのだとしたら、この表現はちょっと「大人しすぎる」という指摘を受けてしまうかもしれません。

      参考までに、こちらが対象製品の一覧。


      smn-01



      私のクランクもどんぴしゃでした。



      2. 海外記事による補足

      日本国内の記事だと、「無償点検プログラムが発表された」という表面的なものばかりとなっていて、正直さっぱり参考になりません。

      もうちょい頑張って下さいな・・・。

      ということで、こんな時はメディア根性丸出しの海外記事を参考にさせて頂きます。





      個人的に、非常によくまとめられていると思うのですが、こちらの bikerader誌は、シマノのクランクセット破断問題が見つかった初期の頃からシマノに見解を求める等、積極的な動きを見せていたようで、「やっぱりなんじゃないの!」という形でかなり勢いづいて記事をまとめているようです。

      ざっくりまとめるとこんな感じです。

      • 交換用のクランクセットは12速用のものを11速対応にしたもので、外観が異なる点に注意が必要
      • 今回のリコール前に故障して自腹購入した人は、現品を持ち込めば点検してもらえる
      • 不具合の原因についての公式な見解は「接着されたクランク部品が分離して壊れることがある」というものだけ。気候条件、ライディングスタイル、使用条件によって大きく異なるため原因を明に特定し辛いとのこと
      • クランクセットに剥離の兆候がなく検査に合格した場合は、そのまま乗り続けることができるとしているが、それは本当に妥当な判断なのか
      • シマノによると不具合の発生率は、割合的に非常に低い(1%未満)という
      • シマノのアドバイスに従い、定期的にクランクをチェックして乗り続けるというのが妥当な判断かもしれない
      • サードパーティー製のパワーメーターを取り付けている場合は、もう少し問題は複雑になる。検査に不合格となったパワーメーター付きクランクセットについては、パワーメーターを取り付けない状態で無償交換される。その場合、一定の補償金が支払われるそうだが、新型のパワーメーターを購入するには足りない金額となる(片側で約300ドル、両側で約500ドル)
      • 小売店への影響として、小売店に対しては検査ごとに75ドルのリベートが提供される。「顧客への案内、顧客情報の入手、検査のためのクランクの取り外しと洗浄、書類と写真の作成、検査結果の提出」という手間を考えると、とても十分な手数料とはいえないというショップの見解もある
      • また、顧客からの非難の矢面に立たされるのはショップである。交換用のクランクの手配が遅れた場合は、ショップが非難されることになりかねない
      • 交換品についても、例えば180mmのクランクは177.5mmに置き換えられるし、53/39Tのクランクセットは52/36Tに置き換えられる為、必ずしも完全な補償が得られるわけではない
      • 全てのショップが今回のリコールプログラムへの参加義務があるわけではない。赤字を覚悟でリコールプログラムに参加して顧客のつなぎとめを図るか、既存顧客の他店への流出を覚悟したうえでリコールプログラムに基づく対応を断ることもできる

      日本国内の発表だけではさっぱり分からない点が色々と指摘されていて、とても参考になります。

      ちなみに、我が家にあるアルテグラコンポもどんぴしゃ対象製品ですし、4iiiiのクランク式パワーメーターも対象製品となっています。
      外観からの判断だけになりますが、剥離や段差が生まれそうな兆候はなさそうですので、おそらく検査してもらっても「問題なし」と言われそうな気がしています。 



      3. そもそもリコールの基準とは?

      そもそもクランクセットが破断するリスクがあるのであれば、全品交換すべし、という強硬な意見もありますし、シマノ公式が指摘するように、故障が発生する確率が低いことから今回のシマノ対応が妥当とする意見もあるようです。

      それでは、日本国内でのリコール基準に照らすとどうなのでしょうか?
      アメリカカナダでこの11年間において、76万件中、故障の確率は0.59%、事故の確率は0.078%という数字があるそうです。

      これをどう見るか、なんですよね。

      日本国内のリコール基準に関しては、経済産業省がハンドブックの中で指針(R-Map)を提示してくれています。

      ちょっとハンドブックそのものだとわかり辛いのですが、分かりやすく解説してくれているサイトもあります。

      リコール発生に関しては、「発生頻度」と「発生した場合の危害の程度」を評価する形になります。
      例えば上記北米の事例をベースに考えると、1年あたりの事故の発生確率は、0.00709%になります。

      素人感覚からすると、「めっっっちゃ低い事故頻度」だと思うのですが、R-Mapにおいては、この事故発生確率はレベル2の「起こりそうにない」というレベルになります。

      個人的に驚いたのは、最も発生頻度の高い「頻発する」の事故確率が1年あたり「0.01%以上」だったことです。
      とても低い数字に見えますが、事故確立としては「頻発」というレベルになってしまうのですね。

      この「起こりそうにない」という事故発生確率に対して、事故発生時の危害の度合いが「重症もしくは死亡」となった際には、R-Map上では「リコールすべき」という判断になります。「通院加療や軽傷」で済む場合には、リコール対象とはされません。

      ここで、とても難しい判断を迫られますよね。

      クランクが破断する場合は、おそらく強くトルクをかけた際に「ぼきん」と折れてしまうかと思いますが、そうなると転倒、落車する危険性が高いと思われます。
      その場合、重症を負う可能性もあるでしょうし、軽傷で済む場合もありそうです。

      つまり、今回のシマノのケースはR-Map上におけるリコール基準としては、かなり「微妙なライン」に置かれる事例ということになります。


      他方、シマノを擁護するわけではありませんが、ライドの環境(路面状況)や、ライダーの体重やパワー等に起因するクランクへの負担度合いを考えると、日本国内は北米ほど大きくないとも思われます。
      現に日本国内ではあまりクランクセットの破断事例というのは聞かないような気もします。
      そう考えると、日本国内において「リコール」という対策を選択しなかったシマノの判断は決して間違ったものではないのかもしれません。

      ひとまず、無償点検プログラムの詳細が見えたところで判断しようかな、とは思いますが、何とも難しいケースだな、と改めて考えさせられました。




       



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