ロードバイク関連のクラウドファンディングって、結構多い気がします。
私自身も、クラウドファンディングで製品化された製品を購入したこともあれば、クラウドファンディング期間に出資して購入に至ったケースもあります。

また、結果的にゴール金額に達することがなかった為に、返金対応となったものも。

私の場合、返金対応が取られたので運が良かった方だと思いますが、何らかの事情で返金されないケースもあったりしますので、クラウドファンディングは通常の「お買い物」とは異なるというのは強く意識する必要がありますよね。

今回は、そんなロードバイク関連のクラウドファンディングの末路に関する記事がありましたので、ご紹介したいと思います。









■ クラウドファンディングの末路(成功と失敗と)



1. Tailfin

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まずはTailfin
ブリストルをキョンとする革新的なバイクパッキング用ラゲッジを開発しています。

私も昔はマウンテンバイクにラックを取り付け、パニアバッグでツーリングをしていたものですが、特にパニアラックに強い思い入れはありませんでした。

Tailfin はカーボン製の軽量で豪華なパニアラックを開発しました。




超長距離サイクリングイベントやバイクパッキングの台頭により、2016年にTailfinの最初のKickstarterが4日間で目標金額を達成したことで、否定的な意見に終止符が打たれた。近年、超強力で軽量なラゲッジラックやパックへの需要、そしてそれに支払う人々の覚悟は明らかに高まっており、その後のTailfin製品はroad.ccなどで絶賛されている。
定期的な製品発表や人気のInstagramページが示すように、Tailfinの製品への需要が鈍る兆候はなく、ブランドはもはや新しいイノベーションを実現するためにクラウドファンディングの投資を必要としていないようです。
 

マスに訴求する製品ではないですが、ハマる層にはかなりハマる製品ですね。
確かにカーボンバイクでも使えるラックというのは、目の付け所がすごいです。

結果は大ヒット。

ただ、お値段はかなりお高め。
個人的には長距離ツーリングにカーボンバイクで行きたいとは思わないのであまりピンと来るものはありませんが・・・。 



2. Brim Brothers

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こちらもTailfin と同じく2016年にクラウドファンディングに登場した Brim Borthers。
まだ私がロードバイクに乗り始める前で、その存在すら知りませんでした。

こちらは最も悪名高い失敗例の一つだそうです。

シューズに装着してクリートからパワーを計測する「世界初のウェアラブルパワーメーター」として開発が発表されたガジェット。

希望に満ちたローディーがプロジェクトを支援し、Kickstarter で総額 175,443ユーロを集めたそうです。

ただ、結果は失敗。
資金投入後も製品の製造に苦戦した結果、2016年10月に支援者に対して事業停止を伝えました。

最近のクラウドファンディングは「お金が集まれば立ち上げる」「立ち上がったものはきちんと製品として届ける」というものが大多数で、立ち上がったけど製品が手元に届かないケースはかなり稀になってきた印象ですが、当時はまだこういった失敗例もあったんですね。

今でも Facebookを見ると当時の「悪あがきっぷり」が垣間見えます。


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事業停止直前にあっても、「まだ頑張ってるから待っててね」感を必死で伝えている様子が伺えます。

当時のCEOから寄せられた以下のコメントは、まさにクラウドファンディングの本質を表していると思います。



物事がうまくいかないときに最も学ぶことができるので、この経験から少しでもプラスになることがあるとすれば、それは学んだ教訓です。資金調達者としても、資金提供者としても、まだ世の中に存在しない製品をクラウドファンディングで購入するのは、非常に慎重であることです。新しいもの、エキサイティングなものに対して楽観的になるのは人の本質であり、そうすることで新しいものが生まれるのです。
 

 



3. Knog Oi Bell

続いて、2002年に設立されたオーストラリアブランドの Knog。
すでにライトなどの製品でブランドは確立済みだった点が一般的なクラウドファンディングとは異なるケースではありますが、2016年のクラウドファンディングで募集した Oi Bellは大成功を収めました。

確かにロードバイクにおいてベルは、「つけなくてはいけないものの、つけたいとは思わない」製品ですから、そこに注目してマーケットをもう一度掘り起こすというのは、実はとても難しいことなんですよね。

私も Knog Oi Bellは愛用していますが、「目立たないがおしゃれ」というのは、本当に良い所を突いています。





ただ、全てが順調に進んだわけではなく、当初は概ね好意的に受け止められていた Oi CLASSIC も、次第に不満が寄せられたそうです。
音量がイマイチであったり、バネ機構が壊れるというクレームもあったそうで、その後、見た目が良く、音量が大きく、より洗練された Knog Oi Luxe を発表し高評価を得ることに成功しました。

最終的にヒット商品になり、今では日本国内でも入手製の高いメジャーな製品となっています。


 



4. Nothirst Upright cycling water bottle

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続いて No Thirst のドリンクボトル。
見れば分かる通り、ボトルを持ち上げて飲む必要もなく、直立で持ったままスクイーズすれば簡単に飲めるドリンクボトルとして発表されました。

また形状からドリンクボトルが受ける風の抵抗を35%軽減させるという売り文句もありました。

ただ、本製品の発表はかなりネガティブな反応を呼んだようて。
角度のついたボトルは以前からあるし、エアロ形状のボトルも似たような製品がすでにあるということで、マーケットに訴求することは叶わず、クラウドファンディングでは目標金額の30%未満しか集めることはできずに終了しました。

サイトは今でも残っていますが、2022年以降更新は行われておらず、お蔵入りとなった模様です。

 



5. STYX power meter

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こちらも日の目を見ることのなかった革新的なパワーメーター。
実際にクリートの中にパワーメーターを埋め込むタイプとなります。

ロードバイクでメジャーなパワーメーターはひずみゲージを介してパワーを測定するタイプとなりますが、実際にかけられた力を直接測定することによって、驚くほど正確な数値を計測することができるということで、本製品の開発が発表されました。

確かに「直接計測する」というのは理にかなっているように感じられますが、結果としては2017年に実施されたクラウドファンディングでは目標額に達することなく、製品が実現されることはありませんでした。

ただ面白いのはここからです。

自転車業界向けにはクラウドファンディングは成功しませんでしたが、その後数ヶ月で製品をリハビリ業界へとシフトし、結果として患者のリハビリテーションやケアに使用されるようになったそうです。

エルゴメーター(固定式自転車でペダルの重さを定量的に変化させ、 運動や精神的興奮により心電図変化の有無を診断する検査)のペダルにこの機器を使用し、ペダルからの入力を使ってトレーニングセッションをゲーム化し、患者のモチベーションを高めることに成功したそうてす。

また、靴にこちらの技術を組み込み、患者の歩行を分析する取り組みも行われているそうです。

クラウドファンディングとしては失敗したわけですが、結果的に世の中に新しい価値を提供することには成功したようで、まさにハッピーエンドですね。

ぐるっと一周回って、再度ロードバイク向けのパワーメーターにチャレンジしてくれると面白いな、と思ってしまいます。



6. Lumo

続いてLumo。

ジャケットにLEDを織り込んだ製品を2014年に発表。LEDの明るさやジャッケットの着心地が評価された結果、約75000ポンドの資金を集めることに成功しました。

個人的に、ジャケットにLEDを一体化させるというのはちょっと抵抗がありますが、クラウドファンディングとしては成功を収めたようです。

たた、250ポンドという値付けについてはあまり評価はされなかった模様。

その後2016年に新シリーズの為に再びクラウドファンディングに参加。
この時も成功を収め、製品は届けられたようなのですが、今ではLomos Helmet(ヘルメットにLEDを組み込んだ製品をリリースしている会社)によって買収されており、現在の製品ラインナップにLED組み込み型のジャケットはラインナップされていません。

ごく一部には刺さった製品なのでしょうが、新しい製品を開発するための資金を留保できるほどには製品は継続的に売れなかったのでしょうね。

クラウドファンディングには成功しつつも、商業的に継続的に成功するには至らなかったようです。 



7. Swytch e-bike conversion kit

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続いて、e-bike へのコンバージョンキット。
Swych e-bike コンバージョンキットは、写真を見て分かるように、ハンドルバーに小型のバッテリーを取り付け、クランクにケイデンスセンサー、自転車に合わせたホイールに内蔵するモーターを備えたもので、今使っている自転車をe-bike に変換させることのできるコンバージョンキットとなります。

見た目もスタイリッシュで良さそうだな、とシンプルに思わせてくれる製品ですが、クラウドファンディングは成功し、今では3世代まで進化しています。


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こちらは先に紹介した Lumo とは異なり、商業的に大成功しています。
クラウドファンディング以降、世界74カ国に3万台以上のコンバージョンキットを販売しており、今では予約を入れておかないと購入することすらできません。

現在は2ヶ月に1度、5000台のキットを販売する生産能力を持つまでになったそうですが、今でも即完売するそうで、入手するには予約を入れておく必要があります。
お値段は30km巡行可能なバッテリーで約1600ドル。

バッテリーは交換可能ではありますが、ロードバイクで長距離走るには向いておらず、クロスバイクで街乗りする人向けですかね。

お気に入りのクラシカルなクロスバイクを電動化する、みたいな使い方に合ってそうです。

ちょっと面白い製品ですね。
 



8. HindSight smart sunglasses

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続いて HindSight スマートサングラス。

こちらは私も気になって過去に記事にしたことがあります。





まず発想が面白いです。

こちらの製品は Kickstarter で10万ポンド以上集め、クラウドファンディングとしては大成功。
今でもオンラインサイトで購入することが可能ですが、製品に対するレビューは必ずしも全てが好意的なものではありません。

road.cc のレビューでも、「良いコンセプトだが、古き良きショルダーチェックに代わる有効な手段には程遠い」と評価されていますし、Kickstarter に寄せられた購入者からのコメントでも、一定数の顧客はあまり満足していない模様。

ただ、現在アップデートされた v2.0の製品が出荷され始めているそうで、継続的なアップデートでより洗練された製品になっていくことを期待しています。

眼鏡ローディーな人間からすると、サングラスだけ出されても手を出すことができないのですが、ヘルメットのシールドにこの機構を組み込んでくれないかなー、と期待しています。 



9. Superstrata Bike

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続いて、こちらもクラウドファンディング「では」大成功を収めた Superstrata Bike。
2020年に500万ポンド以上を集め、Indiegogoで最も成功したクラウドファンディングの1つとされています。

シートチューブのない独特な形状は、とにかく近未来な「何か」を感じさせ、期待が高まるバイクとなっています。

ただ、こちらのバイクについては、海外サイトのレビューでは酷評されています。
私もちょくちょく覗いているサイトなのですが、評価「1」の製品というのは、なかなかお目にかかることがありません・・・。





製品そのものだけではなく、何かとトラブル続きだそうで。


  • 支援者が受け取る完成品は当初約束されていたものとは全く異なるものになっていた
  • 今だに製品を受け取っていない支援者が多数いる
  • 法外な送料を要求された支援者がいる(送料だけで779ドル)

クラウドファンディングで資金を集めるスタートアップは、製品製造だけでなく、アフターサービスや各種注文手続きに関しても洗練されていない可能性は当然あるわけで、ある程度はこういった混乱、トラブルは仕方ないものと受け止める必要はあると思いますが、高額な送料にはちょっとドン引きですね・・・。
クロスバイクが買えてしまいます。

送料についての Superstrata側の回答についても、個人的にはちょっと「うーん」と唸ってしまいます。




他のメーカーとは異なり、私たちは注文を1つ1つこなしています。運賃を安くするために注文をまとめる努力はしていますが、バイクを大量に輸入しているメーカーが何千台もまとめて出荷するようなことはしていません。海上輸送を選択されたので、あなたのバイクは3月末か4月初旬に到着するはずです。
 



言いたいことは分からないではないですが、キャニオンが約2万円で個別発送していますからね・・・。

元記事の締めの言葉が秀逸でした。


「結論:シートチューブがない、バイクがない。そして、届けられたバイクは、決してスーパーではない」 



10. Flectr

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続いて、road.cc は納得していないけど、成功を収めているFlectr
名前の通り、各種リフレクターを販売しているブランドですが、スポークに取り付けるタイプや、フレームに貼り付けるタイプなど、様々なリフレクターを販売しています。

レビューに際しては「同じようなリフレクターは、もっと安く買える場所が沢山あるよ」とコメントしているそうで、決して高い評価を与えているわけではないようなのですが、クラウドファンディングに登場する度に成功を収めています。

確かにリフレクターというのは昔からある製品ジャンルですし、格別何か革新的な改善が加えられた製品というわけではありません。

これぞマーケティングの勝利、なのでしょうね。 



11. iQ2 pedal pased power meter

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続いて、まだ断定的な評価を下しづらいのが、ペダル式パワーメーターの iQ2 。

2018年当時、ペダル式のパワーメーターでありながら破格の金額(片面で131ポンド)で登場しました。

ただ、現時点においても実際に支援者の元には製品は届いていないようです。

当初プロジェクトを一方的放棄したと非難が集まっていたようで、road.cc からのコメント要請にも全く応じる気配がなかったそうです。

そんな中、2022年11月に突然「生産を開始した」と発表があったそうで、確かに現在も Kickstarter のコメント欄にアップデート情報が更新されるようになっています。

確かにコロナの影響を受けて開発が一時停止に追い込まれたという解釈もできますが、それにしても沈黙期間が長かったわけで、楽観視することはできません。

とはいえ、コメント欄では頻繁なやり取りが行われており、本当に開発が継続され、製品が出荷される可能性も出てきているようで。

果たして、本当に製品は完成されるのでしょうか?

 



12. iTrakit GPS bike tracker

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続いてロードバイク用のGPSトラッカーである、iTrakit GPS bike tracker。

こちらも支援者はプロジェクト開始後2年以上も待たされることとなり、かなり不満の声が上がっていたようです。

iTrakit は昨年、「2020年初頭からの主要チップサプライヤーとの重要な技術的問題、パンデミック、チームの減少が重なり、製品を期限内に提供する能力に大きな影響を与えた」と語っていたそうです。

コロナにぶつかったクラウドファンディングは、どこも大変な思いをしたのは事実でしょう。

今年の3月時点でもクラウドファンディングサイト上に進捗状況がコメントされています。




「私たちは、解決策を見出すことに全力を尽くしていますが、長引く遅延に対するお客様の不満は理解しています。現在、iTrakit 2の開発を継続するための追加リソースを社内で調達しているところです」
 


この表現からすると、製品化までの道のりはかなり遠そうですし、本当に製品化されるかも怪しい状況ですね・・・。 



13. Loffi Glove

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続いて、(失礼ながら)個人的には全くピンと来るものがない、Loffi Glove
自転車用のグローブですが、手のひらの衝撃吸収素材がニコニコしているように見えるのがポイントですね。

2018年にクラウドファンディングに登録されると、36時間で5000ポンド、最終的には約3万ポンド近く集めて成功を収めました。

「旅をより楽しくする、怒りではなく、ポジティブな方向に道路文化をシフトさせることを期待して」というメッセージが評価された側面もあるのでしょうが、グローブとしての機能性についても確実な評価を得ることができたようです。

何より素晴らしいことに、最初のクラウドファンディング以降は外部からの出資を受けることなく、会社は5倍の規模に成長を遂げたそうです。
あくまでもサイクリンググローブという商品性から、少人数のチームでゆっくり着実に成長を重ねているということなのですが、これこそ本来あるべきクラウドファンディングの姿ですよね。

 



14. SpeedX

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最後が大失敗プロジェクトというのも何なのですが・・・。

中国の新興企業SpeedXは、クラウドファンディングでスマートロードバイクの募集を行い、コンピュータを内蔵したロードバイクLeopardで約1000万ドルを集めることに成功。

その後新モデルUnicornを発表し、こちらも数十万ドル集めることに成功したものの、その後会社は倒産。

これが普通のロードバイクであれば実物が手元にあれば「サポートは受けられなくなったものの、使うことはできる」という状態になるわけですが、スマートバイクであることが仇となり、アプリのサポートが切れることに伴って「スマートバイクがスマートでなくなる」という悲劇に見舞われることに。


ははは



15. まとめ

特にこの数年はコロナの影響もあり、クラウドファンディング業界も波乱の数年を送ることになったようですが、「常にリスクがある」クラウドファンディング業界の特徴を垣間見ることができたのではないでしょうか。

ついつい、新しい製品がクラウドファンディングに出てくると、期待感と(価格面での)少しのお得感に釣られてポチッとしてしまいがちなのですが、「対価を払ったのだから、きちんと製品を届けるのが当たり前」という発想は、クラウドファンディングでは一切通用しないという点を常に意識しておく必要がありますね。



私自身、ドキドキしながらも何とか製品が手元に届いたこともありましたし。





「これは面白い!」と思って出資したものの、世間からは全く評価されずにゴール金額に到達することなくボツになったプロジェクトもありました。






後者は、ゴール金額に到達しなかった為に無事返金されましたので被害はゼロ。

出資成功したけど製品が届かないという経験は今のところないのですが、クラウドファンディングでぽちっ、とする時には、常にそのリスクを意識するようにしないといけませんね。



 



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