自転車関連のWebメディアにおいて、日本国内だと「製品比較記事が少ない」と常々感じています。
価格.comしかり、各種オンラインサイトでのレビュー記事しかり、人は何かを買う際には「似たような製品」で比較したがる生き物だと思うのですが、どうしても「企業の影」がちらつく故に、比較記事って書きづらいというのはよく理解できます。
また、日本が自転車コンポのマーケットリーダーであるシマノのお膝元ということも大きく影響しているのでしょうね。
シマノとスラム、シマノとカンパの比較記事は個人ブログでは見かけることがありますが、Webメディアでお目にかかることはほぼありません。
ということで、どうしても海外の記事を頼るしかないわけで。
今回はシマノとスラムの最高峰コンポーネントの比較記事の紹介となります。
SRAM Red AXS vs Shimano Dura-Ace グループセット対決
今回見つけた記事で「良いな」と思ったのが、コンポーネント比較によくある「ギアシフトの性能比較」ではない点。
ひと昔前だと、やれシマノのリアディレイラーのシフトチェンジがコンマ数秒速い、みたいな記事が多かったのですが、各社切磋琢磨した結果、シフト性能の違いなんてほぼほぼ体感できない位のレベルまで来てしまいました。
結果として、とても「主観的な」レビューとなり、「重箱の隅をつつく」内容とはなっていますが、それでも価値観が似た人であれば納得できる内容でした。
ディレイラークラッチ(SRAMの勝ち)
最初の比較ポイントがディレイラークラッチ(チェーン・スタビライザー)というのも、なかなか独特だと感じてしまいますが。
シマノの言い分としては、チェーン・スタビライザーが必要なのはロードではなくグラベルであり、シマノのGRXシステムにはチェーン・スタビライザーが搭載されていますよ、というものだと思います。
対してSRAMは全てのロード用グループセットにディレイラークラッチが搭載されています。
レビュワーのよく走るコースが、比較的荒れた道が多いという点も影響しているとは思いますが、シマノのDura-Ace では幾度かチェーンが暴れて外れてしまい、クランクに傷がついたことがあるそうで。
そういった経験がある人にとっては、ディレイラークラッチの有無は大きな訴求ポイントになるのはよく分かります。
ブレーキフルード(シマノの勝ち)
時代は油圧ディスクブレーキ。
そうなるとブレーキフルードとのお付き合いが始まるわけですが、シマノとSRAMでは使っているブレーキフルードの種類が違います。
- ミネラルオイル(シマノ):
ミネラルオイルは石油由来の成分となっており、塗装やシール(ゴム)への攻撃性が低く、交換頻度を低くすることができます - DOTフルード(SRAM):
SRAMは米国発のコンポーネントということもあり、ブレーキオイルにDOT(Department Of Transportation = アメリカ合衆国運輸省)フルードを採用しています。日本でいうとJISみたいなものですかね。成分はグリコールということで、アルコールの一種。DOTフルードは湿気を吸う性質がある為、時間の経過とともに空気中の湿気を吸って劣化しやすくなっています。その為、ミネラルオイルに比べると日本国内一般論として、交換頻度は高くなりがち
こうしたオイルの性質の違いを受け、シマノの方が良いよね、という採点となっています。
バッテリー(SRAMの勝ち)
これは私自身も感じていることですが、バッテリーはSRAMの方が優れていると評価しています。
- シマノは前後のディレイラーに1つのバッテリーで給電する仕組み。バッテリー容量が大きく充電頻度を下げることができるが、バッテリーがフレームに組み込まれている為、充電スペースを選ぶ、ライド中のバックアップが用意できない等のネガティブ要因がある
- SRAM は前後独立した取り外し可能なバッテリーを採用。1つのバッテリー容量が小さくなる為、バッテリーライフはシマノに劣るものの、出先で簡単に交換することができる為、バックアップは用意しやすい
一般的に変速頻度はリアの方が高いことから、SRAM の場合、まずはリアディレイラーのバッテリー低下警告がサイコンに出ます。その後数十キロはそのまま走り続けられるので、ライド中にリアのバッテリーが枯渇するケースは稀なのですが、万が一バッテリー切れを起こした場合でも、フロントのバッテリーと交換することで、フロントはギア固定になるもののリア変速を行うこともできたりします。
シマノの場合、バッテリー切れを起こしたら、そりゃもう悲劇でしかないわけで・・・。
よく「シマノの方がバッテリーライフが長い!」という話を聞くのですが、どう考えてもSRAM の方が安心・安全で優れたバッテリーシステムだと思います。
フード形状(シマノの勝ち)
レビュワーも「これは明らかに主観的なものだ」としていますが、シマノのフード形状の方が好みだそうです。
新しいSRAM のフードはサイズが小さくなっており、比較的好意的に受け止められることが多いように思っていたのですが、レビュワーの方は、ある程度大きな形状の方がエアロポジションで持ち易いといったメリットを感じていたそうで、シマノの勝ち、と判定しています。
ソフトウェア(SRAMの勝ち)
どの業界においてもファン、アンチがいるので仕方ないのですが。
私がバイクのバッテリーやソフトウェアについてレビューすると、気が狂いそうになる人が何人もいると思うが、これが現実だ。
バッテリーに続いて、ソフトウェアについてもSRAMに軍配を挙げています。
ファームウェアのアップデートやディレイラーの微調整ははいずれもアプリが用意されていますので、一見すると違いはないように見えます。
但し、SRAMは常にワイヤレスでアップデートが可能ですが、シマノはコントロールのアップデートに際してはワイヤー接続が必要になる点を減点対象としているようです。
重量(シマノの勝ち)
こちらはとてもわかり易いですね。
46/33パワーメータークランク、10-33カセット、デュアル160mmローターのSRAM Red AXSは 2,485g。一方、50/34クランク、11-34カセット、同じデュアル160mmローター、パワーメーターなしのシマノ・デュラエースは 2,471g。
但し、SRAM純正のパワーメーターはとても軽量となっていますので、純正パワーメーターにこだわるならこの辺りの評価は逆転してきます。
レビュワーの方は、「シマノには(非純正の)パワーメーターのオプションが山ほどある」為、解決策があるという点で「気にしていない」とのことです。
純正至上主義ならSRAMが良いでしょうが、SRAMはチェーンリング一体型で「パワーメーターなのに使い捨てになる」みたいな課題もあったりしますので、非純正含めて選択肢が多くあるシマノの方が良い、という意見は一理ありますね。
ブレーキ性能(SRAMの勝ち)
「ここ最近では」と前置きしていますが、レビュワーの方はブレーキについてはSRAMに軍配を挙げています。
当然、ブレーキ性能はいずれも満足いくものであるとしています。
もちろん、どちらもバイクをうまく止めることができる。違いは、SRAMの方がレバーの後ろに指を置くスペースがあり、指が1本でも2本でも調節しやすいことだ。
ブレーキ性能自体申し分ない内容であるが故に、ほんと小さな点で違いを見出すしかないようですね。
サマリ
最後に以下のようなコメントがあります。
インターネット上では、この2つの相対的な変速性能や変速効率について議論することに専念している部分がある。私はそうは思わない。
(中略)
どちらのシステムも信じられないほどシフトが速く、スムーズだ。負荷がかかっても心配することなく変速できるし、フロントディレイラーの性能に目立った違いは感じない。
どちらのコンポーネントも、十分に優れたもので、あとは何に重きを置くか次第ですね。
レビュワーが重きを置いているのは、普段走るコースに荒れた道があることから、ディレイラークラッチを重視しているのと、予備バッテリーを用意して運用し易いことからトータルではSRAMを気に入っているようです。
私はハイエンドの使用経験はなく、シマノは105とアルテグラ、SRAM は Force eTap AXS しか使ったことはありませんが、今ではSRAMからシマノに戻るつもりはないですね。
どうしても日本国内だとシマノの入手性があまりにも良すぎるのでマーケットシェアはシマノ一強ではありますが、SRAMももっと(日本国内で)人気が出て、代理店の立場が強くなって入手性が上がると嬉しいんですけどねー。
コメント
スタビライザー付きは実はシマノもGRXシリーズの前に、ロード用アルテグラRD-RX805Di2を出していました。私も使っていますが最大スプロケが34Tなのでグラベル転用が難しい微妙なディレイラーです。
バッテリーについては、今はモバイルバッテリーが大型化していますから、シマノは端子だけ用意すれば出先で簡単に充電できます。ただ、SRAMの場合はバッテリーはそのままバッテリーですが、シマノの場合は実体はDi2のCPU本体なので世代が変わると処理速度や出来ることが変わるし、高いのが悩ましいところです。
その他、距離走るメンバーが良く嘆いているのが、SRAMのスプロケの高額さです。年1回あの額はあり得ないとのこと。
スラムはスプロケやチェーンといった消耗品が高いんですよね・・・。距離を走る方には相当手痛い出費だと思います。